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Dyson V12 Detect Slimのすごい技術<前編>

ゴミを可視化! Laser Slim Fluffy™クリーナーヘッドの秘密

author: 滝田 勝紀date: 2021/05/26

Dyson V12 Detect Slim。最新のLaser Slim Fluffy™クリーナーヘッドで、肉眼では見えない微細なホコリまで可視化し、(*1)集めた微粒子までもピエゾセンサーで計測。他の掃除機では到底発見できないような汚染物質レベルまでのホコリを見逃さずに除去できる。まさにDEEP CLEAN、一歩深いレベルの清潔さを実現してくれるイノベーティブな掃除機だ。

見えないウイルスなどに世界中の人々が恐怖する体験。コロナ禍で人々の清潔さに対する意識は、格段に高まった。家の中にいても安心できない。いくら密閉性の高い住宅でも、外から汚染物質は確実に入ってくるからだ。それらを完璧にシャットアウトすることはできず、床面などには汚染された微細なホコリなどが確実に潜んでいる。だからこそ、ニューノーマル時代は人間の目に見えないゴミを可視化することこそ、掃除機にとってマストな機能だ。

とはいえ、目に見えないホコリを可視化するのは簡単ではない。Laser Slim Fluffy™クリーナーヘッドや特殊なピエゾセンサーを駆使し、ダイソンならではの高度な技術力があってこそ実現できる。ダイソンがこれまでの製品群で脈々と受け継いできた「世の中にある潜在的な課題を見つけ、それらをこれまでとは違う技術ややり方で解決する」という確固たる思想を、まさに最新の技術で体現した1台がDyson V12 Detect Slim。今回はその開発の秘密を解き明かすべくダイソンのデザインエンジニア アサフ ウー・ウェイアン氏に、英国マルムズべリーの研究デザイン開発拠点取材経験もあるBeyondMagazineプロデューサーの滝田勝紀が迫った。

ダイソン デザインマネージャー アサフ ウー・ウェイアン氏

レーザー照射のベストポジションがどんな小さなゴミも影として浮き立たせる

――Dyson V12 Detect Slimでは、これまで目に見えなかった微細なホコリや粒子を可視化しますが、Laser Slim Fluffy™クリーナーヘッドにLEDではなくレーザーを採用した理由を教えて下さい。

ウェイアン LEDライトがヘッド部分についている掃除機は市場に多くありますが、LEDの光は床全体を照らすため、細かなホコリや粒子を見つけづらくなります。その点、レーザーの薄い光は、照らした粒子を影として浮かび上がらせることができます。

これにより、肉眼では見えないような微細な粒子の見逃しや、掃除の取り逃しを防げるようになりました。レーザー光にグリーンを採用したのは、人間の目が一番反応して見やすいからです。

――レーザー光の照射位置は地面から7.3mmの高さから、1.5°の角度で設定し、レーザー光が広がる範囲を精密に設定していますが、その数値はどのように割り出したのでしょうか。

ウェイアン ダイソンでは、初めてサイクロン掃除機を世に出したときから、何千というプロトタイプを作って、ベストを見つけ出す開発プロセスをずっと繰り返してきました。今回のレーザーの照射範囲や角度についても、高さや角度を少しずつ調整しながら、何千回もの試行錯誤を重ねています。

レーザーを装着する場所も、ヘッドの縦の部分や横、左、右、両サイドなど、さまざまな位置で実験を繰り返した結果、ヘッドの右サイドというベストポジションを見つけ出しました。

LEDで照射するとそこにゴミがあるのは確認できないが、レーザーを照射するとゴミが浮かび上がる

――扇形に広がる光の広さはどのように決まったのでしょう?

ウェイアン 例えば、レーザーをヘッドの真ん中につけると、照らす範囲が広くなりすぎて、微細な粒子が見えづらくなります。このような実験は本当に何度となく繰り返しました。その結果、片側からレーザーを照らすように設計することで、照射範囲が広がりすぎず、ヘッドの両端の範囲でちょうどよく光があたるということに行き着きました。

壁に沿って掃除をするときも、レーザーの光がホコリや細かい粒子がたまりやすい壁の直角部分をしっかり照らすことができます。もちろん、ヘッドがどんな動き方をしても、安定した光で照らせるような工夫もされています。

最先端テクノロジーが凝縮した透明アクリルヘッドも技術への誇りを表す

――Dyson V12 Detect Slimのヘッドは、あえて基盤部分まで見せるデザインを取り入れてますね。

ウェイアン ヘッドにアクリルを採用することは、ダイソンの最先端テクノロジーが詰まった基盤をユーザーにもぜひ注目していただきたいという思いがあります。

ダイソンのノズルは全てのパーツに意味がある。他社ではしばしば隠すような部分も、あえて象徴的なカラーや素材を採用して目立たせるのは、自社が持つ技術へ誇りがあるから。

