日本にまた新しいスマホブランドが登場した。その名前は「POCO(ポコ)」。実はこのPOCO、格安スマホでおなじみのシャオミの展開するブランドだ。シャオミは現在「Xiaomi」「Redmi」の2つのブランドを基本としてさまざまな製品を販売している。しかし、POCOはこの2つのブランドとは別展開されており、日本でも新たなユーザーを開拓しようとしている。POCOの魅力や登場の背景を紹介しよう。
ハイスペックなのに10万円以下
POCO F4 GTはチップセットに高速なSnapdragon 8 Gen 1を採用、ディスプレイは6.67インチで120Hzの高速駆動、480Hzの高反応速度を誇る。バッテリーは4700mAhで充電速度は120W。なんと充電ゼロから満充電するまでに必要な時間はわずか17分だ。それに加えてメインカメラは6400万画素とワンクラス上のものを搭載、フロントカメラも2000万画素と画質は高い。
さらに振動モーターを搭載し本体を効果的にゆらしてくれる。また、本体内はデュアルベイパーチャンバーで速やかに発熱を冷却してくれるのだ。そして、本体側面にはマグネット式でポップアップするトリガーボタンを2つ搭載。
これらの機能を搭載していることからわかるようにPOCO F4 GTはゲーミングスマートフォンとして他社のハイエンドモデルに対抗しようとしているのだ。価格は7万4800円だが、他社の同等スペック品なら10万円をオーバーしてもおかしくない。
POCOはもともとインド向けに投入されたシャオミの新ブランドだった。シャオミは今や世界3位のスマホメーカーだが、その躍進を支えているのは、世界中で売れまくっている格安スマホのRedmiシリーズだ。
日本でもRedmiシリーズは毎年投入されており、最新モデルの「Redmi Note 11 Pro 5G」は1億800万画素カメラを搭載しながら4万4800円で販売されている。海外では入門機レベルのRedmiモデルも1万円台で売られており、誰もが気軽に買えるスマホブランドとして人気は高い。
だがRedmiが売れれば売れるほど、シャオミの製品には「安物」というイメージが強まってしまった。もちろんRedmiは安いだけではなく価格に対して性能も質感もよく、コスパのいいモデルだ。小売店で例えればコストコのようなものだろうか。しかしあまりにも安いことからその価格ばかりが注目されてしまっているのだ。
シャオミは別ブランドで大成功
シャオミには上位モデルとしてXiaomiシリーズが販売されている。しかし、このXiaomiシリーズもRedmiのイメージとかぶってしまい、ブランドイメージは今ひとつ伸び悩んでいる。ブランドの権威のひとつであるインターブランドが選ぶ世界の100大ブランドを見てみると、シャオミの名前は入っていない。
ちなみに、スマホシェア1位のサムスンはブランドランキング5位、そしてシェア2位のアップルはいわずもがなの1位である。この2社に続くスマホの出荷量を記録しているシャオミだが、そのブランド力はまだまだ遠く及ばないのだ。
POCOはそんなシャオミのイメージを変えるブランドとして2018年に登場。シャオミのコーポレートカラーはオレンジだが、POCOはより目立つイエローを採用した。また、価格は抑えつつも性能を重視したモデルを出すことで「安物」イメージを払拭。
POCO製品のなかで上位モデルから下位モデルまでを完結させており、POCOのファンは次もPOCOを欲しくなるような製品展開を進めた。今やPOCOは「イエローボディーでちょっとカッコいい」というイメージを高め独自のファンを増やしている。
POCO F4 GTはPOCOの製品のなかでは高価なモデルではあるものの、ゲームをプレイしながら目立ちたいと考える若いユーザーに人気となっている。カメラ部分のデザインも独特で、Xの字をデザインした「X ファクター」RGB ゲーミングライトは着信、メッセージ、バッテリー充電、ゲームターボモードのときに効果的に光る。さらにフラッシュライトも雷のデザインで背面の表情をよりクールなものにしている。
日本では前述したようにRedmiシリーズが多数販売されており、スマホ売り上げランキングでも上位に入るなど人気は高まっている。しかし、日本でも海外同様に「シャオミ=価格が安い」という印象も高まりつつある。価格に敏感な層に売れるのはいいことだが、スマホに愛着やブランド価値を持ちたいと考える層は一度Redmiを買っても、次の買い替え時には別メーカーに移行してしまうだろう。
POCOを日本に投入したのは、シャオミの製品でありながらもシャオミを連想させないデザインの製品であり、しかもハイスペックなゲーミングフォンであることからまったく新しいユーザー層を獲得しようと考えているのだろう。
つまり、シャオミは日本市場でさらなるシェア拡大を目指そうとしているのだ。イエローボディーの目立つスマホを電車の中で持っている若者が増える、そんな時代がいずれやってくるかもしれない。