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「携帯電話研究家」の大いなる嗜み

2年ぶりのアメリカで5Gスマホ5台を10万円で購入した

author: 山根 康宏date: 2022/03/29

香港在住の筆者は毎月のように海外出張に出かけ、頻度の高いときは月に2回3回と出かけるのが新型コロナウィルス蔓延までの常だった。「携帯電話研究家」という仕事上、海外の展示会を回ることが仕事そのものなのだ。しかし、最後に展示会取材を行ったのは2020年1月にラスベガスで開催された「CES 2020」だった。そのCESは2021年こそバーチャル開催に変更されたが、2022年は2年ぶりの展示会場での実開催ということで筆者も思い切って取材にでかけたのだった。

世間はオミクロン株が流行を始めたころだったが、ラスベガスについてみるとカジノの並ぶ繁華街は多くの人でにぎわっていた。2年前と大きく違うのは誰もがマスクをしていること、そしてあちこちに簡易的なPCR検査場を見かけたことだ。感染は怖い、しかしそろそろカジノやショーで息抜きをしたい、そんな観光客がアメリカだけではなく世界中から訪れていたのだ。

T-Mobileの5Gスマホ「REVVEL V+ 5G」を半額以下で入手

CES 2022の取材に訪れた筆者だが、展示会の開催直前には自由時間がある。ならばカジノで一攫千金を目指すのが一般的な考えだろうが、筆者が真っ先に向かったのはアメリカの通信キャリア「T-Mobile」のお店だ。仕事柄ではなく筆者にとってスマホは趣味を超えた生きがいであり、海外に渡航した際は渡航した土地でかならず1台買うようにしている。高いものをよく簡単に買えるな、と思われるかもしれないが、日本と違い海外ではプリペイド用の安価なスマホも売っているのだ。

ラスベガスのT-Mobileショップ

今回T-Mobileを訪問した理由は、T-Mobileが自社で出しているオリジナル5Gスマホ「REVVEL V+ 5G」を買うためだ。筆者はこの手の「他にはない、限定品」に弱い。1600万画素カメラを搭載したエントリークラスの5Gスマホだが、ラスベガスでの通信用に買うので問題ない。必要ならば普段使っているメインのスマホをテザリング接続すればいいだけだ。現地でスマホを買おうとも、あくまでもメインで使うのは普段のスマホなのである。

T-Mobileの店舗はラスベガスの繁華街、ストリップに面している。ピンク色っぽいマゼンダカラーのライトが光る店舗はいつ見てもかっこいいものだ。ちなみにこの店舗は2年前のラスベガス訪問時にオープンしたもので、当時は時間がなく立ち寄ることができなかった。

店内に入ると若い店員が総出で迎えてくれる。「なにをお探しですか」と聞いてくるので「T-Mobileの5Gスマホが買いたい」と伝えると、「あなたはラッキーですよ。じゃあここから先はトミーが案内しますね」とバトンタッチ。トミーは「REVVEL V+ 5Gが欲しいのかな。ならばスペシャルオファーがあるよ」と先制パンチを食らわせてくる。

REVVEL V+ 5Gの価格は199ドル。2万円ちょっとだ。これに通信費が40~50ドルかかる。合計3万円弱になる予定だ。ところがトミーは「2か月分のプリペイド基本料金を払ったら、スマホはタダだよ」という。

何のことだかわからないが、50ドルでデータ定額のプリペイド料金を2か月、つまり100ドル払うとREVVEL V+ 5Gが無料なのだ。当初は250ドルくらいかかると思っていたのに、まさかの半額以下、1万円ちょっとでスマホとデータ定額を手にしてしまった。アメリカは気が付けば5G天国になっていたのである。

購入したT-MobileのREVVEL V+ 5G

店内にはインスタ映えする撮影スポットもあり、そこで早速スピードテスト、500Mbps弱とかなりの高速だ。4Gではせいぜい100Mbps程度だし、ラスベガスのホテルはWi-Fiが遅く数十Mpbs台。これならもうWi-Fiもいらないと思える回線をこんなに手軽に入手できるなんて、T-Mobileに真っ先に来てよかったと実感した。

2台目は下町のスマホショップで「Boost Mobile」を購入

さて、半額以下で5Gスマホを買えたことに気をよくして、翌日は「Boost Mobile」という別のキャリアの店に行ってみた。Boost Mobileは12月からラスベガスで5Gを開始したばかりであり、自社ブランドの5Gスマホ「Celero 5G」を出しているのだ。ただし定価は280ドルとやや高め。ラスベガス渡航前に下調べはしていたものの、買うのは無理だとあきらめていた。

Boost Mobileの代理店

しかしT-Mobileのようにプリペイド料金とセットなら安くなるかもしれない。しかも当初の予算はまだ余っている。Boost Mobileのプリペイドスマホは代理店でなくては販売しておらず、繁華街からちょっと離れたエリアのショップへ移動して価格を聞いてみることにした。

店に入るとラテン系の店主が先客の対応をしている。店内はやや雑然としており、下町のスマホショップといった雰囲気だ。そんなところに東洋人が入ってきたものだから、店主はちらりとこちらに目を向けると「ちょっと時間かかるけど待っててくれよな」と、暗黙の視線を投げてきた。こちらの身なりからはるばる遠くからやってきたことを察してくれたようだ。

先客を待つこと15分ほどでようやく自分の順番となった。店主に「Boost Mobileの5Gスマホ、Celero 5Gが欲しい」と伝えると、「5Gを買うのか! 在庫を出すからちょっと待ってくれ」と店の奥へと引っ込んでいった。この界隈で5Gスマホ、しかも無名な製品を買う客などいないのだろう。店員が出しきたスマホの箱も、ちょっと埃をかぶっているようで仕入れてからやや時間がたったものだったようだ。

Boost MobileのCelero 5G

店主は親切にもセッティングをしてくれる。「データはコピーするか」「ケースはいるか」とかなり親切だ。店にとっては不良在庫になるかもしれないスマホを買ったからだろうか、手の動きもかろやかだ。さて気になるのは価格である。もはや設定しているのでいまさら買わないとは言えないが、いくらなのだろうか?

