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WAKAYAMAごんぱち家族の移住日記

とねちゃん!軽トラいらん?田舎は驚くほど色々いただきます。

author: 利根川 幸秀date: 2022/03/03

「WAKAYAMA」こと和歌山県への移住を本格始動した利根川一家。連載5回目は、移住を考えるなら知っておきたい、地方ならではの交通手段、そして東京とは全くと言っていいほど違う、“あんなモノ”から“こんなモノ”までもらえちゃう、ご近所さんとの関係性まで。移住したからこそ分かる、地方暮らしの内情をセキララに語ってもらいます。

田舎暮らしを始めてみれば、色々もらってばかりの利根川家。旬の野菜に鮎やらアマゴの川魚、瓶にたっぷり詰められた自家製ハチミツ、原木しいたけなんのその。

「鹿かかったから、手伝ってくれー!」と言われて30分後に届いた、命の温もり鹿の足。「ありがとうございます! いただきまーす! 今夜も感謝の雄叫びあげてきます!」もらった軽トラの警笛で、いただき祭りのファンファーレ!
田舎ならでは、いただきもの話はじまりまーす!

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もらった軽トラ、熊野の川で沐浴洗車(洗剤不使用)  

運転免許なしでは、もはや“事故レベル”

軽トラ相撲、はじまりまーす

自動車は田舎暮らしで絶対に欠かせない、最重要アイテムのひとつだ。東京に住んでいた頃、和歌山の移住相談ディスクに初めて行った時、妻のきみよが自動車の運転免許がないと伝えると、担当の方はすかさず「それはあかんですねー、それはあかんです」と、きっぱりと言った。もう一人の担当の方に「東京にいる間に絶対、免許取得しといた方がいい」と、かなり強調されたのを覚えている。言われた通り、東京にいる間に妻のきみよは運転免許を取得したのだが、もしも免許なしでここに越してきていたら、もはや事故レベルの不便さを抱えて暮らすことになっていたことは間違いないだろう。

田舎では車の“複数台持ち”も基本スタイルで、ほとんどの家に車は二台以上あり、三台以上も当たり前くらいの感じだ。僕が今まで見てきた感じでは、かなりの確率でその内の一台が軽トラ。

ちなみに、常に車での移動が当たり前の田舎では、ガソリン代を含め、車にかかる経費は本当にバカにならない。ただし、駐車場の事をあまり気にしないでいいのは、田舎ならではの良さである。そんな中、車を一台しか持っていないことへの不便さを感じはじめ、色々な荷物を積め、作業車としても使える軽ワゴンを二台目として探していた。

地方に蔓延、軽トラ症候群!

どこもかしこも、軽トラ会議

引っ越して来て2か月ほど過ぎた頃、こっちで知り合った炭焼き職人のノブさんが

「とねちゃん! 軽トラいらん?」

と、電話をくれた。ちょうど二台目の車を探していた時だったけれど、軽トラにはあまり馴染みがなく、東京でたまに見かけた軽トラの印象は「植木屋さんが使っている」というものだった。加えて、こっちに来てから野良仕事メインの生活スタイルでもなかったので、軽トラの存在にはピンとこなかった。また、ふたりしか乗れないことや、車中泊ができないことなども自分の中では軽トラの魅力や使い勝手の良さを感じない理由でもあった。

「軽トラかー……。ちなみにお値段はいくらくらいですか?」「車検1年ついて、タダやでー!」「ええ!? どっか壊れてるんですか?」「19万キロ走っとるけど、まだまだ普通に走るでー。備長炭で使う『ウバメガシ』とかをバシバシ積んどった師匠の軽トラやから、サスペンションとか多少へたっとるけどなー。他に軽トラ手に入って、欲しい人おらんかって話やー。まー、タダやし、とりあえずええんちゃう!?」。

ちょっと考えさせてほしいと伝え電話を切った。“軽トラ・タダ・19万キロ・車検1年” ……どうなんだろう? 軽トラに乗ってる友達に相談しようとして、ハッ!とした。こっちに来て仲良くしてもらってる知り合いの9割近い人が、みんな軽トラに乗っているのだ。そして誰に相談しても「軽トラええっすよー」「軽トラやめれんでー」「軽トラ最高やー!」「軽トラ無敵やで〜」と、絶賛おすすめの大合唱。

