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どうせ買うならこれがいい vol.3

「残糸・残布」から、長く愛される「いい物」を作り出すファッションブランド『RYE TENDER』

author: 生駒 奨date: 2024/06/06

たくさんのものが溢れる現代、「おしゃれ」「便利」はもはや当たり前。インテリア、ファッションアイテム、雑貨……どれもせっかく買うならエシカルなものが良いと考えている人も多いのでは。そんなあなたに向けて、本連載では「どうせ買うならこれがいい!」と思えるようなプロダクトやサービスを紹介する。

今回ピックアップするのは2020年に生まれたファッションブランドRYE TENDER(ライテンダー)。アパレル工場で必ず発生し、本来は破棄されてしまう「残糸・残布」に新たな命を吹き込むアップサイクルプロジェクトだ。

アイテムを実際に手に取ってみると、トレンドと普遍性が同居するデザインや素材そのものを活かした着心地の良さに惹かれる。そんなRYE TENDERのプロダクトには、どんな想いが込められているのか? 代表の小池勇太さんに話を聞いた。

RYE TENDER

生産過程で廃棄されるはずだった残糸・残布といった「余り原料」に命を吹き込み、衣服として生まれ変わらせるプロジェクト。 デザインに合わせて素材を選ぶのではなく、余り原料の素材が持つ本来の魅力を引き出すデザインを選定し、世の中に届けている。

WEB:https://ryetender.com/
Instagram: @rye_tender

「残り物」を使っていても、「新しい価値」を生み出す。

RYE TENDERの始まりは2020年の秋冬コレクション。小池さんはそれまでアパレルの仕事に携わるなかで、実際に洋服が作られる工場と密にやり取りをする立場にいた。その過程で、生産現場の問題点を知ることになったという。

「アパレルの世界では、よく『大量の服が売れ残り、焼却処分されている』といったことが問題提起されますが、それと同時に、製品になる過程で『用途を失った布や糸』も大量に発生してしまっています」

糸の質や量を確認して作るアイテムを決める

「私はもともと『ブランドを作りたい。自分が作ったものが受け入れられるか勝負してみたい』と考えていました。新しくブランドを始める上で、捨てられてしまう原料を活用することが一つの価値になりうると考えました」

そんなRYE TENDERのブランド名の由来は英語で「残り物」を表す「left over」を逆にした「right under」からのもじり。残り物を使用しつつも、新しい価値を生み出すという意味を込めているという。

ターゲットはあえて絞らない。ブランドとしてあくまでもユーザーファーストを目指す

最初のシーズンはセーターやカーディガンといったニット製品からスタートしたRYE TENDERだが、今ではTシャツやショーツなどもラインアップされている。ブランドとしての幅が広がった背景には、パートナーである工場からの信頼が増したことがあるという。

「シーズンを重ねるうちに業界の中でも話題になっていって、取引をしてくれる工場の数もどんどん増えていきました。その中で、それまで取引がなかった工場さんから『うちでこんな糸が余っているんだけど、どう?』といったご相談をいただくようになって。そこからデザインのアイディアもどんどん広がっていきました。

同時に、協力してくださる工場さんに無駄な負担をかけないことも意識しています。たとえば新規発注する際には、ロット数に注意して、工場さんが損をすることがないように。残糸・残布を使うだけではなく、全ての生産過程に負担をかけず、最終的に『いい物』をユーザーに届けることを目指しています」

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「SMITH SHORTS」(1万6500円)

ブランドのもうひとつの特徴が、どんな人でも着られるサイジングだ。もともとユニセックスで「1」「2」のサイズを用意していたが、一部のアイテムでは近年はさらにタイトな「0」サイズも展開している。

「RYE TENDERは老若男女、ファッションに興味のある方も、ない方も、心地よく着ていただけるサイジン グを目指しています。『0』 サイズを増やしたことで、小柄な方にもフィットするアイテムを提供できるようになりまし た。

