MENU
search icon
media
Beyond magazineでは
ニュースレターを配信しています
  1. TOP/
  2. ANNEX/
  3. ライカ初の自社ブランドスマホ「Leitz Phone 1」と隠れた名作「CM1」
ANNEX

ライカのコラボの歴史を振り返る

ライカ初の自社ブランドスマホ「Leitz Phone 1」と隠れた名作「CM1」

author: 山根 康宏date: 2021/09/18

ライカ初の自社ブランドスマホ「Leitz Phone 1」が話題となっているが、ファーウェイよりも前にパナソニックと手がけたライカスマホ「LUMIX DCM-CM1」の存在をなくして語ることはできない。

カメラメーカーとして歴史のあるライカから初の自社ブランドスマホ「Leitz Phone 1」が発売になった。世界で誰もが知るライカの名前を冠したスマホだが、現時点では日本でしか購入することができない。18万7920円(税込、ソフトバンク販売)という価格は、スマホとしては高価だがライカの製品と考えるとむしろ安いのではないだろうか。

ライカの名前が刻まれたスマホを振り返る

Leitz Phone 1はライカがゼロ開発したのではなく、シャープの「AQUOS R6」をベースにカメラ機能をブラッシュアップし、本体(外装)の設計をライカが行った製品だ。そのため本体のデザインのあちこちにAQUOS R6の面影が残っている。

丸みのあるディスプレイはライカの“アナログカメラ”のイメージとはややずれているし、背面カメラの大きな円形の台座の中に見えるレンズは円の中心から若干左側にずれている。とはいえ、本体の仕上げはさすが「ライカブランド」の名に相応しい出来であり、側面のローレット状の加工は重厚感と滑り止めという実用性をうまく両立させている。

Leitz Phone 1

カメラサイズのセンサーを搭載した名作「CM1」

100年以上もの長い歴史を誇るライカだが、今ではデジタルカメラを手掛けていて、スマホメーカーであるファーウェイとの協業も2016年の「Huawei P9」から開始している。その後のファーウェイの躍進は誰もが知るところだが、それまで“いち中国のスマホメーカー”だったファーウェイを世界で通用するブランドに引き上げたのは、ライカの名前によるところが大きい。そればかりか、ライカのカメラを搭載したファーウェイのスマホは、カメラ品質において常に業界でトップを走ってきた。

ファーウェイのハイエンドスマホはライカのカメラを搭載する

そのファーウェイがライカとコラボする以前にも、ライカのカメラを搭載したスマホが出ていたことを知っているだろうか。2014年にパナソニックが発売した「LUMIX DCM-CM1」(CM1)および2016年の「LUMIX DCM-CM10」(CM10)だ。

パナソニックは日本でも古くからケータイやスマホを出していたが、2013年に日本国内でのスマホ事業撤退を発表。その1年後に登場したCM1は、Android OSを搭載しており4G通信機能を備えていながら、デジカメのモデル名で登場した。つまり、CM1は高性能カメラを搭載したスマホではなく、通信機能とスマホOSを搭載したデジカメだったのだ。

パナソニックのCM1・CM10はデジカメ風デザインだがれっきとしたスマホだ

CM1のカメラは1インチセンサーを搭載している。これは今でもVLOGカメラなどのデジカメ向けの大型のセンサーサイズなのだが、スマホカメラは年々大型化してはいるものの、長らく1インチクラスの大型センサーを搭載してこなかった。

その理由には、大型のセンサーを搭載するにはスマホのサイズが小さすぎるということも挙げられるが、スマホメーカー各社が1インチセンサーを搭載することよりも、複数のセンサーを搭載したマルチカメラの方向へと進んでいったことも大きい。その結果、今では4つ、5つと複数のカメラを搭載するスマホが当たり前になっている。

そんな背景もあり、冒頭に書いたAQUOS R6とLeitz Phone 1を遡ると、このCM1が長らく最後の1インチセンサーのカメラを搭載したスマホだったのである。

