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スマホのインカメラとアウトカメラで同時撮影?

TikTokからリリースした新アプリ「TikTok Now」とは

author: 鈴木 朋子date: 2022/11/08

2022年、TikTokは日本でのサービス開始から5周年を迎えた。2021年9月にグローバルでのMAU(月間アクティブユーザー数)が10億人を超え、日本では「TikTok売れ」も話題になるなど、その影響力はビジネス方面でも無視できないものとなっている。2022年も勢いは止まらず、ライブ配信機能「TikTok LIVE」でアーティストのライブ配信を盛んに行い、映画会社とコラボ企画を開催するなど、エンターテイメント方面でのイベントも増えている。そして、TikTokは2022年9月、新たなアプリをリリースした。「TikTok Now」だ。

TikTok Nowは、スマホのインカメラとアウトカメラで同時撮影した写真を共有するSNSだ。1日に1回、ランダムに送られてくる通知を開き、3分以内に撮影、投稿を行う。投稿すると、友達や世界のユーザーの投稿を見られるようになる。投稿するまでは、全ての投稿にモザイクがかかっている。

アプリで撮影した画像しか投稿できないため、画像にエフェクト加工をして色味を調整したり、美顔加工を施したりすることができない。今のこの瞬間を共有することを楽しむ機能なのだ。実際には3分を過ぎていても投稿できるのだが、何分遅れたかが投稿に表示される。「この人はリアルを共有していない」と烙印を押される格好だ。

TikTokアプリ内と別アプリで提供されている「TikTok Now」(画像はスタンドアロン版。出典:TikTok)

先行リリースされている「BeReal」と酷似

TikTok Nowの仕様を見ると、あるSNSアプリに似ていると気づく人もいるだろう。「欧米のZ世代にウケている、自分を飾らないSNS」 で紹介したフランス発のSNS「BeReal」とそっくりなのだ。アプリの画面デザインもよく似ていて、参考にしていないとは言えない作りになっている。

リアルを共有する「BeReal」も前後カメラで撮影する(筆者撮影)

BeRealのコンセプトは、その名の通り「リアルであれ!」だ。欧米を中心に、SNSでの「映え」よりもリアルが重要だと考える若者が増えている。SNSのいいねやフォロワー数を稼ぐことに疲れてしまっていた若者たちが、ネット上の自分よりも、この瞬間に起きているリアルの面白さに目覚めたのだ。

インカメラとアウトカメラで撮影する機能も注目されている。Instagramは2022年7月25日、リール動画のリミックス機能のひとつとして、前後のカメラで同時撮影できる「デュアル」をリリースした。そして、Snapchatも2022年8月29日、カメラ機能に「デュアルカメラ」を追加、4種類のレイアウトで自分と背景を一枚の画像に収められる。

Snapchatの「デュアルカメラ」は4つのレイアウトで撮影できる(出典:Snap)

インカメラとアウトカメラの撮影は、自分がそこにいたことの証明にもなる。美しい風景や豪華なレストランの写真を投稿しても、それは本当にその人自身の投稿かはわからない。しかし、インカメラとアウトカメラで撮影した写真なら、どこからか入手した画像ではないとわかる。自分にしか撮影できない、本当のリアルを撮影できるのだ。

TikTok Nowをリリースした狙い

TikTokはなぜ「BeReal」の二番煎じとも言える機能をリリースしたのだろうか。

SNSは他のSNSが新たな機能を提供すると、一斉にその機能をリリースする傾向がある。音声SNS「Clubhouse」が流行ったとき、Twitterは音声機能「スペース」を、Facebookは音声機能「Live Audio Rooms」をリリースした。Discordの「ステージチャンネル」もその流れだ。

SNSはユーザーが滞在してくれなければ収益を得られないので、少しでも多くのユーザーに長く滞在してもらいたい。そのためには、ほかのSNSで人気のある機能を積極的にリリースするのだ。TikTok Nowも、話題となっていた「BeReal」の機能をいち早く取り込んだ形になる。

そして、TikTok Nowをリリースすることで、TikTokはこれまでとは異なるユーザーの動作を獲得できる。

TikTokと他のSNSが異なる特徴のひとつに、ユーザーがフォローしている人の投稿でなく「おすすめ」を見る点がある。ユーザーがTikTokを起動すると、TikTokのAIがその人の好みに合った投稿を「おすすめ」に表示するため、ユーザーは流れてくるコンテンツを眺めているだけで、興味のある動画や人気の動画、これから興味を持てそうな動画などを見られる。フォローしている人の投稿を見ているだけでは飽きてしまうものだが、TikTokは常に新鮮だ。

その点において、TikTokの作りは非常に優れているのだが、一方で「フォローしなくてもいい」環境が生まれている。誰もフォローしていなくても、おすすめを眺めれば楽しめてしまう。すると、ユーザー同士の繋がりは希薄になり、こまめにチェックする必要はなく、空き時間に眺めるプラットフォームになってしまう。これでは、TikTokを使って活躍しようとするクリエイターの展開も狭まってしまう。

TikTok Nowは、TikTokアプリの「Now」ボタンからも投稿できる(出典:Snap)

そこで、TikTok Nowにより、ユーザー同士の繋がりを強固にするのだ。TikTok Nowは自分のリアルが出るため、全ユーザーに公開することを避けるユーザーがほとんどだろう。つまり、TikTok Nowを楽しむにはアカウントを「非公開」にして、親しい人とフォローし合うことになる。それならば、必ず1日1回以上、TikTokを活用する。スタンドアロンアプリでTikTok Nowを活用するにも、TikTokのアカウントが必要となるため、ユーザー数の拡大にも繋がる。

リリースから一か月以上経ったが、まだTikTok Nowを積極的に活用している人は少ない印象だ。そもそも気軽に投稿できない仕様であることや、TikTokのアカウントを交換し合っている人が少ないため、利用の増加には時間が掛かるだろう。一方のBeRealは、驚きの瞬間や面白いシーンをうまく撮影するなど、投稿に慣れてきている海外ユーザーの様子がうかがえる。すでに多くのユーザーを抱えているTikTokのTikTok Nowが今後どうなるのか、引き続き注目していきたい。

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ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー
鈴木 朋子

SNSが専門でtoB、toCともに取材し、最新トレンドを常に追っている。身近なITに関する解説記事も執筆しており、初心者がつまずきやすいポイントをやさしく解説することに定評がある。スマホ安全アドバイザーとして、安全なIT活用をサポートする記事執筆や講演も行う。近著は「親が知らない子どものスマホ」(日経BP)、「親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本」(技術評論社)。著書は監修を含め、20冊を越える。
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