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梶原由景が歩いて出会った美味しい店

「酒井商会」は僕にとって通いたくなる理想の酒場。

author: 梶原 由景date: 2021/05/15

緊急事態宣言も明けた去年7月、恵比寿に「創和堂」がオープンした。だが、この店はある名店の2号店。その名店こそが僕にとって通いたくなる理想の酒場「酒井商会」だ。

恵比寿の「創和堂」。まず入り口が分からない。店名を冠した看板がない。相当に注意深く見ていないと絶対に見逃すであろう、ごく小さなロゴマークがドアの横にあるのみ。しかし既にこの外観がある種の威圧感とともに、中では何か楽しいことが起こっているに違いない雰囲気を醸し出している。

第一関門をクリアしたらウェイティングバー。さらに広い店内に進むと、カウンターは厨房をぐるり取り囲み、二十人は座れそうな勢い。それとは別に渋谷川を臨むテーブル席に個室もある。なかなかの大箱。世の中まだ皆が外食を楽しむ雰囲気ではなかったがソーシャルディスタンスも容易に確保でき、感染予防対策も徹底しているこの店、常に席が埋まっていた。まだまだ飲食店が苦戦を強いられていた時期だったが、当然予約困難店となった。

そしてその秋には店主・酒井さんとともに雑誌「ブルータス」の酒場特集の表紙を飾ることとなる。そう、「創和堂」は酒場、それも最近東京はじめ全国で増殖中のある系譜の最新店なのだ。それらは「なかむら一門」と呼ばれている。「並木橋なかむら」などで修行を積み独立した気鋭の料理人の店々。必ず話題にのぼりすぐ評判店となる。恐るべしなかむら一門。

さてこの「創和堂」、実はある店の2号店である。渋谷警察署の裏にある「酒井商会」がそれだ。一部メニューが共通していたりするけど、そもそも名前が違う様に趣向も使い勝手も若干異なる。「酒井商会」にしたって小さな雑居ビルの2階にあり、入口が分からないのは同じだけど。

<3周年記念品>
<レモンサワー>

カウンターに10人程度、4人がけのテーブルが2つ。「創和堂」よりは随分こじんまりとしている分落ち着く。ずっと「創和堂」を贔屓にしてたけど、酒井さんが最近「酒井商会」にも立たれていると聞き、久々に訪れてみた。うん、この感じ。やっぱ良いな。おしゃれな酒場、居酒屋は数多くある。どこもそこそこ美味いし、工夫を凝らした料理は楽しい。でもなんというか、もっと通いたい衝動に駆られることがあまりない。

<穴子サンド>

酒井さんが僕と同じ九州出身ということもあるのだろうか、僕の舌にビシッと迫り、ぐいっと胃袋を掴まれたみたいだ。メニューにメリハリがあって素晴らしいし、サービスも行き届いている。これまた予約を取り辛いのが唯一の難点だろうか。

<雲仙ハムカツ>
<いちじくマスカルポーネ>

九州の雲仙ハムを使ったハムカツは最も有名な一品だろう。「酒井商会」にあって「創和堂」にないもの。それがいちじくマスカルポーネ。その名の通り乾燥いちじくをマスカルポーネチーズで和え、それを自家製塩クッキーに乗せて食べる。デザートの様に思うかもしれないけど、立派な酒のアテ。意外にもビールが進んでたまらない。毎回必ずお代わりしてしまう。焼き穴子をパンに挟んだサンドウィッチも良い。

<土鍋ご飯>

そして最後の〆の土鍋ご飯はちょっと多めに頼んでおいて、わざと余らせて家人へのお土産にする。どれもこれも創作料理と言うには気取りがなく、居酒屋料理にしては工夫があり過ぎ、しかも味が清澄。なのでインパクト大なのに飽きが来ない。僕にとって理想の酒場に近い。さあ、また頑張って予約を取ろう。

  酒井商会

  和食割烹居酒屋

  • 住所:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-6-18 荻津ビル2階
  • 電話:070-4470-7621
  • 営業時間:平日16:00-23:00(22:00L.O)土 15:00-22:00(21:00L.O)
  • 休 日曜日
  • https://sakai-shokai.jp/
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クリエイティブディレクター
梶原 由景

LOWERCASE代表。元BEAMSクリエイティブディレクター。ソニーとのデザインホテル・プロジェクトを行うなど異業種コラボレーションの草分けとして知られる。またルイ・ヴィトンとKDDIのモバイルコンテンツを手掛けデジタル、デザインからアパレルまで幅広い業界にクライアントを持つ。藤原ヒロシ氏とコンテンツサイトRing of Colourを立ち上げ情報発信中。
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