クリエイティブディレクター梶原由景とインテリアスタイリスト窪川勝哉。ファッション界、インテリア界を代表する二人が、これまで人生の中で泊まってきたセンスのいいホテルを、お互いに報告し合う連載。記念すべき第一回目は梶原さんがニューヨーク出張で泊まったホテルたち。
●今回ガイドしたホテル
Wythe Hotel
Wythe Ave, Brooklyn, NY 11249,
https://www.wythehotel.com/
Ace Hotel New York
20W 29TH STREET
NEW YORK CITY, NY 10001
https://www.acehotel.com/newyork/
TWA Hotel
JFK Airport, Jamaica, NY 11430
https://www.twahotel.com
ホテルを知ることは
街を知ること、今を知ること
いつの頃からだろうInstagramのタイムラインに“#misstraveling”というハッシュタグが現れ始めた。我々が自由に空を飛び、海外の街々を訪れることができなくなって優に一年を超えた。
例えばニューヨークでは最新のライフスタイルを知ることができた。ポートランドやサンフランシスコでその萌芽があったとしても、花開くのは世界の都会たるニューヨークだ。ニューヨークで試されて初めてムーブメントとして成長するとも言えるのかも知れない。 何度も彼の地を訪れるうち、ホテルカルチャーというかホテルコミュニティというか、何かの動きがあると必ずそれを象徴するホテルが存在するということが分かって来た。例えばブルックリンにはWythe Hotel。「マーロウ&サンズ」など人気店を次々立ち上げた食の革命児アンドリュー・ターロウの手掛ける総合芸術とも言える。
ミッドタウンにあるAce HotelのロビーでノートブックPCを広げる人々の姿を何らかのメディアで目にしたことがあるはずだ。ホテル王イアン・シュレーガーのPublic Hotelがバワリーに開業したその翌週に泊まったことがあるが、金曜日のバーラウンジは大盛況。新しいホテルは注目の的だ。ホテルは他所から来たものが泊まる場所のみならず、地元の人間が楽しむ場所でもある。だからホテルを知ることはその街を知ることであり、今を知ることなのだ。
さて、僕が最後に海外に行ったのはいつだったかというと2019年の12月。翌年の6月にリリースを予定していた”ENGINEERED GARMENTS(以下EG)”とのダブルネームによるシャツのサンプルができたということで二泊四日のNY弾丸出張。”EG”のデザイナー鈴木大器さんは2008年にCFDA(アメリカファッションデザイナー協議会)ベストニューメンズウェアデザイナー賞を受賞。日本人初のCFDA正式メンバーでもある。つまりアメリカで最も成功した日本人デザイナーといえば大器さん、と言って間違いない存在。とてもじゃないが僕などが一緒にもの作りをするなど普通は考えられない。
ただここ数年、大器さんが日本に戻って来られた時は僕がお勧めする美味しいお店にご案内し、お返しにとNYではほぼ毎晩食事に付き合ってくれる(これ自体が信じられないくらいありがたいことなのだけど!)というご飯で繋がったお付き合いをさせていただいていた。
もそも今回の取り組みの始まりも、NYの居酒屋で僕が別注商品を作るときのルール「自分が欲しいものを、それに長じた自分の好きな作り手に作ってもらう」という話をしていた時に大器さんのアシスタント健太くんが「“EG”とそれやっても面白いですね」と恐れ多いことを言い出し、何故か大器さんが「やってみよう」と快諾したことからだった。まじか! しかし“EG”、相手にとって不足なし。思い切って胸をお借りすることにした。
僕はデザイナーじゃ無いので、あくまでも着る立場で、そもそも毎日のように来ている“EG”のシャツの好きな要素をリミックスしてみようと提案。その商品はすでにリリースされているので機会あればご覧いただきたい。今年は秋にさらにアップデートしたものを出す予定だ。
JFK国際空港に併設された
TWAホテルについては窪川さんに
多分その出来事は2019年6月にNYに行った時だったような。そういえばこの時に話題だったのがJFK国際空港にできたばかりのホテル「TWAホテル」。エーロ・サーリネンの手掛けたトランスワールド航空のTWAフライトセンター跡をリノベーションして出来たデザインホテルだ。
TWAと言えば制服はラルフ・ローレンが手掛けていたり、感度の高さでは異論は出ないエアライン。ターミナルは今見ても美しく、まるで「メン・イン・ブラック」の本拠地のようにも見える(笑)。デザインホテルと呼ぶのが遠慮されるほどデザインされたホテル。しかし早朝便に乗る予定もないので、JFKで一泊するという選択肢はなく、オープンまもなく訪れたものの実際に客室には入れていない(外から見ると「東横イン」ライクなコンパクトな感じだったけど。笑)。
敷地内にはネクストブルーボトルの呼び声も高い「インテリジェンシア・コーヒー」のフードカーが鎮座し抜かりがない。ブックスタンドも整然とおしゃれ。ただホテルのオリジナルグッズが全くないのが残念だった。記念にカウンターにあったキーカードをさりげなく失敬したのだけど(笑)。
さて、この「TWAホテル」、インテリアスタイリストの窪川勝哉さんは実際にお泊まりになったことがあるよう。では無理矢理バトンをお渡ししますね(笑)。
旅は得ることが多すぎる。We Miss Traveling.