さて皆さん。伝説のデザイナー、倉俣史朗をご存知だろうか? 赤い薔薇がアクリルに浮かぶ透明のチェア「ミス・ブランチ」は何かの記事などで見たことがある人が多いかも知れない。ちなみにミス・ブランチは1988年の発売当初の価格が200万円で、今は海外オークションなどに出品されると数千万円の価格で取引されている。そんな伝説のデザイナーの伝説の作品が2021年にひとつ復刻されたので、即購入に。今回はそちらを紹介したいと思う。
購入できる倉俣作品と考えると破格に安い
「SAMBA-M」という名前がついたこのグラスのシルエットの作品は、1988年の発表当時の最新テクノロジーであった、赤色発光ダイオードをグラスに仕込んだ照明でありオブジェで、倉俣が実際にシャンパンを注いで、来場者を驚かせたというエピソードのあるもの。没後すでに30年が経過し、倉俣が手がけたものは現在実際に購入可能なものはそう多くなく、しかも手頃な価格やサイズのものが少ないのだが、この「SAMBA-M」の復刻版は2万9700円で購入可能。多くの倉俣作品を手がけてきた、センプレデザイン代表の田村昌紀とデザインプロデューサーであり文筆家のジョー・スズキによる「ギャラリー田村ジョー」が復刻させ、製造に関しては照明の設計開発技術に優れた「アンビエンテック」と協業することで、防水機能やリチウムイオン電池による長時間使用などを可能にしている。
とはいえ、ポータブルライトで2万9700円は決して安い買い物ではないのだが、今実際に購入可能な倉俣作品と考えると破格に安い。でも、実はコレ、赤くしか光らない(笑)。我が家に来た何人かのゲストに同じことを聞かれたのだが、どこを押すと色が変わるか皆聞いてくる。底のボタンを押すと3段階に調光はできるけど、光は当時の赤色発光ダイオードに忠実に、常に赤いままだ。明るくてポータブルでガシガシ使えるライトはいくらでも安く売っているけれど、これはそれらとはまったく異なるプロダクト。というか倉俣の光るオブジェ。
赤くしか光らないけど、息をのむほど美しい
防水性能があるので、実際にシャンパンなどを注ぐこともでき、しかも液体を通すと驚くような光と影が天井や壁に映し出されるのだが、僕の写真技術ではこの倉俣作品の素晴らしさを伝えきれないので、点灯している写真はメーカーからお借りした(最後の点灯していない写真は我が家のキッチンにて。アンティークのグラスなどと並べて愛でるのがお気に入り)。
防水性能があるとはいえ、実際に飲用のグラスとしてはオススメできないし、ガラス部分は職人による手吹きでとても美しいがとても繊細なので、取り扱いは丁寧に。そして赤くしか光らない。でも息をのむほど美しい。世界中で評価の高い倉俣作品。手にいれるなら、この「SAMBA-M」からスタートしてみるのはどうだろうか。少なくとも僕はこのオブジェが今、家にあることが幸せだ。