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梶原由景が歩いて出会った美味しい店

青山で食べる本物の讃岐うどん。ひやあつとちくわ天、あとはいなり寿司があれば。

author: 梶原 由景date: 2021/11/14

20年以上前に頑固親父の店紹介みたいなテレビ番組を見ていたら、香川県のある町の広大な畑の真ん中にある掘建て小屋(失礼!)が出てきた。実はそこはうどん屋で、客は自分で畑からネギを刈ってきて刻んで使う。なんならお勘定も勝手にやる。もっと言うと、せいろからうどんを自分で取って湯掻いたり、そのままかけ出汁を掛けて食べたりする。

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どういう店だ!? どうしても気になって仕様がなかったので、出張で高松へ行った際に現地のスタッフに尋ねてみると「あ、だったらこんなのありますよ」と渡されたのは出たばかりの「恐るべきさぬきうどん」という一冊。「タウン情報かがわ」の連載「ゲリラうどん通ごっこ」をまとめたもので、のちに全国を狂乱のうどんブームに巻き込んだきっかけとなった名著である。もちろん第一巻には冒頭のうどん小屋「なかむら」も収録されている。しかしこの本、店の場所を示す地図が走り書きで、探す過程も味の内と言わんばかりの不親切極まりないものなのだ。今であれば店名を検索して、スマホをナビがわりに最短最速で辿り着くこともできる。しかし当時そんなものはないし、食べログもなかった。この本片手に掲載うどん店を訪ねる旅が始まった。

夏休みや冬休みなどまとまった休みがあれば香川に行ってうどんを食べる。車で適当に走っていても必ずうどん屋に出会う。入って食べてみるとちゃんと美味しい。ほんと香川はうどんのテーマパークだ。形態も様々。テーブルに着いて注文する、いわゆる一般店もあれば、製麺所で出来立てのうどんを食べさせてもらうスタイルもある。一般の食堂のようだけど、自分でうどんを注文して受け取り、天ぷらなどを取って会計するセルフ店はいまや全国区の業態。麺も様々。ゴリゴリに腰のあるうどんもあれば、優しいけど決して柔らかいだけではない伸びのあるうどんもある。100軒は行ったと思う。

夢中になった讃岐うどんの世界だが、この4、5年はちょっと足が遠のいていた。直近はコロナで当然行けるはずもなかった。うどん食べたいなぁ。東京にも美味しい讃岐うどんを食べさせる店はある。ただお昼時は行列必至だろうし、なんとなくわざわざ行くまでもないのかなぁと思っていたところ、青山に讃岐うどんの店ができていることを知った。「いわしや」、香川で修行した後兵庫で開業したそう。

僕は釜揚げは例外として、基本あたたかいうどんを食べない。茹で上げて、水でピシッと〆る。その状態がうどんの味を一番楽しめるし素性も確かめられる。でも出汁も味わいたい。なので初めて訪れた店では、麺は冷たいままで熱いかけ出汁をかける「ひやあつ」を頼む。これにちくわ天があれば言うことなし。

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「いわしや」でも当然まずは「ひやあつ」。うどんは適度にエッジが立ちながらシュッと伸びを感じる。表面はツルツルではなく、出汁をしっかり受け止める。硬すぎず、しかし最後に確かな腰がある。出汁もしっかりイリコが香ばしいし、昆布の旨味も嬉しい。美味い、美味すぎる。しかもこのタイプの麺、香川で味わったことがある。どこだったか……。ご主人の修行先が非常に気になる。

このレベルのうどんは香川でもそうはない。青山で食べる本物の讃岐うどん。あといなり寿司をメニューに加えてもらえれば、僕にとって完璧なうどん屋になるのだけど。

手打うどん いわしや 青山店
うどん屋

住所:〒107-0061 東京都港区北青山1-2-3 青山ビルヂング B1F
電話:03-6812-9822
営業時間:平日11:00~21:00、土曜11:00~17:00
※麺が無くなり次第終了
休:日曜、祝日

※新型コロナウイルス感染対策のため、営業時間は変更の場合がございます。

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クリエイティブディレクター
梶原 由景

LOWERCASE代表。元BEAMSクリエイティブディレクター。ソニーとのデザインホテル・プロジェクトを行うなど異業種コラボレーションの草分けとして知られる。またルイ・ヴィトンとKDDIのモバイルコンテンツを手掛けデジタル、デザインからアパレルまで幅広い業界にクライアントを持つ。藤原ヒロシ氏とコンテンツサイトRing of Colourを立ち上げ情報発信中。
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