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タケナカリーロングインタビュー#02

「新宿中村屋はカレー界の千利休だ」CHANCE THE CURRYのカレーeye

author: Beyond magazine 編集部date: 2021/07/24

4年4ヶ月もの間、毎日カレーを食べ続ける“連続カレー”を行ない、フードロスプロジェクト「フリーカレー」を企画するなど、カレーの魅力を発信し続けるCHANCE THE CURRY代表、タケナカリーさんロングインタビュー後編。第一回は『「今、キてるのはビリヤニ」CHANCE THE CURRYのカレーeye』 第一回に引き続き、第二回もタケナカリーさんが注目するお店情報があるよ!

カレーはお茶の変遷に似ている。新宿中村屋にBIGリスペクト

ひとえにカレーと言えども、味もスタイルも多岐に渡る。今はビリヤニに注目しているタケナカリーさんだが、カレーの多様性について伺うと「カレーはお茶の変遷に似ている」とのこと。タケナカリーさんが思う、日本茶文化とカレーの共通点とは。

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――タケナカリー 日本のカレーの流れはお茶の変遷に似ていると感じていて、新宿中村屋はカレーの千利休だと思っています。

明治から昭和にかけて、日本のカレーは洋食のカレー文化でした。大正時代に日本に逃げ延びてきたインド独立運動の志士、ラス・ビハリ・ボースさんたちを新宿中村屋の創業者夫妻が匿って、自分の長女とボーズさんが恋仲になっていき、新宿中村屋は昭和2年に「純印度式カリーライス」を発売します。

その話がすごく好きなんです。僕は朝ドラ案件だと思っているんですけど(笑)。そのときに日本でもインドのカレーを知ってほしいって生まれたのが、あの新宿中村屋のカレーです。僕は、ここが千利休っぽいなと思うんですね。利休が原点の「侘び茶」に振り返って新しい価値観を作ったように、ボースさんはインドのカレーで新しい価値観を作った。これって日本のカレーにおけるルネサンスみたいな感じですよね。洋食としてのカレーから、インド発祥のスタイルに戻っていくという。

ボーズさんにちなんだ新宿中村屋のベンゴールビーフカリー。via. Instagram @takenacurry

そんなカレールネサンスがあるなかで、新宿中村屋のカレーを好きになった人たちが、今度はインド的なカレーを継承していきます。そして、またそこに日本的アレンジがだんだんと加わっていく。それが今の出汁や複雑なアレンジを効かせる大阪スパイスカレーにつながると思っていて、その流れが古田織部っぽいな、と思っています。

お茶では古田織部の次に茶人、小堀遠州が登場します。その人が「綺麗寂(キレイサビ)」シーンを作り上げるんですけど、そのキレイサビっていうのはシンプルなものに美しさをユニークに取り入れる。千利休と古田織部の趣向が合わさって踏襲されたような印象です。それってただシンプルなだけということはまた違うんですよね。

今のカレーにも通じるところがあって、ただ派手だったり、ドカっとした感じよりも、すごくおかしなことやっているんだけどシックにまとめたり。シンプルに面白いことをやるような流れができているような気が、僕のなかではしています。

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その例えを踏まえると、「大江カレー」という高円寺にあるカレー屋さん。ここはもう、どシンプルです。でも、ここの魚カレーはすごく美味しい。どうやって出汁とっているのかなと不思議に思うほど。

あとはこれはイベントでもご一緒させてもらって仲良しですけど、八丁堀の「ジャパニーズ スパイス カリー ワッカ」。ワッカさんは大阪から移転してきました。大阪からきた人たちは本当は外れ知らずで、ただ派手派手しさを出そうという感覚は全くなく、ちゃんとカレーに理論を考えて落とし込んでいるのがすごい。

ジャパニーズ スパイス カリー ワッカ : https://www.instagram.com/sekime.wacca/

下北沢にも「オイシイカレー」というお店があって、僕はどこに行ってもこのお店をオススメしています。アイロニーがすごくて(笑)。シンプルにユニークなカレーを発信し続けているお店ですね。例えば、インスタグラムとかってカレーの写真を絶対あげないですから。メニューしかあげない。それがまた良いんです。


