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新機能から考えるSNSの未来

開放的なTwitterが、閉鎖的な「コミュニティ」機能をテストする理由

author: 鈴木 朋子date: 2022/04/15

ここのところ、Twitterの動きが熱い。2021年5月に音声チャット「スペース」を開始したのち、アカウントに投げ銭ができる「チップ」、有料サブスクリプション「スーパーフォロー」など、次々と新機能を実装している。

そして、「コミュニティ」の登場だ。コミュニティ機能は、言うなればFacebookのグループに似た機能で、特定のテーマに関心を持つユーザーが参加して交流する。21年9月に英語圏で一部のユーザーに向けて提供され、国内では2022年1月にテストを開始した。Twitterは新機能をリリースする際には、まず一部の国でテストし、機能を追加しながらテストを拡大していく流れを踏むため、コミュニティ機能はまだ正式にローンチしたというわけではない。しかし、日本でもコミュニティを作成することができ、その数は着々と増えている。

Twitter「コミュニティ」機能

あらためてコミュニティを説明しよう。コミュニティは、あるテーマに関心を持ったユーザーが集まり、ツイートやリプライで交流する機能だ。例えば、映画マニアが集まるコミュニティでは、ユーザーは一部の人にしかわからない映画の話をコミュニティに投稿できるようになる。自分のアカウントではフォロワーに気遣ってツイートを控えるような話を盛んに投稿できるのだ。

こうしたケースでは、メインアカウントと映画用のサブアカウントといったように、複数のアカウントを使い分けている人が多いだろう。しかし、コミュニティに参加することで、ひとつのアカウントでそれぞれの顔ができる。

コミュニティに参加すると、タイムラインに一般のツイートとコミュニティのツイートが表示されるようになる。コミュニティのツイートには、コミュニティ名も表示される。

コミュニティへツイートを行うには、ツイート画面で投稿先を選択する。アカウントをフォローしている人には表示されず、そのコミュニティを開くと見ることができる。コミュニティ内のツイートにリプライできるのは、コミュニティのメンバーだけ。ただし、メンバーでない人も引用RTができ、その際は一般のツイートと同様の範囲で公開される。コミュニティに向けたツイートだからと不適切な内容を投稿すると、誰かに引用RTで拡散されてしまう可能性がある。

コミュニティへの投稿はツイート画面で選択する

コミュニティは、コミュニティを作成した管理者と、管理者が指名したモデレーターで運営される。不適切な発言など、コミュニティのルールに違反した場合は管理者やモデレーターにメンバーから外される可能性がある。

コミュニティへの参加方法と作り方

いざコミュニティに参加! と息巻いても、どこから参加するかわからない人も多いだろう。それもそのはず、コミュニティのメニューはどこかのコミュニティに参加しないと現れないのだ。

知り合いがコミュニティを作っていたら参加してみるといい。もしくは、「コミュニティを見つける」にアクセスし、おすすめされたコミュニティか、画面上部にある「コミュニティを検索」で興味のあるキーワードを検索してみよう。

コミュニティの画面を表示すると、コミュニティの基本情報やルール、メンバーを見ることができる。「参加する」ボタンを押すと参加できるが、管理者の承認が必要なコミュニティもある。コミュニティの参加により、アプリでは画面下部、ウェブでは左のメニューにコミュニティアイコンが表示される。ツイート画面にも、コミュニティ名を選択できるメニューが現れる。

コミュニティに参加すると最初は説明が表示される

コミュニティに慣れてきたら、自分でコミュニティを作ってみてもいいだろう。ただし、現在は1アカウントに1つしかコミュニティを作ることができない。また、削除もできないため、慎重にテーマを考えてから作成することを勧める。なお、名称の変更はいつでもできる。コミュニティの作成はコミュニティ画面で「+」ボタンを押すと開始できる。

Twitterがクローズドな機能をテストする理由

冒頭で述べたように、Twitterは新しい機能を続々と提供している。機能を見ていくと、Twitterの狙いが見えてくる。それは、ユーザー同士の交流の強化だ。

「スペース」は、スピーカーの話をリスナーが聞く形式の音声チャット機能だ。芸能人がファンとの交流に使ったり、一般の人が深夜の雑談に利用したりと少しずつ利用が広がっている。アプリの上部に紫色で囲まれたアイコンを見た人も多いだろう。あれはスペースを開催中という表示で、参加すると話を聞くことができる。有料の「チケット制スペース」も今後リリースされる予定だ。

「チップ」は応援したいアカウントに対して、投げ銭を行える機能だ。オンライン決済サービスやビットコインを使って、相手に送金できる。プロフィール画面にお金のようなアイコンがあれば、それがチップだ。ここのところ、SNS全体がクリエイターに対して経済活動を行える仕組みを整えており、この機能もそのひとつである。

そして、「スーパーフォロー」もクリエイターエコノミーを助ける機能だ。クリエイターが有料のサブスクリプションに加入したユーザーに対して、ツイートやスペース、ニュースレターなどの加入者限定のコンテンツを配信することができる。現在、一部のアカウントがスーパーフォローを利用することができ、プロフィール画面に「スーパーフォロー」ボタンを見ることができる。

こうした流れのなかで、コミュニティが提供された。コミュニティはユーザー同士の結びつきを深め、新たな出会いも生む。コミュニティからスペースでのイベントが発足したり、スーパーフォローへの誘導になる可能性は十分にある。

Twitterは一方的にフォローすることができ、読みたくなくなればフォローを外せばいいという気軽なプラットフォームだ。最新ニュースを得たり、面白いツイートを拡散したりとツイート単位の交流も多い。そのため、コメントやいいねをしなければならないFacebookのような「SNS疲れ」もあまりない。

しかし2015年、「お気に入り」ボタンが「いいね」ボタンに変わり、ユーザーとの交流をサポートする方向性が見え始めた。そして、2021年から上記のようなユーザー同士の交流を増やす機能を提供し、クリエイターが収益を上げられるように舵を切っている。

これはTwitterがさらなる利益拡大を狙ってのことだ。2022年2月10日に発表された2021年10~12月期決算は、純利益が18%減、営業利益が34%減となっている。開発費や人件費の圧迫が理由だが、ここで立て直して巻き返しを図りたい思惑なのだろう。人が結びつくとプラットフォームの滞在時間が長くなり、広告収入が増える。クリエイターがユーザーを呼び込むようになれば、御の字だ。

Twitterの方向転換は、創業者のジャック・ドーシー氏が2021年11月にCEOを退任し、パラグ・アグラワル氏が後任となったことも理由のひとつかもしれない。いずれにしても、大手SNSとして人気を博し続けているTwitterがどう展開していくのか、今後がとても楽しみだ。

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ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー
鈴木 朋子

SNSが専門でtoB、toCともに取材し、最新トレンドを常に追っている。身近なITに関する解説記事も執筆しており、初心者がつまずきやすいポイントをやさしく解説することに定評がある。スマホ安全アドバイザーとして、安全なIT活用をサポートする記事執筆や講演も行う。近著は「親が知らない子どものスマホ」(日経BP)、「親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本」(技術評論社)。著書は監修を含め、20冊を越える。
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