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ウェルネス

こばかなの、無駄話から生まれる“感性”の法則

限りなく小さな仕事への美意識を持つことから始まるアート思考

author: こばかなdate: 2022/05/21

さまざまな事象を分かりやすい図解で表現し、Twitterやnoteでの発信で支持を集めるこばかなさん。多摩美術大学を卒業後、デザイナーとして歩み始めたのち、コーチング会社THE COACHの代表を務める。SNSなどで発信する内容は理路整然としているこばかなさんだが、普段どんなことを考えているのか。そして普段の発信から削ぎ落とされている“無駄”な部分にこそ、感性を刺激する大事なモノが宿っているはず!

外からの力が作用しなければ、物体は静止、または等速度運動を続けるという「慣性の法則」をなぞり、「こばかなの無駄話から生まれる“感性”の法則」と題した連載。こばかなさんと無駄話をして、日々の生活で静止しがちな思考を動かし始めよう。第7回目は、仕事とアート思考のお話し。

「理由はないけどなんかいい」誰にでもある美意識

最近こばかなさんが仕事面で気になっているトピックが、「アート思考」だと言います。一体アート思考とは、どのような考え方なんでしょう。

「自分なりの美意識をもとに答えを出すこと。これが『アート思考』の考え方のひとつです。内側から湧き上がってくる感覚を大事にすることは、わたしの仕事である会社経営に限らず、どんな仕事でも大事だと思うんです」

「仕事において美意識を持つべき」というアート思考の考え方に、ここ数年で注目が集まっています。そのきっかけとなったのは、独立研究家・著作家として活躍する山口周さんのベストセラー『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか』。決まった正解が存在しない現代を生きる上で、自らの美的感覚をもとに意思決定することの大事さを説いています。

でも、いきなりアートが大事なんて言われても、「自分には美術のセンスもないしな……」と思って、取り入れるのをためらう方は多いのではないでしょうか。

「確かに、その感覚はわたしも分かります。わたしはもともと、ユーザーの課題解決を中心に考える『デザイン思考』が得意な人間でした。でも、“理由はないけどなんかいい”みたいな美意識は、美術のセンスうんぬんに関係なく、誰にでもあるものだと腑に落ちたんです」

「理想の社会は何か」という問いは究極のアート

ユーザーの課題解決を第一に置く「デザイン」が大事なのか、それとも自らの美意識を発揮する「アート」が大事なのか。「デザイン vs. アート」の議論は、特に美大出身であるこばかなさんの耳にはよく入ってきたそう。

2つのうち、こばかなさんはデザイン思考が好きだったと言います。

「私はユーザー起点で考えるのが好き。だから経営の上でもデザイン思考的なアプローチを取りました。そういう状態が自分にとっては正しくて、心地良かったんです」

ただ、「課題を中心に考えると、5人のデザイナーが5人とも同じ答えにたどり着く」のがデザイン思考。合理的な思考プロセスなので、同じ解に収束しがちです。そこで経営におけるアート思考の重要性が生まれてきます。

「経営者にとってアート思考が大事なのは、“どういう事業を作ってどういう社会にしたいのか”という問いに答える必要があるからです。“理想の社会は何か”という問いなんて、みんな答えが違うものですよね。自分の美意識が発揮される部分で、まさにアートだと思います」

「自分はこれがイヤ!」からこだわりを見つける

では、アート思考は経営者だけでなく、現場で働く会社員にとっても大事な考え方なのでしょうか?

「私はどんな小さなことにでもこだわりを詰められると思うし、美意識が宿ると思います。たとえばメールやメッセージひとつとっても、トーンは人によって違いますよね。メッセージが丁寧な人はコミュニケーションを大事に思っているんだと思います。“誰かに言われたわけでもないけど、自分はこうしたい“という意志を持つと、事の大小に限らず評価してくれる人は必ずいます」

しかし意外にも、こばかなさんはプライベートではあまりこだわりがない人なんだそう。

「私は食べ物もそんなに好き嫌いないですし、服も正直何でもいいです。だから自分でもけっこうこだわりがない人間なのかなと思っていました。でも、実は仕事面でこだわりがあるということを、仕事の中で気づいていったんです」

たとえば、会社がAという方向に進もうとしているとき、なんとなくBの方がいい気がした……など。自分の思いは、「○○が好き」ではなく「○○は嫌だな」という場合に表れやすい、とこばかなさんは言います。

「ごはん何食べたいか聞くと、何でもいいと返ってくる場合は多いですよね。でも、『じゃあ寿司行く?』『なんかそれは違う』みたいなときけっこうありませんか。で、何でもいいわけじゃないんだなとなる。こういうふうに、最初は自分が嫌なことから考えるような、消去法の方が始めやすいと思います」

強みは能動的に作るもの

こばかなさんは自分を客観的に見つめ、他人に伝えることがとても上手です。自己認識はどう確立してきたのでしょうか。

「メタ認知については、誰かからフィードバックしてもらう機会が多くなって捗るようになりました。一時期、Twitterで知り合った人ととにかくお茶するという活動をやってたときがあって(笑)。そのときの体験はnoteにもまとめてますが、この体験をすると、相対的に自分がどういう人物なのか分かってきます」

自分の周辺の人ではなく、まだ見ぬ世界の人と話すこと。そしてポイントは、言われたことがしっくり来るか来ないかは置いておいて、いったんは「受け取る」ことだと言います。

「私は1ヶ月間で3人に、言語化が得意だよねと言われたことがありました。自分では特に気がついていなかったのですが、もしかするとそうなのかもな、といったん受け止めてみた。その結果、現在のコーチングの仕事にもつながっています。他人からの言葉は日常的にもらっているはずで、普段どういうことを言われているかに目を向けてみると良いかもしれません」

春は入社や異動の時期。新しく出会った人に自分のことを説明するのが苦手な人も多いでしょう。最後に、こばかなさんにアドバイスを聞いてみました。

「何を言えばいいのか分からない、自分には特徴もない……と思う人は多いかもしれません。私は、自分の強みや特徴はむしろ作りにいくくらいのものかなと思っています。私がTwitterで人とたくさん会っていたのはデザイナー1、2年目で、全然ひよっこのとき。でも自己紹介でUIデザイナーだと言いまくって、そういう『キャラ』には見てもらえました(笑)。こんな強みを持ちたいって思ったら、まずは口に出してみる。ずっと口に出していれば自分でも意識し始めて、いつか自分が描く人になっていくと思います」

Text:弥富文次

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THE COACH 代表
こばかな

THE COACH 代表。デザイナーとして株式会社DeNAに入社後、株式会社THE GUILD、フリーランスを経て株式会社THE COACHを創業。キャリアとエグゼクティブを中心にコーチングの実績400人以上。国際コーチング連盟認定コーチ(ACC)。開講以来、講師として150名以上のトレーニングを担当。Twitterやnoteでコーチングについて発信しており、SNS合計フォロワー数6万人以上。
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