19万キロ走ってると伝えると「あと10万はイケんで!」「まだまだ余裕やろー!」「軽トラ舐めたらあかん! 30万キロはいくよ」。車検一年付き、車体タダ、と言うと「もらっときー!」「ただで一年乗れんのやから!」と、“軽トラ民族”達の熱いコールに背中を押され、予期せぬ展開で軽トラデビューを迎えることとなった。

結局、タダというのはさすがに気が引けたので、勝手に車代3万円、手数料1万円の合計4万円を払い、晴れて軽トラデビュー。今となっては、軽トラなしでは、生きていけない“軽トラ民族”のひとりとなったけれど、まさか軽トラをタダ同然で手に入れることができるとは、東京にいた頃には夢にも思わなかった。

「とねがわさーん!とねがわさーん!」

玄関の外で誰かの声がしてドアを開けると、近所の人が採れたての野菜や珍しい物などをおすそ分けしに訪ねてきていることが多く、いつもありがたいなーと感謝していただいている。軽トラは稀なケースではあるが、田舎では本当に物をもらう機会が多い。「おもろ怖い話」のひとつとして、子どものいない集落に知り合いの子連れファミリーが移住した時の体験談を話したい。

それは、子連れファミリーが移住してきたことに喜びが爆発し盛り上がった集落の人たちから、毎日玄関先やドアノブに、季節の野菜や果物などがひっきりなしに届き、消費が追いつかないけど、断るに断れず、捨てるに捨てられず、四苦八苦したという話だ。当人が「あれは本当にキツかった……」と呟いていたのが印象的だった。

僕らの集落には、そもそも人があまりいないので、消費出来ないほど物をもらうことはないまでも、それでもありがたいペースで、常に何かしらをいただくことが多い。先に書いた採れたて野菜もそうだし、しいたけの原木を丸ごともらったこともある。その時には、「明日雨が降ったら大きくなるから、それが食べごろや」と的確な指示があり、雨上がりの次の日、しいたけが前日の2倍くらいに大きくなっていたことには、驚かされた。

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雨降って、傘を広げる椎茸ファミリー

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さっそく晩メシ用にぶちり取る

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存在感抜群の椎茸に歯抜けが笑う

また、仕事の合間に自宅に戻ると、知り合いの猟師さんの軽トラが僕の横に停まり、「鹿がかかったから、捌くの手伝ってくれー」と言われ、「すんません、今仕事のあいまで……」という、都会では絶対にあり得ないであろう会話が繰り広げられたこともある。その後、「ほな、足一本あとで持ってったるー!」と言われ、実際に捌きたての温かい鹿の足をいただいたのは今でも忘れられない。

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ひづめ辺りのリアルさに若干やられる父

その他にも「今年ウチの巣箱で採れたハチミツやでー」と、ホクホク顏で瓶につめたハチミツをいただいたり、「ワシから貰ったのは内緒やでー」と、マツタケをおすそ分けしてくれたり、「魚やるから、クーラーボックスもっといでやー」と、採れたての鮎やアマゴをもらったりと、他にもまだまだたくさん。

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ミツバチの巣箱(ゴーラ)を良く見かける

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もったいなくて、開けたくないハチミツ瓶

アマゴを貰いに行くきみよとたね
アヒージョになったアマゴさん

ここには書ききれないほど、物をいただく機会がたくさんあるのは、やはり田舎ならではの魅力であり、特権だろう。

次回は、田舎と言ったら野良仕事、ゆる過ぎて怒られそうな、きみよファームのお話でーす!

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フォトグラファー
利根川 幸秀

1978年埼玉育ち、99年にインドよりエジプトまで陸路で旅して、途中イスラエルで旅費を稼ぎ、2000年ハンガリーより帰国、その後も東南アジアなどバックパッカーしたのち、職人などを経て、2006年写真家・𣘺本雅司氏に師事。2010年フリーランスとして独立。雑誌、webメディア、ポートレート、家族写真等、多岐にわたり撮影。趣味:川遊び、ダム瞑想。2021年、家族で東京より和歌山に移住。
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