炊飯器の中でも、最高級炊飯器は各メーカーが力を入れていることもあり、炊き方の方向性は異なるものの、炊きたては感激するほど美味しい。ハズレはないものの、もちもち、しゃっきりなどの食感の違いがあり、甘さや香りなどはバランスが変わる。今回、炊きたての他にも24時間冷凍し、電子レンジで解凍したごはんや冷めたごはん(おにぎり)などで評価を行った。それぞれの個性はあるものの、冷凍しても冷めても美味しく、バランスがよかったのは1位だった象印マホービンの「炎舞炊き NW-FB」という結果になった。
味だけでなく、操作性やお手入れのしやすさにも注目してほしい。最高級モデルは機能が豊富なので、操作が複雑になりやすいというデメリットもある。お米のかたさまなどを頻繁に変えたい方は、実機をさわってみて使いやすいものを選んでほしい。また、内釜の重さも大事なポイントだ。内釜でお米をといだり、炊飯後に洗ったり、持ち歩くことが多いので、ごはんを炊く回数が多い方にとっては軽い方が便利だ。
何を重視するかで、選び方も変わる。今回の比較レビューをぜひ購入の際の参考にしてほしい。
1位 象印マホービン「炎舞炊き NW-FB」
1位は全項目で高得点だった象印マホービン「炎舞炊き NW-FB」だ。炊きたてが艶やかでもちもち、甘さも強く、一口目から「美味しい」と思わずつぶやいてしまったほど。冷めたごはんも、いったん冷凍して再加熱したごはんも、満足度が高かった。スーパーで購入した安いお米やちょっと古くなったお米も、炊飯器のほうで調整しながら圧力をかけ、お米が持っているポテンシャル以上の炊き上がりにしてくれる。
銘柄に合わせた炊き方を、あえてしていないのも潔い。お米はできあがりの年や保存方法によっても状態が変わるので、自分の好みに合わせて調整する方が合理的、という考え方もよくわかる。
使い勝手で感心したのは、ホーム画面にお気に入りの炊飯メニューを登録できること。お弁当には少しやわらかめ、カレーの日はかため、といったよく使うパターンを登録しておけば、すぐにその設定を呼び出せるのだ。シンプルだが、ユーザーのことを考えている。文句なしの1位という結果だった。
第2位:三菱電機 「本炭釜 紬 NJ-BW10F」
今回、試した中で唯一の「圧力機能非搭載」炊飯器だ。内釜素材には、炊飯時に優れた発熱性を発揮する炭を使い、内釜全体が一気に発熱するのでお米の芯まで熱を伝えられる。また、釜底が凸形状になった「泡昇り釜底」が、中央部に気泡をより多く発生させて激しい熱対流を起こすため、圧力機能を使わなくても大火力を実現。しゃっきりとしており、もちっと甘く炊き上がる。圧力をかけすぎると潰れたような食感になるが、弾力があり、口の中でほぐれるような食感は印象にも残った。圧力をかけない、独自の粒立ちを楽しみたい方におすすめの炊飯器だ。冷めたごはんも美味しい。
内釜は炭なので少々重いものの、目盛りは圧倒的に見やすい。軽量カップの使いやすさ、操作性などもよく考えられていた。音声でのお知らせもとても親切で、ユニバーサルデザインに基づいて製品開発をしている姿勢を感じ取ることができた。
第3位:タイガー魔法瓶「土鍋ご泡火炊き JRX-T100」
土鍋を使っていることもあって、大火力を実現している。お米がもつ香りを存分に楽しめる。粘りと甘さも強く感じることができ、弾力もすばらしかった。土鍋という難しい素材を採用しているものの、上手くコントロールしている炊飯器だ。次回は炊き込みご飯などを作ってみたい。
気になったのは通常のモードで炊いてもうっすらとおこげができること。別に「おこげ」モードがあるので、通常の白米モードでは、おこげを抑えてほしいところ。特におにぎりやお弁当など、冷めたごはんにおこげが混じると、少しごわっとした固さを感じることがあった。少量で炊いても美味しく炊くことができる。別途土鍋のフタが付属しており、無駄な空間ができないようにしっかり対策してあるからだ。
