「シェアトリップ」の仕掛け人で、トラベルプロデューサーの堀真菜実が今回紹介するのは、島根県西部に位置する大田市温泉津町「日祖(ひそ)」。あの「Google Map」にすら載っていないのだ。田舎暮しに触れ、絶景を独り占めできるこの秘境は、本当は誰にも教えたくない場所だ。
今回紹介するのは、島根県西部に位置する大田市温泉津町「日祖(ひそ)」。わずか十数世帯がひっそりと暮らす限界集落だ。海で魚を釣り、山に咲く花を生ける。日の出とともに起き、夜は穏やかに。山と海に囲まれた日祖の暮らしは、まさに自然とともにある。かつては海水浴場として賑わったそうだが、現在この地を訪れる人はほんのわずか。何しろ「日祖」の地名は、あの「Google Map」にすら載っていないのだ。田舎暮しに触れ、絶景を独り占めできるこの秘境は、本当は誰にも教えたくない場所だ。
おじいちゃん、おばあちゃんに教わる日祖流の遊び方
日祖でできる体験は、観光用に開発されたものではなく、ここの暮らしそのもの。例えば、「日祖遊び」では、おじいちゃんたちの少年時代の遊びを教わる。筆者は、"海辺で炊き込みご飯作り"に挑戦。大きな釜と米をかつぎ、山に囲まれた秘密基地のような湾へ。山で集めた木の枝に火を起こし、羽釜でご飯を炊く。こんな体験は、子供だって大人だって、心がくすぐられるものだ。
宿泊は一組限定。だから地元の方々以外には会わない
2019年夏、日祖唯一の宿泊施設「HÏSOM(ヒソム)」がオープン。一日一組の貸切り型なので、人が集まる場所を避けたい今の時期も安心だ。空き家となった古民家を改修しており、懐かしさを感じる一方でデザイン性が高く、キッチンには最新の料理器具が並ぶ。庭には自由に収穫できる無農薬野菜が育ち、BBQセットも完備。内と外を繋ぐ土間は風通しがよく、子供が駆け回る姿が想像できそうだ。
のんびり裏庭を眺められる縁側や、海から戻ってそのままシャワーが浴びられるバスルームも。何日でも滞在したい。
朝には「漁師の朝ごはん」。前日に水揚げされた新鮮な魚介を、漁師の奥様が地元の家庭料理にして届けてくれる。メニューはおまかせ。旬のもの、島根の名物など、何が味わえるのかは当日のお楽しみだ。
実は温泉ファンにはちょっと知られた温泉津(ゆのつ)の温泉
日祖がある大田市温泉津は、温泉ファンには名の知れた場所。以前に日本温泉協会が実施した泉質審査において、全項目が最高評価の「オール5」を受けた天然温泉は、全国でもたった19箇所だが、その一つが、ここ温泉津にある。つまり、泉質バツグン。地元の人も健康のために通う、愛され温泉だ。温泉津の中心地までは車で5分ほどなので、足を伸ばしてみるのも良し。明治・大正時代の建物が多く残るレトロな町並も、タイムスリップしたような懐かしさがある。
滞在中、温泉では何度も常連さんに話しかけられ、温泉の入り方を教わった。さすがはその名の通り、温泉郷だ。お湯を通して体も心も温まった。
2018年、まだ宿泊施設も無かった日祖に訪れ、住人の皆さんが観光地として踏み出す決断をするのを目の当たりにした。長い間、顔の知れたメンバーでひっそりと暮らしてきたのだから、当然そこには葛藤もあった。翌年、HÏSOMが誕生。限界集落のチャレンジはまさにここからだ。
「あの時挑戦してよかった。」ここで暮らす人達が、そう言い合う未来を、願わずにはいられない。訪れる人には、是非「日祖の暮らしにおじゃまします」という気持ちで、彼らに寄り添う滞在をしてほしい。きっと「ただいま、また来たよ」と言える場所を得られるはずだ。
宿泊・体験したい方はこちら
島根県大田市温泉津町温泉津 イ588-1
☎090-7507-6558