バッグの中身には個性が出るもの。必要なものだけで揃えたい人、お気に入りのもので満たしたい人、思い出を常に傍に置いておきたい人。アイテムも想いも千差万別、だからこそバッグの中にはロマンがある。そこで、今をときめくあの人のバッグの中身をのぞき見して、その人の内面や想いに迫ろうというのがこの連載。
第4回に登場するのは、NY在住のモデル・Yuki Beniyaさん。一目で何かわかるカラフルなアイテムに、随所に溢れる日本っぽさ。すべてのアイテムにストーリーが宿る親しみのあるバッグの中身たちから、海外生活にチューニングを合わせたバッグの中身の工夫までチェック。
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Yuki Beniya
モデルとして2017年からロンドン、その後東京を拠点に活動。現在はNYをベースに活動中。グラフィティステッカーの製作や、独学で学んだニット制作にも力を入れている。
Instagram:
@yukibeniya
/
@yukibeniknit
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「バッグの中身はカラフルなものが多いです。理由は、バッグの中を見たときにパッと一目で『これはこれ』って、物を識別できるから。自分で身に着ける服は淡いパステルカラーが多いので、身の回りの小物はできるだけカラフルで形状がかわいいものを選ぶようにしています」
EARTH IS HARDのトートバッグ
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「以前私が作った『EARTH IS HARD』のステッカーをもとに、トートバッグを作ってみようという軽い気持ちから生まれたバッグです。『EARTH IS HARD』のデザインは、去年あまりうれしくない出来事が起きたとき、たまたま聴いたカミラ・カベロの楽曲『psychofreak (feat. WILLOW)』の『Maybe I'm an alien, Earth is hard(私は宇宙人なのかもしれない、地球は難しい)』というフレーズにインスパイアされて作ったもの。NYに来る前に作って、自分でもよく使っています。
バッグにつけているストラップは友だちが作ったもので、サンリオキャラクターやトトロのマスコットは、NYに移住するときに『何か日本らしいものを思い出に持っていきたい』と思って買いました」
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「バッグを選ぶときは、フタさえ閉まればとりあえずオッケー(笑)。海外ではスリの対策もしておきたいので、欠かせないポイントです。あとは、黒色以外であること。モデルという仕事をしているので一応黒いパンツとかは一つくらいは持っているんですけど、黒色は自分にあまり似合わないと思うのと、何よりテンションが上がらない。なので、なるべくカラフルなもので揃えたい。
トートと合わせて最近よく使っているHeaven by Marc Jacobsのバッグもカーキ、Montbellのバッグもイエローで、色がないと逆に落ち着かないですね」
COMME des GARÇONSのお財布
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「NYに来る前、走って伊勢丹に買いに行ったお財布です(笑)。もともとカードケースと小銭入れを分けて持ち歩いていたのですが、NYではほとんどの場所でApple Payで支払いができるのと、スリ対策としてコンパクトなお財布にしたくて新調することに。写真だと分かりづらいけど反射するデザインになっていて、動かすとレッド、イエローと色が変わるところがかわいくてお気に入りです」
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「服飾の学校を卒業したあと、ロンドンに行くかNYに行くか悩んでいました。でも私は背が低いのでNYでは厳しいかも、ということでロンドンに行くことを決意。コロナ禍で一旦日本に戻ったのですが、『モデルとして活動していくうえで一番後悔していることは?』と考えたときに、やっぱりNYに行かなかったことだなと思って、2024年4月に移住しました」
お気に入りのステッカーでアレンジしたスマホケース
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「シンプルなスマホケースを、ステッカーやシールでアレンジしています。前までは“デコ電”みたいにラインストーンでデコレーションしたケースを使っていたのですが、使い勝手が悪かったのでステッカーに変えました(笑)。
自分で作った『おてもと』ステッカーはお気に入りで、次はキーホルダーにしたいなと思っています」
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「『EARTH IS HARD』と名前をつけたステッカーやトートバッグの制作も、友人たちを中心にオーダーメイドで承っているニット制作も、どれもブランド化はしていません。いまは気分が乗ったときや誰かの誕生日プレゼントに作ったりしています。サイドジョブとしてブランドを立ち上げる方法もありますが、私はそもそも『これ以上この世界に新しい服は必要なのか?』と疑問に思っていて。
それにファッションって環境に悪影響を与えがちで、糸を染めるときにも大量の水を使うんですよね。そうまでして新しい服を生み出す必要があるのか、いつも自分の中に『ハテナ』があります。なので、自分で買うものも着るものもヴィンテージの服ばかり。
自分で作るものも工場から出る余剰の糸で作ることができれば良いですが、今はそのコネクションを持っていないので、どうしても新しいものを買って作る、という選択肢になってしまいます。なので、ブランドとしてたくさん生産するのではなく、いまは小規模でやっていけたらと思って、この形でものづくりを続けています」
「AirPods」&モバイルバッテリー
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「父からもらった『AirPods』で、外出するときやジムではずっと音楽を聴いています。スマホなしでは生活できない世の中なので、モバイルバッテリーもマスト。『iPhone」も『AirPods』も必需品という私は、Appleに完全に侵略されてますね(笑)」
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「NYに来てからは、友人でもあるkZmの曲をよく聴くように。普段英語ばかり聞いているので、日本語が恋しくなって、最近は日本語の曲を聴くことが増えました。ジムではなるべく歌詞が入っていない曲を聴くようにしていて、今はJamie xxばかりリピート中です」
