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PCディスプレイも折りたたみの時代がやってきた!

折りたたみディスプレイで拡張するノートPCの3つの汎用性

author: 山根 康宏date: 2022/09/30

スマホ1台で何でもできる時代と言われているが、プレゼン資料や報告書の作成、手の込んだ動画編集などはノートPCを使ったほうが快適だ。リモートワークやリモートクラスが当たり前になった今、カフェでノートPCを広げている人の姿も当たり前のものになった。

最近のノートPCは薄型軽量化が進んでおり、持ち運びも簡単だ。だが、画面サイズが15インチを越えると本体の大きさもかなりのものとなり、バックパックに収納しようにもギリギリ入らない、なんて大きさのものもある。自宅でデスクトップPCを使っている人なら20インチや30インチクラスのモニターを使うことが当たり前だろうが、ノートPCはモビリティーと引き換えに画面の大きさに制限があるのだ。

折りたたみディスプレイが提示したノートPCの3つの可能性

ASUSとレノボの新製品は「カフェでも大画面ノートPC」をあっさりと実現してくれた。ASUSの「Zenbook 17 Fold OLED」とレノボの「ThinkPad X1 Fold」はそれぞれ17.3インチ、16.3インチの巨大画面を持つノートPCだ。

ところがディスプレイを真ん中から半分に折りたたむことが可能で、畳んだ大きさは12インチクラスの小型ノートPCと変わらない。スマホの世界で最近話題の「折りたたみモデル」が、ついにノートPCの世界にもやってきたのだ。

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大型画面を折り曲げて閉じることができるASUSの「Zenbook 17 Fold OLED」

折りたたみできるスマホは、片手サイズのスマホが、開くと小型タブレットに変身する製品だ。一方、ディスプレイを折りたためるノートPCは、「小型ノートPCを開くと巨大画面が現われる」のである。これによって、カバンに入れることはもちろん、片手で持ち運ぼうにも大きすぎる16インチ以上の画面サイズのノートPCをどこにでも持ち運ぶことができるようになったのだ。

一見すると普通のノートPCだが、全体がディスプレイになっており折りたたむことができる
折りたためば12インチノートPCサイズに

大きい画面に複数のアプリやウィンドウを開いて使ってもいいし、L字型に折り曲げて上部で動画、下部にはブラウザ、といった使い方もできる。

また、文字入力には折りたたんだ状態と同じサイズになるワイヤレスキーボードが付属しているので、キーボードのサイズに対して2倍の大画面が実現した。

通常の大画面ノートPCの場合、ディスプレイのサイズの分だけキーボードのサイズも大きくなるので、設置面積は広くテーブルサイズが狭いカフェで使おうとすれば、キーボードの横にマウスを置く余裕がなくなるだろう。

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レノボ「ThinkPad X1 Fold」。大画面を開いて小型のキーボードで作業できる

さらに、L字型に折りたたんだ画面の下部にキーボードを乗せれば、もはや普通の小型サイズノートPCと変わらない使い勝手になる。新幹線の座席テーブルで仕事をしたい、なんてときはこのスタイルがいい。

このように折りたたみノートPCは「巨大大画面のタブレット」「大画面PC」そして「小型ノートPC」と3つのスタイルで使うことができるのである。

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付属のキーボードを乗せれば小型ノートPCに早変わりする

縦・横自在のスマホ仕様のユーザビリティ

なお画面を開いて使う際は、横向きでも縦向きでも使うことができる。複数のアプリを並べて仕事するときは横向きがいいだろうし、動画編集する際は素材や編集画面を下に、プレビューを上にといった具合に、縦向きで使うのもいい。デスクトップ用のモニターのなかには90度回転して縦置きで使えるものもあるが、折りたたみノートPCは画面の設置方向も縦横自在なのだ。

大画面を縦方向に開いても使える。ちょっと角度をつけると見やすい

折りたたみノートPCの欠点は価格の高さと本体重量だろう。Zenbook 17 Fold OLEDの価格は3999ユーロ、円安の影響もあり日本円だと約55万円だ(2022年9月現在)。また重量もキーボードを一緒に持ち運ぼうとすると1.8kgとなる。

1.0kgをきる薄型軽量ノートPCが増えている今、「Zenbook 17 Fold OLED」や「ThinkPad X1 Fold」は“重戦車”とでも呼べる製品だが、両モデルが提供してくれるユーザー体験はこれまでのどんなノートPCでも提供できなかったものであることには違いない。

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17インチの大画面を手軽に持ち運べる時代が来た

実は、レノボは2020年に初代の「ThinkPad X1 Fold」を出している。開くと13.3インチ、L字型に折り曲げキーボードを乗せると9.6型になる小型モデルだった。持ち運びには便利なものの、13インチクラスの軽量ノートPCがいくらでもあることから、話題性だけで終わってしまったように感じる。折りたたみスマホも「小さい画面を大きくできる」のがウリであり、レノボも今回それに倣い16.3インチという大きい画面を搭載してきたのだろう。

「ThinkPad X1 Fold」は二世代目で画面サイズを大型化。とはいえ折りたためばこんなに小さい

IFA2022の会場でどちらの製品も実際に触ってみたが、ここまで大きい画面を持ち運べることが信じられないくらい、今までのノートPCとはまったく違う感覚で使うことができた。もう外出先だからあれができない、これができない、といった言い訳もできなくなるだろう。

逆に言えば、24時間場所も時間も惜しむ間もなく仕事やクリエイティブワークに没頭したい人にとって、折りたたみノートPCは最強のツールになりうるだろう。

画面の折り曲がるヒンジ部分。強度もしっかりしている

ゲーミング、映画鑑賞では「曲がる大画面」

この「曲がる大画面」は他にも製品が出展されていた。LGがIFA2022に合わせて発表した「FLEX」だ。これはゲーミングを強く意識したPC用のモニターで、42インチのワイド画面がリモコン操作で湾曲する。さすがに完全に閉じるのではなく半径900mm(R900)の範囲で曲がるのだが、仕事をするときはフラット画面で、映画を見るときはちょっと曲げてより迫力ある映像を再生し、ゲームをするときは900Rまで曲げて画面に没頭する、といった使い分けもできる。

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LGのゲーミングモニター「FLEX」。奥がフラット、手前が湾曲した状態

かつて、人類は木の板に文字や絵を彫り込んで情報伝達を行ったが、紙が発明されてからは自在に曲げたり畳んだりして、情報を持ち運ぶことができるようになった。そして、スマホの世界では数年前から画面を曲げるモデルが出てきている。IFA2022の会場では、その流れがついにPCやモニターの世界にも広がりつつある最新のトレンドを見ることができたのである。

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携帯電話研究家
山根 康宏

香港在住。最新のIT・通信事情を取材するため世界各国の展示会・新製品発表会を1年中追いかけている。日本のメディアに海外事情の執筆記事多数。訪問先では現地取材と称し地元のキャリアや家電店を訪問し必ずスマートフォンを買い求める。最新のハイスペックモデルからジャンクなレトロ端末まで興味の幅は幅広く、時には蚤の市で20年前の携帯電話を買っては喜んでいる。1度買った端末は売却せず収集するコレクターでもあり、集めた携帯電話・スマートフォンの数は1700台を超える。YouTubeでは日本で手に入らないスマートフォンや香港情報を発信している。YouTubeチャンネルは「yamaneyasuhiro」。Twitter ID「hkyamane」、Facebook ID「hkyamane」。
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