MENU
search icon
media
Beyond magazineでは
ニュースレターを配信しています
検索
Tags
  1. TOP/
  2. エンタメ/
  3. 日本で独自の進化を遂げる「バンライフ」
エンタメ

「バンライフカー」は大人のおもちゃ箱!

日本で独自の進化を遂げる「バンライフ」

author: 佐藤 旅宇date: 2022/04/20

日本におけるキャンピングカーは、仕事を定年退職したシニア世代のものというイメージが強い。しかし、近年は海外の「バンライフ」の影響を受けた若いキャンプ好きたちがキャンピングカーをDIYするのがちょっとしたムーブメントとなっている。先日開催された「車中泊」をテーマにしたイベントの出展車両を紹介しつつ、市販キャンピングカーとの違いや、現在のシーンなどについて、詳しく解説したい。

そもそも「バンライフ」とは何か

明確な定義はないが、車(バン)に生活道具一式を積み込み、放浪しながら暮らすミニマルなライフスタイルのことだ。その原点は60~70年代のヒッピーカルチャーだと思われるが、2010年以降、こうした車中泊生活を現代的でスマートな生き方としてクリエイティブに発信するインフルエンサーが登場し、世界中の人々に影響を与えることになった。

もっとも島国の日本では、主に欧米で行われているようなスケールの大きなバンライフをそのまま実践することは難しく、どちらかというと自作キャンピングカーにおける一種の「様式」に変容しつつある。すなわち海外のバンライファ―(バンライフを実践している人のこと)に影響を受けて作られる自作キャンピングカーのことである。

車だけではなく、生き方のスタイルを意味する本来の意味と混在するとややこしいので、ここでは日本におけるバンライフを便宜的に「バンライフカー」と記述する。

まずバンライフカーの特徴について簡単に。一般的な市販キャンピングカーとバンライフカーはどちらも車中泊をするための車だが、根本的な思想が大きく異なる。

バンライフカーのインテリアは天井や壁を板張りにするなど、ウッディな雰囲気で仕立てられる。木材は入手しやすく、加工しやすいというのがもともとの理由だが、結果的に市販キャンピングカーとの差異が際立つポイントとなっている。

日本の一般的な市販キャンピングカーは、ギャレー(キッチン)や冷蔵庫、電子レンジ、TVといった便利な装備が充実し、限られたスペースで多人数が寝られるよう様々な仕掛けが施されている。つまり利便性に特化したビジネスホテルだ。一方、バンライフカーは基本的に1~2人でゆったり使うことを想定し、利便性より自分の趣味を反映した豊かな空間作りが優先される。

例えばオーナーがサーファーなら、雑貨やラグなどを配して西海岸リゾート風のインテリアにしてみたりといった具合に。また、車自体もあえて古いバンをベースにしたり、あとで個性的な色へと塗装されているケースも多い。ビジネスホテルとは異なり、自分の部屋に近いニュアンスなのだ。

キャンプ好きが求めるキャンピングカーの形

近年、こうしたバンライフカーがキャンプ好きの若者たちを惹きつけたのは、比較的安価に制作できることはもちろん、適度に自然と調和しつつ車内で過ごせるからだろう。今年2月、キャンプ民泊NONIWAで「車中泊キャンプとDIY講座」を主催した逸見さんはこう語る。

「コロナ禍の緊急事態宣言でキャンプ場が閉鎖されたことがあったじゃないですか。だったらどこでも手軽にキャンプできる車を自分で作ればいいのではと思ったんです。SNSで海外のバンライファを参考にしつつ、愛用しているキャンプギアの雰囲気にマッチするよう作りあげました」

日本の市販キャンピングカーの多くは、手ぶらでもキャンプ気分を味わえるよう作られている。いわゆる「キャブコンタイプ」のモデルになると、断熱性の高いキャビンにさまざまな家電製品、ソーラー発電、家庭用エアコン、FFヒーター等々、とにかく快適に過ごすための装備が満載だ。

だが、車内が快適になればなるほど自然との一体感は薄まる。それはもはや「キャンプ体験」というより「別荘体験」である。したがって、自然のなかで過ごすことの「不便さ」をネガティブな要素ではなく、楽しみとして受容できるキャンプ好きにとっては、キャンピングカーよりもバンライフカーの方が感性にフィットするのだろう。

実際のところ、日本で車中泊する場合はキャンプ場やRVパークなど、最低限の設備が整ったフィールドを利用することがほとんどだ。無人地帯であっても自宅と同じように文化的に過ごせてしまう従来のキャンピングカーは、ブームによってキャンプリテラシーの高まった層には過剰なものに感じるに違いない。事実、最近ではこうした時勢に合わせ、あえて装備を削ったバンライフカー的な市販モデルも多数登場してきている。

このままキャンプブームが続き、キャンピングカーユーザーの世代交代も進むとバンライフカーが日本のシーンの中核に成長しても不思議ではないだろう。

今年2月に埼玉県ときがわ町のキャンプ民泊「NONIWA」で開催された「車中泊キャンプとDIY講座」。4人の若手バンライファーが集まってそのノウハウを伝授するというもの。コロナ禍以降、車中泊やDIYに対する一般の関心はとても高くなっており、すぐに定員に達したという。

イベントの主催者である逸見真央さんは30万円で購入したマツダ「ボンゴバン」をDIYでバンライフカーに。ホームセンターで簡単に入手できるOSB合板を使って理想の車中泊空間に仕上げている。キッチン用品などを収納する棚は扉を開けることでテーブルにもなる優れもの。一般的なキャンピングカーのように車内だけで過ごすのではなく、キャンプと車中泊の折衷スタイルだ。

出展者の一人であるmieさんはトヨタ「ヴォクシー」のインテリアをカスタマイズ。もともとは家族でキャンプをすることが多かったが、子供が大きくなったことを機に家族以外の友達と気ままにキャンプを楽しめる車両が欲しくなったそう。DIYの経験はなかったが、電動インパクトドライバーを入手したことで作業効率が格段に向上したそう。もともと雑貨好きということもあってログハウスのようなお洒落な仕上がり。

小濱潤平さんは海外のバンライフカルチャーに影響され、2018年より中古の三菱「デリカ バン」をカスタマイズ。現在は車中泊キャンプの魅力を提案するプロジェクト「Vancamp Japan」も運営している。床には水や汚れを弾くPVC素材のフローリング材を張り込み、シェルフとベッドを木材で製作した。電源はお手軽なソーラーパネル+ポータブル電源によって確保している。カメラの三脚を流用した簡易テーブルはアイデア賞もの。

イベントの会場となった「NONIWA」の代表、青木夫妻は日産「キャラバン」のインテリアを板張りにして、ルーフトップテントを装着。サイクリングと車中泊が両方楽しめる仕様となっている。制作は外装の塗装も含め、キャンパーカスタムを専門に行う「CielBleu.」に依頼したという。

author's articles
author's articles

author
https://d3n24rcbvpcz6k.cloudfront.net/wp-content/uploads/2021/06/098.jpg

編集者・ライター
佐藤 旅宇

オートバイ雑誌、自転車雑誌の編集部員を経て2010年からフリーランスの編集ライターとして独立。タイヤ付きの乗り物全般や、アウトドア関連の記事を中心に雑誌やWEB、広告などを手掛ける。3人の子どもを育てる父親として、育児を面白くする乗り物のあり方について模索中。webサイト『GoGo-GaGa!』管理人。1978年生まれ。
more article
media
FREAK’S STOREとBeyond magazineによるユース世代を応援するプロジェクト「若者フリーク」が始動!
エンタメ
date 2024/11/13