定番の沖縄旅行には飽きた、少しディープな旅をしてみたい。そんな人にぜひおすすめしたい次の旅先は、沖縄県の「名護市」。ひょんなことから友人夫婦のウエディングをプロデュースすることになったトラベルプロデューサー堀 真菜実は、結婚式でもハネムーンでもない、「旅するウエディング」を企画した。「沖縄は好きだけど、ビーチだけじゃ物足りない」そんな2人へ自信を持って勧めた場所が、山と海に囲まれる街、名護だった。2泊3日の旅するウエディングとともに、名護の知られざる魅力をご紹介したい。
「旅するウエディング」って?
新郎夫婦がウエディングドレスのまま各地を旅をして土地の魅力を味わい、自然な笑顔をカメラに残す。堅苦しい儀式はしないけれど、友人に囲まれてささやかな宴を挙げ、人生の節目とゆっくり向き合う。
そんな、ふたりにとってやりたいことだけを詰め込んだプロジェクト。
旅のメンバーは、主役の2人に、友人カメラマン、プロデューサー堀とその家族の、計7名。そこへ地元を知り尽くした頼れる名護のサポーターが加わり、旅しながら祝う3日間がスタートした。
地域の遊び場、「名護城公園(なんぐすくこうえん)」へ。
最初のスポットは、中心街からすぐの広大な遊び場「名護城公園」。地元の方は、いわゆる”観光地”ではない場所の選定に驚いていたが、私たちにとっては、まさに名護を感じられるスポットだった。
展望台から町と海を見渡し、亜熱帯の木々の下を散歩する。土地の空気を感じられる、旅のよいスタートを切った。
展望エリアからの景色は一見の価値あり。アイスコーヒーを片手に散歩したり、同行した子どもたちが遊ぶ傍らで撮影したりと、まさに「旅しながら祝う」コンセプトにフィット!
宿泊は、快適な一軒宿「ヤンバルニア」。
宿泊は、新郎新婦たっての希望でみんな一緒に貸別荘へ。ここ「ヤンバルニア」は、おしゃれな内装、ブランド家電が並ぶキッチンに、広い庭、BBQができるテラスと、ファミリーやグループでのステイに一推しの宿だ。
寝室はヘアメイクやお色直しもできる仕様で、記念日には最適。
観光地から少し離れた海辺の静かなエリアにあり、玄関を出ればフクギ並木、徒歩2分で絶景のビーチと、抜群の立地だった。
メニューなし、名物女将あり。ディープな居酒屋でお祝い。
初日の宴は、どんな相手とでも一瞬で距離を縮める、名物女将の「みちるさん」が切り盛りする「蓬莱(ほうらい)で。みちるさんが作る琉球料理は、「ヤギ刺し」「苦菜(にがな)のおひたし」など、土地ならではのもの。
店にはメニューが存在せず、旬の食材を使った料理を、お客さんの予算や用途に合わせて提供するスタイルだ。
結婚を記念して、2種の泡盛をふたりの手でブレンドする「オリジナル泡盛作り」にも挑戦。沖縄には、「仕次ぎ(しつぎ)」といって、異なる泡盛をブレンドして寝かせることで味に深みを出す手法がある。そこから着想を得て作ってもらった名護らしい体験だ。
さらに、泡盛は3年以上寝かせるとさらに芳醇で美味しい「古酒」になるという概念があるそうで、相談の結果、古酒になるまでの3年間、蓬莱でボトルをキープしてもらうことに!3年後に名護に戻ってくる理由ができた。
2人だけのMY泡盛が完成!・・・しかしお酒好きの新郎を前に、無常にも封をされる瓶。
まるで遺跡?じつは市役所!
名護の町なかには、まるで東南アジアの遺跡のような建物がある。その正体はなんと、現役の名護市役所。珍しいデザインは、沖縄の強い日差しと海風に耐えうるように緻密に設計されたもので、建築物としても名が高いそうだ。
新郎新婦が「ここは絶対に行ってみたい」と言っていた、名護を知るには外せない場所だ。
庁舎自体は誰でも見学が可能。撮影には市役所の許可が必要なので注意。
亜熱帯のジャングルで、名護産のコーヒーをいただく贅沢時間
沖縄は沖縄でも、山や川を楽しめるのが名護。ジャングルを流れる清流の脇を登っていき、美しい滝壺でひとやすみ。貴重な名護産のコーヒー豆をその場で挽いてもらい、淹れたてのコーヒーで乾杯。水の落ちる音と木々の香りを全身で感じながら、なんとも贅沢な時間を過ごした。
「ジャングルで珈琲」体験は、以前に本誌でもご紹介しており 、かねてより新婦も行きたがっていた場所だ。
橋で繋がる素朴な島、屋我地(やがじ)へ
さいごは、名護の北部、本島からかかる橋をドライブして行ける離島、屋我地島へ。若者が次々とおしゃれなカフェをオープンする一方で、少し車を走らせればさとうきび畑が広がるのどかな場所だ。
まずは屋我地島へ向かう橋の手前で、ブランコがある絶景カフェ「FIFI PARLOR」に立ち寄る。すべての席が海向きのカウンターで、遮るもののないオーシャンビューとその向こうに浮かぶ屋我地島の絶景を楽しめる。海の上のブランコには、旅のメンバーも思わず童心に帰った。
それから、屋我地島のさとうきび畑をのんびりと散歩した。眼前に田園風景と海、背中に撮影クルーの掛け声とシャッターの音を受けながら、2人は思わず「ここには、また戻って来なくちゃなね」とつぶやいたそうだ。
一番の思い出は?やっぱり人!
こうして名護は私たちにとって特別な場所になったわけだが、旅を振り返ると、やっぱり一番の思い出は「人」に尽きる。
通りすがりの人から「あら、おめでとう!」と声をかけてもらう度に温もりを感じたし、何よりも、新郎新婦の願いを全力で叶えてくれる名護の皆さんに、心を打たれた。
たとえば、新婦の夢だったハイビスカスのブーケ。ハイビスカスは切り花にするとすぐに枯れてしまうため、通常は生花として販売されておらず、ブーケに使うのは造花がほとんど。しかし、地元のみなさんのネットワークを駆使して、ハイビスカスを提供してくれる方を探し出し、「新婦自らブーケの花を摘みに行く」という体験まで準備してくれた。
「海辺のモーニング」も同様。「静かなビーチを活かして、人が多い観光地では過ごせないような海辺の時間をプレゼントしたい」と相談をもちかけたところ、飲食店への交渉から、早朝のテーブルセッティングまで、親身に協力してくださった。
目には見えない繋がりを実感する、旅の終わり
旅の終わりを感じ、寂しくもある最終日。名護の皆さんには宿のチェックアウトを見送ってもらい、旅のメンバーだけで屋我地島を目指す予定だった。
しかし、
「……もう少しだけついて行こうかな」
「え、じゃあ私も」
「ぼくも」
と、次々と声があがり、最後まで同行してもらえることに! 名残惜しいのは私たちだけではないのだと、3日間で得た深い繋がりを感じた瞬間だった。
また行きたい場所、会いたいという人の存在は、旅の何よりのモチベーションだ。名護で人情に触れて、新郎新婦だけでなく、旅のメンバー全員にとって忘れられない場所になった。また必ず帰ってきます!
取材協力:ナゴラブ