「料金は50ドルのデータでお願いします」と伝えるとこれまた店主は驚いた。一般的には20~30ドル程度の料金がプリペイドユーザーには好まれており、50ドルを払う客はそもそもBoost MobileではなくT-Mobileなど大手キャリアを使うからだ。「ちょっと計算するよ」と価格表を見てから、店主の答えは「126ドル」。これまた半額近い値段で買えてしまった。

もはやネットに出ている定価の意味がわからないではないか。とはいえ2台と2台分のプリペイド通信料で合計276ドル、当初REVVEL V+ 5Gとプリペイド料金の予算として考えていた250ドルとほとんど変わらない価格で5Gスマホを2台も買えてしまった。

3台目はアメリカ3大キャリアのひとつ「AT&T」

こうなると調子に乗ってしまうのが筆者の悪い癖である。Boost Mobileの次は食料品の買い出しにスーパー「TARGET」へ向かったのだが、アメリカのスーパーはプリペイドスマホも売っているのだ。さっそくスマホコーナーに行ってみると本体価格が50ドルといった格安4Gスマホがいくつも売っている。しかもそれらに交じって「5G」の表記のあるスマホが売っているではないか!

アメリカの大手スーパー、TARGET

筆者が見つけたのは「AT&T」の「RADIANT Max 5G」。AT&TはT-Mobile、Verizonと並んでアメリカ3大キャリアの1社だ。このRADIANT Max 5Gは実はベトナム製なのである。今やスマホの多くが中国製、iPhoneだって主力の生産地は中国だ。

一方近年はサムスンがベトナムに工場を移転して以降、ベトナム製のスマホも増えている。そのベトナムで最新の通信方式である5Gに対応したスマホが作られる時代になっただなんて、感慨深いというか、ロマンを感じられないだろうか? 価格は199ドルで本体のみを購入。もう2台5Gスマホを買っているので、データ料金は買わなくてもいいだろう。つまりこのスマホは「観賞用」に買ったのだ(実際は筆者のスマホコレクション用)。

AT&TのRadiant Max 5G

往年の大ブランド「Nokia」の5Gスマホはいかに

アメリカにきてわずか数日で3台の5Gスマホを買ってしまうと、もはや自分には買えないものはないのではないかという錯覚に陥ってしまう。ホテルに戻って生活必需品を買おうとアマゾンUSAを見ていたのだが、ふと検索窓に「5G Smartphone」と入れて見ると、ここでもいくつかの5Gスマホが売られていた。

しかも往年の大ブランド、「Nokia」の「G300」が売っている。キャリアはMVNOのTotal Wirelessで、価格は179ドル。はい、即座に購入決定。ホテルに届いたのは4日後だった。このNokiaには30ドルのプリペイド料金を入れて使うことにした。

Toal WirelessのNokia G300

5台目は帰国日前日に購入

これでもうアメリカでの買物で思い残すものはなくなった。CES 2022の取材を行い、日々購入した5Gスマホを使いながら有意義な毎日を過ごすことができた。そして取材が終わり帰国する前日、お土産を買いにスーパーへ向かったのだが、ここで欲張りな考えが頭の中をよぎってしまった。「そういえばスーパーの向かいにMVNOキャリアの店があったな」。

CES 2022会場でも700Mbpsオーバー。5GはWi-Fiよりはるかに速い

ということでスーパーで買い物をする前に、MVNOのCricket Wirelessの店へ入り、「5Gスマホを1台いただきたい」と伝え、同社のオリジナルスマホ「Dream 5G」を購入。こちらは全部込みで180ドルだった。

ちなみにこのスマホはAT&TのRADIANT Max 5Gと同等品で、キャリアのロゴやボディー仕上げが若干異なる。帰国日直前にスマホを買う意味があるのかと問われると「欲しいから買う」のであり、使うかどうかは別の話だ。

帰国直前に5台目の5Gスマホをゲットした

結局2年ぶりのアメリカでスマホ5台、合計864ドル、約10万円を使ってしまった。10万円もあればラスベガスの高級ホテルで豪華なディナーでも食べることができただろう。しかし、筆者にとってキャリアのオリジナル品やNokiaのスマホはそれ以上に価値のあるものなのだ。次のアメリカ行きは来年、2023年1月のCES 2023取材になるだろうが、その時筆者は果たして何台の5Gスマホを買うのだろうか。

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携帯電話研究家
山根 康宏

香港在住。最新のIT・通信事情を取材するため世界各国の展示会・新製品発表会を1年中追いかけている。日本のメディアに海外事情の執筆記事多数。訪問先では現地取材と称し地元のキャリアや家電店を訪問し必ずスマートフォンを買い求める。最新のハイスペックモデルからジャンクなレトロ端末まで興味の幅は幅広く、時には蚤の市で20年前の携帯電話を買っては喜んでいる。1度買った端末は売却せず収集するコレクターでもあり、集めた携帯電話・スマートフォンの数は1700台を超える。YouTubeでは日本で手に入らないスマートフォンや香港情報を発信している。YouTubeチャンネルは「yamaneyasuhiro」。Twitter ID「hkyamane」、Facebook ID「hkyamane」。
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