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梶原由景が歩いて出会った美味しい店

カレーにはスパゲティ。ビジネス街、大手町で食べる大阪の味。

author: 梶原 由景date: 2021/10/30

ようやく緊急事態宣言が明けた。飲食店の営業時間はいまだ時間短縮とはいえ酒類の提供も始まり、会食のお誘いも多くなった。けど、やはりまだしばらくは様子見。気持ちが急には以前には戻れない部分もある。まだまだランチで外食を楽しもう。

コロナ前には毎月関西に行く仕事があり、その後全国に飛び火し大ブームとなったスパイスカレーも黎明期からずっと追いかけていた。大阪はもちろん、関西のカレー文化は深い。滞在中一食はカレーを食べる様にしていた。雨後の筍の様に現れるスパイスカレーの店々を訪ねるのも楽しいものだった。

いまや東京にも複数の店舗を展開する空堀通り商店街にある「旧ヤム邸」、和出汁の大阪松屋町「ツキノワ」、極辛キーマカレーの京都四条烏丸「スパイスチャンバー」、スパイスカレーの初期衝動を思い起こさせる京都四条大宮「ムジャラ」、驚くほどの完成度を見せながら一瞬にして姿を消したマガリカレー谷町四丁目「マタタビ」、最終的に好みの店を見つけたと歓喜した難波「バンバン」などなど。

これら新興のスパイスカレー勢だけではなく、例えば神戸には三宮の地下街に「サヴォイ」という老舗のカレースタンドがあったりする。一時期「あれ?」という感じになったが近年完全に盛り返した。シャバシャバカレーの最高峰。織田作之助が通った「自由軒」に関しては、わざわざここで語る必要もないだろう。また神田神保町のように学生いるところカレーあり。京都大学周辺のカレー文化も別の機会にご紹介したい。洋食文化のブ厚さが背景にあるのだろうけど、関西のカレーには東京にはない独特の進化・深化が見られる。研究対象として手応えが十分過ぎる。

参考記事:大阪のスパイスカレーを支える、縁の下の出汁カルチャー。

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スパイスカレーの新店を追いかけ続けた日々、ふとある老舗店へ久々に入った。「インデアンカレー」、大阪を代表するカレーの名店。カウンターのみ。最初に食券で買うシステム(閑散時は食事後の精算だったりする)。よく言われるが最初甘いけど、徐々に辛くなる独特のどろっとしたルー。そこに付け合わせのピクルスが寄り添う。辛さ軽減と卵の黄身を乗せるのも一興。カレー皿にご飯を盛り、カレーをかける一連の動作にも品というか大阪の粋、老舗の風格を感じる。

当時、東京の丸の内にもあったけど、行動範囲内ではないし何より昼時には大行列。なかなかありつく機会がない。だったら毎月のようにやってくる大阪で楽しんでしまおうという話だ。実際、拡大空洞化していくスパイスカレーに若干食傷気味になっていたのもある。庶民の舌を長年満足させ残った老舗の魅力に立ち帰り、虜になったのである。

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だいたい頼むのはスパゲティ。卵トッピングでピクルス大盛り。卵は途中で潰して麺にまぶす。うどんとかラーメンとか、カレー系の麺類は数あれど、ここのスパゲティほどライスに遜色ない存在感を示すものはない。カレーとは本来パスタソースだったのではないかとさえ思え、むしろ最近はライスでオーダーするのに勇気がいるほどだ。

近頃東京の大手町にも支店ができた。ここなら自宅から電車一本で行ける。早速訪れてみたが、徹頭徹尾インデアンカレーマナーに貫かれ、大阪淀屋橋の店舗で味わっている錯覚さえ起こす。さすがビジネスの中心地・大手町。イヤフォンをつけ、リモート会議の途中なのかと思うほど誰かと喋ってるビジネスマンもいたが、東京といえどインデアンカレーを食す際は大阪で言う「イキった」行動は慎むべきだろう。

インデアンカレー Otemachi One店
カレー屋

住所:〒100-0004 東京都千代田区大手町1-2-1 Otemachi One Avenue B1
電話:03-6259-1166
営業時間:11:00~21:00(LO 20:45)
休:日祝

※新型コロナウイルス感染対策のため、営業時間は変更の場合がございます。

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クリエイティブディレクター
梶原 由景

LOWERCASE代表。元BEAMSクリエイティブディレクター。ソニーとのデザインホテル・プロジェクトを行うなど異業種コラボレーションの草分けとして知られる。またルイ・ヴィトンとKDDIのモバイルコンテンツを手掛けデジタル、デザインからアパレルまで幅広い業界にクライアントを持つ。藤原ヒロシ氏とコンテンツサイトRing of Colourを立ち上げ情報発信中。
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