「シェアトリップ」の仕掛け人で、トラベルプロデューサーの堀真菜実が今回紹介するのは、沖縄県名護市。この名護で、一杯のコーヒーを究極に美味しくいただく旅に出た。
海やリゾートのイメージが強い沖縄に、東南アジアさながらの亜熱帯ジャングルがあることをご存知だろうか。沖縄県名護市。那覇から車で北上すること約1時間。東西と北の三方を海に囲まれながら、山々が連なる「やんばる」エリアの玄関口でもある、自然に恵まれた場所だ。この名護で、一杯のコーヒーを究極に美味しくいただく旅に出た。
コーヒー農園の見学とセルフ焙煎
海の見える市街地から車で約10分。木々やヘゴがうっそうと茂る亜熱帯の森のなかに、コーヒー農園はある。コーヒーの産地と言えば、南米やアフリカを思い浮かべる方がほとんどだろう。国内では奄美諸島、小笠原諸島、沖縄の一部でのみ細々と生産されており、一般に流通することは稀だ。国産のコーヒーはそれほど珍しい。
この旅は、そんなコーヒーの栽培を見学するところからスタートする。単に木を見るだけではなく、熟れたコーヒーの実を摘んで生のまま味見をしてみたり、周辺の植生について教わったりしながらジャングルの中を散策する。
続いて、青空の下での焙煎。農園で採れた貴重な国産豆を、自分が飲む一杯分だけ丁寧に直火で焙煎する。森の中がだんだんと香ばしい香りに包まていく。出来上がった豆は、浅煎りから深煎りまで2つとして同じものはない。自分だけのコーヒー豆の完成だ。
ジャングルの奥の天然水を目指して川登り
つぎは、ジャングルを流れる清流へ。上流にある滝の水を求めて、川のなかを歩いていく。川に近づくと、虫や鳥の声がこれまで以上に鳴り響く。ひんやりとする水は透明度が高く、木漏れ日が水面に反射する。清流に生息する生物を眺めながら、時には岩場をよじ登り、時には泳ぎながら上っていくと、ついにゴール地点の滝が見える。正直なところ、このリバートレッキングだけでも名護へ来る目的としては十分だ。
だが、ここまで来たもう1つの理由を忘れてはいけない。滝を落ちる水は、混じりけがほとんどない、まさに名護の天然水だ。滝壺へダイブし、滝の水をボトルに汲む。
一杯のコーヒーから味わう名護
挽きたての豆とフレッシュな天然水で作る一杯は、格別としか言いようがない。味だけではない。淹れたてのコーヒーの香り、滝とせせらぎの音、生い茂るジャングルの緑、滝に反射する光、足元を流れる清流の冷たさ……五感が満たされるシチュエーションが、この旅の醍醐味だ。
一杯のコーヒーという切り口から、まるで海外に来たかと錯覚するような亜熱帯の森に足を踏み入れ、そこに住まう動植物を知り、名護を愛する農家さんやネイチャーガイドに土地の話を聞くことができた。
自らの手で焙煎をし、ジャングルの中を天然水を求めて歩く。何でも手軽に手に入ってしまう昨今、たった一杯のために、これだけの手間暇をかけること自体が、最高の贅沢ではないか。
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〒905-0007 沖縄県名護市屋部538-2
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