カレーにリスペクトを持ちつつ、変化させていく人たちが僕は好き。明太子パスタみたいに新しいオリジナルが生まれるのがたまらない(笑)。昨今のカレーブームに多様性はあるんじゃないかなと思います。

――

CHANCE THE CURRYとして見る未来

まさにカレーにどっぷり使ったスパイス人生を送るタケナカリーさん。インタビュー後のBeyond取材班が皆、数日間カレーを食べ続けたほど、カレーは(カレーの話は)影響力が高い。そんなタケナカリーさんが手掛けるプロジェクトに「メタメタすくいやすいカレー皿」がある。CHANCE THE CURRYとして、カレーをビジネス化したきっかけとなった製品だ。

――タケナカリー カレーをビジネスにしたのには理由があって。それがこの「メタメタすくいやすいカレー皿」なんです。フードロスとか考えるよりも前に、カレーをちょい残しする人が多いなっていうのが嫌だったんです。

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メタメタすくいやすいカレー皿(赤)¥3,960

そもそもカレーのお皿は最後までうまくすくえない、すくいづらいのが多い。名店のお皿ほど平べったいですし。それもちょい残しする原因かなと思い、すくいやすいカレー皿ってどんなのかな、みたいなことを考えてたんですよ。

それこそ、ひと口すくえる穴の開いてたりとかも考えましたが、偶然教えてもらった福祉用のお皿を参考にして、この形に落ち着きました。底の円(高台)の中心をズラすことで皿の両端の傾斜角度を変えています。

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サンプルを使ったママ達にも好評というメタメタすくいやすいカレー皿。via. CAMPFIREプロジェクト

メタメタすくいやすいカレー皿は、アシンメトリーでも傾かない適度な重量調整や、電子レンジでそのままチンできる耐久性とか、本当にすごい考えた結果、開発・生産までたどり着いたのですが、そもそもこういうプロダクトを開発するってことを含めて、何かやりたくなっちゃって。社会解決ってわけでもないですけど、なんかもったいないのは嫌だな。それで仕事にしていっちゃったんです。

チャンス・ザ・ラッパーが音源を売り出したから(第一回インタビュー参照)、うちも売っていいやって思っていて。こういう商品作ったときもそうなんですけど、なんか美味しければいいやっていうだけでは最近なくなってきている。

今後はカレーとフードロスを掛けたイベントとかをきちんとやりたいとか、そういうのはすごく感じますね。ただ真面目ではなく面白さもあってやりたいってのはすごくあるわけです。

――

タケナカリーさんにとっての“じゃないほうカレー”とは

メインストリームからは少し外れた“じゃない方”カレー。ダイバーシティなカレーカルチャーだからこそ、唯我独尊のカレーも人気が高い。そんな変化球なカレーについても聞くと、最後に以下の3カレーを教えてもらった。

天重 本店
「天ぷら屋のしゃばしゃばカレー」



天重 本店

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サファリ アフリカンレストランバー
「エチオピアのドロワット」



サファリ アフリカンレストランバー

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東京コロンボ「カリブのカレー」



東京コロンボ

新宿ゴールデン街の間借りでなんと"カリブのカレー"「コロンボ」を提供し話題となった 「マリーダカレー」あらため「東京コロンボ」が恵比寿に移転 ...

カレーの道は奥が深い。カレーを作る人、広める人、食べる人、ひとりひとりがチャンス・ザ・カリー。ダイバーシティが脚光を集める現代において、カレーこそがまさに多様性の塊。バーリトゥードであってもいいじゃない。カレーにはそんな懐の深さを感じる。

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カレーの話をすると、ついついカレーが食べたくなる。グッズも欲しくなる。まさに「カレーはカルチャー」だ。

取材協力:CHANCE-THE-CURRY
※聞き手:早坂英之 a.k.a. ハヤサカリー(編集部)、撮影:下城“スパイス”英悟

CHANCE-THE-CURRY

《curry is philosophy》カレーは文化の流れと共にあります。カレーという系統樹を"切り取る人"は歴史ある西の空を仰ぎ見て、"延ばす人"は革新を夢見て踊ります。答えはないけど、全部正しい。カレーは哲学。エロいカレー大好き。

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Beyond magazine 編集部

“ユースカルチャーの発信地“をテーマに、ユース世代のアーティストやクリエイター、モノやコトの情報を届けるWEBマガジン。
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