CM1のカメラ部分。デジカメと同じ1インチセンサーを搭載していた

CM1には誇らしげに「LEICA」のブランド名が光る。パナソニックは2001年からデジカメ分野でライカと協業を始め、ライカブランドのデジカメはパナソニックからリリースされていた。CM1はその協業の流れの中から生まれた製品であり、超小型のデジカメに通信機能とライカカメラのスペックを搭載するという、贅沢かつ挑戦的な製品だったのだ。

それは本体のつくりを見てもわかる。CM1のボディーは側面がアルミで、ディスプレイの裏側、すなわちレンズの見える側はレザー風の仕上げになっている。本革ではないものの持ったときの手触りが心地よい。

革のようなシボ加工をした樹脂でおおわれている

CM1の発売時の価格は12万9000円(税込)。ヨーロッパで先行販売され、日本では限定2000台が後から発売された。当時、スマホはキャリア販売が主流であり、割引販売も横行していた。そんな時代に「SIMフリー」「10万円超え」「1インチセンサーカメラ」という製品をパナソニックは投入したのだ。

CM1を購入したのは筆者のようなよほどの数寄者か、ハイエンドデジカメユーザーでスマホにも高性能なカメラを求めていた一部のユーザーだけだっただろう。だが、逆に購入者が少ないということは希少価値もあるということであり、CM1を持っているだけで当時は自慢できたものだ。

CM1のカメラを起動。ユーザーインターフェースはデジカメそのものだ

サブカメラとしての「CM1」「CM10」という選択肢

CM1から2年後の2016年に発売されたCM10は、CM1の通信機能から通話機能を削除(データ通信のみ利用可能)、拡張外部端子を廃止するなどして価格を引き下げたモデルだ。残念ながらこの後の後継モデルは出てこず、商業的には成功を収めることはできなかった。

だが、CM1、CM10の本体仕上げには最新機種にも見劣りしない高級感があり、カメラも動作が遅いものの2000万画素1インチセンサーを搭載しているので、現役として十分使うことができる。ライカのカメラを搭載していることで、その性能は今も色あせていないのだ。中古市場ではまだ見かける製品なので、ちょっとしたサブカメラとして今から買うのも悪くはないだろう。

スマホのカメラ性能はコンパクトデジカメを駆逐したほど性能は高まっている。しかし、カメラとしてじっくり使うことを考えると、本体形状は握りやすいとは言いがたい。Leitz Phone 1の側面処理はよくできているが、カメラを使っているという感覚で写真撮影に臨むためにも、グリップの付いた「ライカカメラ風ケース」なんてものをぜひどこかに出してほしいものだ。

Leitz Phone 1はシリコンケースが付属するが、本革ケースが欲しい
author's articles
author's articles

author
https://d3n24rcbvpcz6k.cloudfront.net/wp-content/uploads/2021/04/028.jpg

携帯電話研究家
山根 康宏

香港在住。最新のIT・通信事情を取材するため世界各国の展示会・新製品発表会を1年中追いかけている。日本のメディアに海外事情の執筆記事多数。訪問先では現地取材と称し地元のキャリアや家電店を訪問し必ずスマートフォンを買い求める。最新のハイスペックモデルからジャンクなレトロ端末まで興味の幅は幅広く、時には蚤の市で20年前の携帯電話を買っては喜んでいる。1度買った端末は売却せず収集するコレクターでもあり、集めた携帯電話・スマートフォンの数は1700台を超える。YouTubeでは日本で手に入らないスマートフォンや香港情報を発信している。YouTubeチャンネルは「yamaneyasuhiro」。Twitter ID「hkyamane」、Facebook ID「hkyamane」。
more article
media
MIYASHITA PARK パンエスで、シャオミ・ジャパンの製品と「Xiaomi 14T Pro」の作例を楽しもう!
ANNEX
date 2024/12/20