近年のオーバーサイズトレンドも落ち着き、『もう少しフィット感がほしい』と考える方が増えてくるかな、という感覚がありますので、そうした方には『0』サイズがおすすめです」

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主にウィメンズの「0」、ユニセックスの「1」「2」のサイズを展開

その想いの通り、RYE TENDERは年齢・性別を問わず幅広いファンに受け入れられているという。そこには小池さんの「ずっと着られるブランドでありたい」という願いがある。

「ありがたいことに、ファッション業界内のプロからも『いいアイテムだね』と言って買ってもらえますし、ファッションに詳しくない方からも『気に入りました』と手に取ってもらえています。デザイン面で敢えて『余白』を残して、実際に着てもらうことで完成するように制作していることが伝わっているのかな、という気がします。

一つひとつの素材と向き合って『この布はどういうアイテムになるべきか?』と逆算して製品化していることも要因のひとつかなと思います。これからもターゲットを絞ってデザインするのではなく、『いい物』を作って届けていくことに注力していきたいです」

気になるこの夏一推しアイテムは? 定番アイテムに隠された匠の技法

着る人によって表情を変えるRYE TENDERのアイテム。筆者が気になったのが、この夏にヘビーローテーションしたいニットTシャツだ。

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「CENTRE TEE」(9900円)

「ずっと定番で展開しているTシャツです。メインカラーはシーズンに合わせて染め分け、ストライプや切り替えの差し色で残糸を活用しているので、毎シーズン少しずつ表情が変わります。

通常のTシャツは『カットソー』という技法で、一度糸から生地にしたものを裁断してミシンで縫う、という作り方をするのですが、これは糸から編んだニット素材。ミシン目がないので着心地が最高で、ストレスなくさらりと着られます。

このTシャツに使用されているニット素材は、細かく目が詰まったもの。見た目的にはカットソーとそんなに変わらないのですが、作る際の手間はすごくかかっています。そして、仕上がりはやはりニットならではの上品さ、肌触りの良さがあります。

着脱や洗濯で負荷がかかりやすい箇所にストレッチ糸を入れたり編み方を細かく変化させたりすることで、形状が維持されるように仕上げています。だから、ガシガシ着ても大丈夫。お洗濯をするとまた質感が変わるので、経年変化も楽しんでほしいです」

夏に毎日着ても飽きない一着。色違いやサイズ違いで複数買いしたくなるアイテムだ。

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豊富なカラー展開の「CENTRE TEE」

手に取るとすぐにわかる。あなたの街にも届く『RYE TENDER』のアイテム

これまでRYE TENDERのアイテムは、オフィシャルのECサイトでの販売が主流。都内を中心に行われるポップアップストアでの販売時にしか、実際に手に取る機会はなかった。しかし、手に取った人はその良さをすぐに実感し、ファンになる確率が高かったという。

「みなさん、『このアイテムも残糸からできているの? 信じられない』と、品質の良さやそもそものデザインの良さに驚いてくれます。やっぱり、多くの人に実際に手に取って良さを感じてもらいたい」

「LINDEN TANK TOP」(1万3200円)

今後は、その思いを反映して全国のセレクトショップでの卸販売に力を入れていくという。

「昨年ショップさん向けに展示会を開催して、今年から店頭にアイテムが並び始めています。北海道や北陸、四国など地方のショップにも取り扱ってもらう予定ですよ。各ショップさんがどんなふうにRYE TENDERを取り扱ってくれるのか、楽しみにしています」

多くの人の手元に行き渡っていくRYE TENDERのアイテムたち。広まれば広まるほど、ファッション業界にも、私たちの生活にも、好循環を生み出していくはずだ。ぜひ、手に取って確かめてみてほしい。

Text:生駒 奨
Photo:RYE TENDER提供
Edit:白鳥 菜都

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編集者・ライター
生駒 奨

ファッション、アート、映画、文芸、スポーツなどさまざまな分野で編集者・ライターとして活動。企業のオウンドメディアでのコンテンツディレクションにも携わる。好きなものはビーグル犬、洋服、森博嗣の小説、ホラー映画。
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