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「『バッグの中身を盗まれない状態』が、私にとってベストな状態(笑)。なので、この大きなトトロのポーチに、バッグの中身のほぼ全てのアイテムを入れて持ち歩いています」
POTETEのヘアクリップ&マイスウィートピアノのシュシュ
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「このヘアクリップはPOTETEのもので、昔POTETEの方からいただいたもの。12星座クリップで、自分が山羊座なので山羊座のクリップをいただきました。外出先でもよく使うので、バッグの持ち手につけて持ち歩くことも。
シュシュは先月帰国したときにキデイランドで購入したもの。そのときいろんなキャラクターショップを回って合計1万円ぐらい爆買いしました。お会計のとき、お店の人に『パスポートでタックスフリーにしますか?』って聞かれたので、何か勘違いされたかも(笑)」
持ち歩くコスメたち
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(左から)
CHANEL ROUGE ALLURE INK 206 METALLIC COPPER
DIOR LIP GLOW OIL 015 CHERRY
Caudalie Vinotherapist Lip Conditioner
「持ち歩くコスメはリップのみで、その日使ったものをそのままポーチへ。DIORのリップオイルはリピートしていてこれで2本目で、うるうるさせたいときにぴったりのアイテムです。ブランドにこだわっているわけではなくて、CHANELのリップグロスは大好きな写真家・荒木経惟さんの奥さん(故・荒木陽子さん)が使っていたという理由から選んだもの。
コーダリーのリップコンディショナーも、バルセロナに行ったときに手持ちにリップクリームがなくて、その場で見つけた一番潤いそうなものを買って、そのまま使っています」
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「自分でするメイクは、5年前から日焼け止めとリップのみ。自分に必要ないなって思って、パウダーもアイシャドウも持っていません。あと、メイクをしていると眠たいときに目をこすったり顔を触ったりできないので、それが嫌だったのもあります(笑)。その日の気分で使い分けられるよう、いろんなカラーのリップを持っています」
Heckelのポーチ&Aesopの香水
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「好きな色の一つであるライラックカラーのポーチには、香水と常備薬を入れています。香水のボトルは、ロンドンのパフュームブランド・Perfumer Hのものなのですが、中にはAesopのHwylが入っています。Aesopで働いていたことがある友だちがずっとこの香水をつけていて、真似して同じものにしました」
KANSAI YAMAMOTOのサングラスケース&Le Specsのサングラス
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「日差しが目に刺さるのが苦手で持ち歩いているものの、結局使わないことも多いLe Specsのサングラス。とりあえず持っておこうと思って、バッグに入れるようにしています。
ケースはKANSAI YAMAMOTOで、伊勢丹のポップアップストアに行ったときに購入。その時たまたまご本人がいらっしゃって、スタッフの人に後押しされて写真を撮ってもらいました。めっちゃ良い思い出です」
HydraPakの水筒&母お手製のティッシュケース&トトロのハンカチ
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「NYに来てからは、街で水を買うと高いので、どこへ遊びに行くにも水筒に水を入れて持ち歩くようになりました。この水筒はAmazonで買ったのですが、柔らかい素材で飲み終わったら丸めてコンパクトにできるのが良いです。ティッシュケースは母が作ったもの。ハンカチは母にプレゼントしたものなのですが、盗んで持ってきました(笑)」
書籍(高野秀行『巨流アマゾンを遡れ」)&ブックカバー
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「TV 番組『クレイジージャーニー』にも出演している高野秀行さんの書かれる本が好きで、集めて読んでいます。今読んでいるのは、『巨流アマゾンを遡れ』。アマゾンを探検する話で、すごく面白いです。ブックカバーは、コロナ禍の緊急事態宣言中に暇すぎて、パッチワークを始めたときに作ったものです」
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「もともと本を読むタイプではないのですが、たまたま古本屋で見つけた高野さんが書いた『移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活』がきっかけで、高野さんの本を集め始めました。この本は、日本に住んでいる外国人の方へインタビューをしている内容なのですが、それがとても面白くて。
高野さんの本はヤバくて、ゲテモノを食べたり、日常で知る機会がないようなものが書かれていたりと、びっくりするような内容ばかり。フィクションの物語よりも刺激的で、現実逃避できるんですよね」
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「私には自分のスタイルがあるので、トレンドに左右されることはないです。好きなものは高校生の頃から変わっていなくて、いまだに高校生の頃に買ったHYSTERIC GLAMOURのTシャツを着ることも。90’sが好きなので、その時代の『BRUTUS』や『Olive』といった雑誌や、写真家の荒木経惟さんや篠山紀信さんの写真集からインスピレーションを受けて、ヴィンテージアイテムを日々集めています。
私の持ち物には一つひとつ“持っている理由”があります。例えば母から勝手にもらったティッシュケースやハンカチは、最近家族が亡くなったことで、何か家族のものをNYに持って行きたいと思ったことが理由だし、毎日に欠かせない『AirPods』は父がくれたものだから。そういうストーリーがあるものを手にしていたいし、 “このブランドが好きだから”ではなく、私にとって使いやすいものや親しみのあるものを選んでいたいです」