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梶原由景が歩いて出会った美味しい店

ドラマも何もない場所だが、ハンバーグサンドは美味しい。

author: 梶原 由景date: 2021/04/27

僕は寂寥感の虜である。機会あれば存分に寂寥感を浴びるべく地方の街々を訪ねる。頑張れば日帰りできそうな出張でも、絶対にそのまま帰らない。敢えて東京への帰路、具合の良さそうな街に降り立ち一泊する。

ある日も前日嬬恋のキャンプ場でのイベント視察の帰り長野市に一泊した。曲がりなりにも県庁所在地。良い具合に寂しく、良い具合に食べ飲みも充実していることだろう。信州となれば蕎麦か。信州名物をアテにビールをやり、〆に蕎麦。望むところだ。

が、案外寂しすぎた(笑)。有名な鮨店があるようだけど、さすがに海なし県で最初に鮨というのは無粋だ。駅周辺の繁華街には食べログでも高評価の、如何にも観光客相手の大箱居酒屋がある。こちらも観光客だ、ここでいいだろう。が、すでに満席だという。どれくらいで空きますかとの問いに、今日は無理とのこと。なるほど、周辺には民芸風というかなんというか、外観が酷似した店が連なっている。この店に入れなかった客を収納する機能を持っているのだろう。

では、と帰りに一部マニアには聖地と言われる場所に立ち寄った。ここは「ドライブイン七輿」。昔ロードサイドによく見た自動販売機のみで構成されるドライブイン。高度経済成長期の遺物との言える施設だ。すでに何人か先客あり。しかしどこででも食べられそうな日清カップヌードルを食べている。そりゃ安定して美味しいだろうけど、なぜ!? ここはレトロ食品調理系自販機の聖地なのに。中にはもうメーカーが製造中止はおろかメンテナンスもできない貴重な自販機があるらしい。ハンバーガーやホットサンドなどを提供する、絶滅危惧種とも称されるあれだ。

オートスナックの最盛期、つまり肉が高価だった当時グルテンバーガーという模造肉を用いたハンバーガーが展開されていた。しかしいまや安くて品質の良い輸入肉が手に入る時代。代用する必要なしということなのだろう、こちらでも本物の肉が使われている。しかも、ハンバーガーというより僕の好きな類の“ハンバーグサンド”の趣がある。パティではなくハンバーグとしか呼びたくない代物。それが大事。そしてなんともちょうどいいジャンクさ。コーラの自販機は瓶。これまた寂寥感を構成する重要な小道具。

オリジナルのチャーシュウ麺も人気らしい。この時ちょうど麺の補充が行われていた。麺は最初から容器に入っている。あ、これテレビで見たかも。また自宅で調理する用の持ち帰りバージョンも販売中だ。

食後に併設されたゲーセンをのぞいてみた。こちらで気の利いたレトロゲームが楽しめるなら言うことなしなのだが、顧客層の望む麻雀ゲームなどで構成されていて食後の一興とはならなかった。レトロなんとか保存会とかいう張り紙や、誰が入れ知恵したか不安になるオリジナルグッズ数々が若干邪魔だが(笑)、ドライブイン自体はなんとも味わい深い空間だ。

「ドキュメント72時間」の題材にもならなそうな、ドラマも何もない場所。しかし僕はまたここに来るのだろう。寂寥感目当てではない。ハンバーグサンドが美味しいから。

  ドライブイン七輿

  ドライブイン

  • 群馬県/藤岡市
  • 住所:群馬県藤岡市上落合853
  • 電話:0274-23-0951
  • 休:日曜日
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クリエイティブディレクター
梶原 由景

LOWERCASE代表。元BEAMSクリエイティブディレクター。ソニーとのデザインホテル・プロジェクトを行うなど異業種コラボレーションの草分けとして知られる。またルイ・ヴィトンとKDDIのモバイルコンテンツを手掛けデジタル、デザインからアパレルまで幅広い業界にクライアントを持つ。藤原ヒロシ氏とコンテンツサイトRing of Colourを立ち上げ情報発信中。
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