土鍋のよさがある一方で、やはり内釜の重さは気になった。土鍋の素材なので、ごはんがこびりつくと、洗ったつもりでもうっすら残ることがある。ただ、他のお手入れはとても簡単だ。内蓋はマグネット式で付け外しがしやすく、短時間でお手入れも終わる。
第4位:パナソニック「ビストロ Vシリーズ」
前モデルまでのフラッグシップモデルはスチームが特徴で、少し水っぽさがあったが、フルモデルチェンジが行われた新モデル「ビストロ Vシリーズ」は、粒立ちがよくなり、しゃっきりした食感に改善されている。これまで特徴的だった少しやわらかめの、みずみずしいごはんが好きだった方からすると、少しかために感じるかもしれない。新モデルのほうが流行りの粒立ちを強調した炊き加減で、個人的にも美味しく感じた。
目を引いたのは、デザインだ。とてもスタイリッシュで高級感がある。価格は他社と比較すると少し安めで10万円を切っているが、そうは見えない。文字なども本体デザインに合わせて少し小さめにしており、インテリアに溶け込むデザインとなっている。その影響で文字が小さくて少々見にくかったり、コードがリール式ではなくなかったり、少し使いにくさを感じることもあった。
終了時に電気代のめやすが表示されるなど、他社にない機能が便利だった。
第4位:東芝ライフスタイル「炎匠炊き RC-10ZWV」の特徴
他社と違う点で一番目立つところは、液晶タッチパネルを採用していること。とにかく明るいので、特に薄暗い場所でもはっきり見える。棚の中段などに入れても操作しやすいところは助かった。
炊飯時間は通常で約43分と短かった。みずみずしく、やわらかめで、クセがない。どんなおかずにも合うやさしい味なので、今流行のもちもち・しゃっきりが苦手な方におすすめだ。何より、炊飯時間が短く、短時間でつややかに炊き上げてくれるのは嬉しい。冷めたごはん(おにぎり)は粒立ちも残しつつ、甘く、つややかでとても美味しかった。
内蓋は凹凸が少なく、洗いやすいが、そのぶん蒸気口を外して洗う必要があるため、洗う部品点数は多い。底が丸い形状の内釜は、水が対流しやすいのでとぎやすかった。比較的軽い内釜で日常的にごはんを食べる方にとっては、使いやすい炊飯器と言える。
第4位 日立グローバルライフソリューションズ「ふっくら御膳 RZ-W100GM」
しっかりした粒立ちで、ベタつきがなく、少しかためのごはんがお好みの方にぴったりだ。おにぎりは粒立ちのよさが際立つ。
今回試した中では唯一の蒸気カットモデル。炊飯器は、炊飯中に勢いよく蒸気が出るので、場所によっては家具が傷むこともあるが、同モデルなら安心。置き場所を選ばず、小さな子どもがいても安心して使える、というのは他社にはない魅力だ。内釜も軽いので、ごはんをといだり、内釜を持ち運んだりするのがラクで、使い勝手もよかった。
少々気になった点は、内蓋から水が落ちてくること。内蓋は2枚重ね合わせている構造で、中に水が溜まりやすく、その水が開けるたびに落ちる。また、フタを閉めるときがかたく、毎回グッと押さなければならないので、もう少し軽くしてほしい。内釜が軽いところは高評価だったが、本体まわりで少し点数を落としてしまった。
―――以上のように、今回の比較レビューでは、象印マホービン「炎舞炊き NW-FB」が1位という結果だった。ごはんの美味しさはもちろん、毎日使うことを考えており、使い勝手の点でもシンプルで使いやすい。高価ではあるが、毎日食べるものと思えばすぐにモトはとれそう。自信をもっておすすめできる製品だ。
製品貸与:象印マホービン、三菱電機、タイガー魔法瓶、パナソニック、東芝ライフスタイル、日立グローバルライフソリューションズ