――透明なアクリルカバーから、イエローとブルーのブラシが見えるのが印象的です。このカラーに決めた理由は何かあるのでしょうか。

ウェイアン イエローとブルーの配色は、創業者兼チーフエンジニア・ジェームズ ダイソンが決定しました。ヘッドから出るグリーンのレーザー光に対して、見やすい色というのは意識されたと思います。ヘッド部分にはレーザーのスイッチボタンも、通常ダイソンではボタン部分は赤が使われることが多いですが、あえてレーザーの光と同じグリーンを採用しています。

ちなみにカラーについては、すべてジェームズが全体のバランスを見ながら最終決定をしています。本体サイクロン部分のサテンがかったイエローも、おそらく、日本の方にも気に入ってもらえると思います。

――そもそも家庭での掃除における「見えないゴミ」に注目したのはどうしてでしょう。何かきっかけがあったのでしょうか。

ウェイアン 家にいると、カーテンの隙間から光が差し込んだ時に、光の筋に細かいホコリや粒子が浮かび上がっているのが見えますよね。しかし、カーテンを全部開くと、そういう空気中の粒子は見えなくなります。つまり、細くて強い光の筋は、細かいホコリや粒子を浮き立たせて見せてくれるということなのです。そこからヒントを得て、レーザー光で普段は見えない細かい粒子を“見える化”するというアイデアに行き着きました。

イエローとブルーが印象的なヘッドに対して、グリーンのレーザーは映える。細かなゴミから大きなゴミまで影とともにしっかりと浮かび立たせる

――細かい粒子をあえて“見える化”するというのは、吸い取って集めたゴミをクリアビンで見せるというダイソンのコンセプトにも通じていますね。

ウェイアン そうなんです。集めたゴミを見えるようにするのは、ダイソンがサイクロンクリーナーを初めて作った時からの重要なコンセプトです。そこからさらに発展させて、Dyson V12 Detect Slimでは集めたゴミだけでなく、家の中にある見えない粒子も “見える化”。見えることでそれらをしっかり掃除できることを可能にしました。家中から見えないホコリや粒子を取り除き、きれいになったことを実感できます。

1秒間に1万5000回もカウント集めたゴミの大きさを分類するピエゾセンサー

――集めたゴミはクリーナー本体の中で、ピエゾセンサーが検知して、ゴミやホコリ、粒子の大きさごとに液晶ディスプレイ(*2)で表示します。これはどういう仕組なのですか。

ウェイアン 今回開発したピエゾセンサーは、複数の粒子を大きさまで高精度に検知できるものです。地震を探知するのと同じシステムで、吸引したゴミがサイクロンクリーナーの中で本体の壁にぶつかる振動や音を利用しています。NASAが宇宙のゴミを測定する際に使っているシステムと、技術的な原理は同じです。

液晶は吸い込んだゴミを大きさ別に量をリアルタイムで表示してくれる。吸引力なども手元で変えられる。

――ピエゾセンサーを開発する上で、どんな課題があったのでしょうか。

ウェイアン 課題は非常にたくさんありましたが、一番難しかったのは、どこにセンサーを設置するかということです。本体内で粒子が一番多くぶつかる場所を探し出すことで、センサーが吸引したすべてのゴミや粒子を検知できるようにしました。

さらに検知したゴミや粒子を分類するアルゴリズムを開発し、リアルタイムで液晶に表示する技術も難しいものでした。その結果、掃除をしながら、今、どんなゴミや粒子を吸い取っているのかがひと目でわかるようになりました。

吸い込んだゴミは全てこのピエゾセンサーで検知され、サイズ別に液晶で表示される。

――ピエゾセンサーは1秒間に1万5000回も、通過するゴミやホコリ、微粒子をカウントしています。これだけの回数の検知を実現するのは、技術的にも相当大変だったのではないかと思います。

ウェイアン そうですね。まずは、1万5000回の処理を実現するマイクロチップを開発することが必要でした。さらに、そのカウントをモーターに伝えて、液晶ディスプレイで表示するという過程がまっていました。ここまでの技術を開発するのに、何年もの時間がかかっています。それほど高度な技術が多くのポイントで採用されているということです。

――具体的にどのあたりの技術が最もハードルが高かったのでしょう。

ウェイアン 一番難しかったのは、センサーが正確に検知できるように、ほかの機械的なノイズを取り除くことです。当然ですが、掃除をする時に掃除機内では、多くの振動や音が生じます。ピエゾセンサーがほかの機械的な振動や音などのノイズの影響を受けないために、ゴム素材でシーリングしたり、電気的な配線を絶縁するなどの技術を使いました。そういったあらゆるノイズを取り除くことができて、初めて1秒間に1万5000回もの正確な処理が可能になるのです。

ダイソンでは、ピエゾセンサーが正確に処理をできているかをきちんと計測できるよう、新たに50万ドル(約5500万円※)の最新の計測器も導入しました。

※1ドル=108.94円(2021年5月18日時点)で換算

家の中で、最も多い0.3ミクロンの微粒子を99.99%捕える(*3

――液晶ディスプレイで表示される微細な粒子はサイズ別に4段階で表示されます。この表示はどのように区分しているのでしょう。

ウェイアン 4つの区分は、(1)500ミクロンまでの砂糖などの大きなゴミ、(2)180ミクロンまでのダニの死骸や細かい砂の大きさのゴミ、(3)60ミクロンまでの微細なホコリ、(4)10ミクロンまでの花粉などの小さい粒子です。具体的なゴミや粒子の例をあげることで、その大きさがイメージできるように分類しました。液晶画面で棒グラフとして示すことで、ユーザーは“見える化”を実感できます。

さらに細かい0.3ミクロンレベルの微粒子ですが、Dyson V12 Detect Slimは、それら目に見えないほど細かい粒子さえも99.99%も捕集することができるのです。

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10μm
花粉のサイズの粒子

  • 花粉は通常、皮膚、髪の毛、衣服、履物、ペットで家に運ばれます。中に入ると、花粉粒と抗原がハウスダストに蓄積し、受粉シーズンのずっと後にピーク濃度に達します。

60μm
微視的なほこりや皮膚の薄片のサイズの粒子

  • カビは最大100µmの大きさで、キッチン、窓、その他の湿気の多い場所の周りに見られます。それらの胞子は鼻と喉を刺激し、息切れを引き起こす可能性があります。

180μm
ダニの死骸や細かい砂の大きさの粒子

  • ハウスダストダニなどは1日に約20の糞を生成し、ダニが死んだ後も症状を引き起こし続けます。

500μm
砂糖とノミのサイズの粒子

  • これらの大きくて目に見える粒子は、一次サイクロンと金属メッシュフィルターに入るとすぐにビンに閉じ込められ、空気の流れをきれいにするため、吸引力が失われることはありません。

※液晶ディスプレイに表示されるゴミの量とサイズは実際の使用状況により異なります。記載されているゴミの例は、粒子サイズや密度が異なることがあり、複数のサイズに表示される可能性があります。


―― “あらゆるゴミを見える化したい”というのは、ダイソンの重要なコンセプトです。それは、人々に掃除をすることで、きれいになったという実感や、掃除への喜びというモチベーションを与えてくれると感じますが。

ウェイアン はい、それがダイソンの目指している世界です。どれだけのゴミを掃除できたかが目で見てわかるということは、非常に重要なモチベーションです。Dyson V12 Detect Slimで吸引したゴミや見えない微粒子の大きさまでを明確にすることで、「家の中は見えていなくとも、これほど汚れているのか」と改めて知ってもらうことができます。それが、見えない汚れまできれいにできたという達成感、清潔できれいな状態をキープできるという満足感につながっています。

Dyson V12 Detect Slimは、これまでの常識を超えたレベルで「DEEP CLEAN/徹底的な掃除」ができることをぜひ伝えたいですね。

  • *1 レーザーはフローリング用に設計されています。レーザーの有効性は、使用環境の光やゴミの種類、フローリングのタイプによって異なります。
  • *2 液晶ディスプレイに表示されるゴミの量とサイズは実際の使用状況により異なります。本機能はモーター駆動ツールでオートモードを使用するために最適化されています。記載されているゴミの例は、粒子サイズや密度が異なることがあり、複数のサイズに表示される可能性があります。10μm未満の大きさの粒子は検出されない場合があります。一般家庭での平均使用量に基づいた自社試験結果です。自社調査を基に、微細なホコリとは100μm以下のゴミと定義づけています。オートモード使用中に自社試験で定めたホコリの濃度の増加を検知した時のみ、自動で吸引力が強まります。
  • *3 ASTM F1977-04に基づくSGS-IBR(米国)および自社による試験結果(2020年に実施)。試験は0.3μm以上の粒子を使用し、強モードで実施。

Dyson V12 Detect Slim Total Clean
価格/オープン価格

  • 本体製品サイズ(※1)/W121×D342×H234mm
  • スティック時の製品サイズ(※2)/W250×D1095×H234mm(※3)、W250×D1130×H234mm(※4)
  • 本体質量(※1)/1.50kg
  • ステック時の本体質量(※2)/2.20kg(※3)、2.40kg(※4)
  • 型式/SV20ABL
  • JANコード/5025 155 057117
  • (※1)バッテリー含む
  • (※2)バッテリー、パイプ、標準クリーナーヘッド含む
  • (※3)Loser Slim FluffyTMクリーナーヘッド装着時
  • (※4)ダイレクトドライブクリーナヘッド装着時

Text:工藤千秋 Photo:岡村昌宏(CROSSOVER)

後編は「毛絡み防止スクリューツール」の開発経緯に迫る!

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Beyondプロデューサー・家電スペシャリスト
滝田 勝紀

Beyond Magazineのプロデューサー。電子雑誌「デジモノステーション」の元編集長。All Aboutの家電ガイドとして活動中。楽天のショッピングSNS「ROOM」の家電公式インフルエンサーを務め、フォロワー数は40万人(2021年3月現在)以上を抱える。ベルリンで毎年開催される世界最大の家電見本市「IFA」ほか、海外取材の経験も豊富。インテリアスタイリスト窪川勝哉氏とともに、オフィス兼「家電とインテリアのショールーム」をオープン。コンサルティングクリエイターとしても活躍中。
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