ユース世代から募ったリアルなお悩みを、モデルのイシヅカユウさん、お笑いトリオ・ぱーてぃーちゃんの信子さん、画家・僧侶の長谷川彰宏さんに聞いてもらう連載企画「今月のサバイブ術」。さまざまな不安や生き辛さが渦巻く今をサバイブするヒントを探ります。お悩みの投稿はこちらから!

「会話の喋り出しが苦手です。相手から声をかけてもらえればいくらでも話せるのですが、自分から発するとなると一言目になんと声をかけていいのかいつも浮かばず、会話に発展できません。天気の話や共通の話題など、何気ない会話をすればいいとは分かっているのに、一旦考え込んでしまい、相手から話しかけてもらうのを待ってしまいます。3人はどのように会話をはじめていますか? コツがあれば教えてください」 Hさん(30代)

必要に駆られてなのか、話してみたい! と思っている方がいるのか、相談者様の状況が掴みきれないのですが、何にせよ苦手なことなのに自分から話を始めようとしているの、すごいと思います。
天気や共通の話題、何気ない会話をすればいい、とわかっているのなら、あと必要なのは勇気でしょうか? 私は会話中あれこれ逡巡してしまい中々話し始められなかったり、話している途中で沈黙の時間を作ってしまうことがあります。それ自体は、きっと根本は自分の優しさからくるものだと思うんです。相手の状況とか色々考えながら話しているということなんだと思います。だから私は無理にそれを変えようと思いません。
だけどそれも、考えすぎて仕舞えば「すぎたるは及ばざるが如し」。ただコミュニケーションがうまく取れないだけになってしまって、全く相手のためにも自分のためにもならないどころか、むしろお互いにしんどい思いをしてしまうと思います。ある程度のところで「えいや!」とやる勇気が必要です。私自身も、会話をはじめとして人と人とのコミュニケーションには「もしかしたら嫌われる可能性がある」というリスクがつきものなのだと理解し、それをちゃんと負う勇気を持とうと常々思っています。

イシヅカユウ
静岡県浜松市生まれ。フリーランスのファッションモデル・俳優。さまざまなブランドのファッションショーや広告に出演するほか、2021年には短編映画『片袖の魚』でスクリーンデビュー。漫画家・瀧波ユカリとともにパーソナリティを務める『どっちが好きなの?』(通称“どちすき”)と、一人でポッドキャスト界の深夜番組を目指す『イシヅカユウの自分語り』がSpotify、Apple Podcastなどで好評配信中。
Instagram:@yu_ishizuka
X:@ishizukayu

考える必要なんてないじぇりあ🥳🥳
思ったこと聞いたり言っちゃえ⤴⤴
うち人との会話で1回も頭使ったことないけど(頑張れ脳みそ!! 負けるな脳みそ!!)、楽しく生きれてるよ💕
正直、天気の話とか自分が興味無いから喋るのためらうんじゃない??
自分がその時思ったこと伝えてみれば??
例えば「この前話題の○○食べたけどあんまりでしたよーっ」とか、「今爆笑確定の大喜利思いついたんで1人でお題言って回答しまーす」とか🤟😉
あ、ついでにうちが擦りまくってる1人謎かけあるからここにも置き土産してあげるね。
「たばことかけまして、KinKi Kidsと解きます。その心は、どちらもニコチン(2個ちん)があるでしょう」
↑これ好きに使っていいよ
…うちのお悩み相談とばさないでね、約束だよ。
まあさ、自分が思ったこと喋って共感されなかったら、この人とは合わないって分かるし、価値観のズレで盛り上がったらラッキーだし相手に知ってもらえるしなんでもいいんだよ🥳🥳
あと笑うことってがん細胞減らすらしいのね💡 だからお笑い芸人かっけーって思ってうち芸人やってんだけどさ(文章だからまだ笑い取れて無いだけだから!! 音声だと面白いから!!)、だから面白エピソードトークの腕磨くか、芸人が喋ってたすべらない話を自分のオリジナル感出して喋って、「はい、うちのおかげで健康になったよ感謝してねー」て崇められちゃえww その芸人も理由言ったらパクったの許してくれるよww
あと無理して話題作ってるのって意外とバレちゃうから、ほんとに自分の思ったささいなことでもいいと思うよ🥳🥳 頑張って寄り添おうとしたことに意義があるのら🦕✨️ よっ!! 気遣いの鬼!! かっけーぞ!! 気楽にがんばれ!!
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信子
大分県大分市出身。お笑いトリオ・ぱーてぃーちゃんのボケ(思い立ったことをすぐに言う)
担当。ラジオアプリGERAにて『ぱーてぃーちゃんの絆Nightふぃーばー』を毎週金曜日に更新。
「この度大分市魅力発信アンバサダー(分かりやすく言うと観光大使的なこと)になりまんた💖💖 うぇーい⤴⤴ ぱふぱふ⤴⤴ 正直有り得ないくらい地元の魅力発信しちゃう予定💖💖」
Instagram:@nobuko_0801
X:@n0bush1

「一言目を待つ」ことの利点は実はとても多いので、よくわかります。
たとえば相手が「今やっているガンダムの映画観た?」と聞いてきたとする。
その時点で、相手の興味関心の中に「アニメ-ロボットアニメ-ガンダム-映画-今流行り」みたいなカテゴリがあることが分かる。そこで、会話のカテゴリ、つまり“フィールド”が決定する。フィールドが決定したので、あとはその話題に対する“価値観”を込めれば話が展開する、と僕は分析しています。
そして、この質問者の方は、この“価値観”が入り込んだフェーズの会話を“間違えたくない”と強く思っているのではないでしょうか。つまり、相手が良いと思っていたものを、面白くなかったと言いたくない。もし仮に相手がダメだったよねと思っていたら、その感じに合わせて対応したい。
なので、「ガンダム観た?」という相手に対して、観てないなら「まだ観てないんですけど、どうでした?」と返し、観ていたら「先週観ましたよ、どう思いました?」という返答をし、それに対する相手の出方を伺ってから、会話というゲームを安心して開始するということなのでしょう。
一言目を相手から貰えば、“フィールド”が確定し、相手の興味関心から外れることなく、楽しく会話が出来る。そして相手が出してきた“価値観”に則ってフィールドの話題を解釈すれば、相手の気に触ることなく、相手と“気が合う”会話が出来る。
僕はこのような会話への態度を“後輩ムーブ的リズムゲーム”だと勝手に呼んでいます。相手の価値観に合わせる所が後輩的だし、興味関心がある領域でテンポよく(それ知らない、とか興味ない、とかでリズムが詰まらないように)話すことがリズムゲーム的だと思うからです。
“会話が上手い”とされている人の大半はこれが上手いです。日常会話なんてほとんどリズムゲームだからです。ダイナミックな哲学的対話なんて日常で目指してないし、会って話すくらい距離が近い人間に気が合わないと思われたくないのは至極当然です。
なので質問者の方も、“一言目”、厳密には相手の“フィールド”と“価値観”が確定したあとは会話がとても上手なのでしょう。
僕はそれで良いんじゃねと思っていますが、自分からも一言目を話したいとのことですので、僕なりに思う具体案を一つ提示したいと思います。
それは“フィールド”から一言目を話すのではなく、一言目から“価値観”を込めて話してみることです。
質問文にある、“天気の話、共通の話題”というのは、どれもフィールドの話です。もちろんそれも無難でいいと思います。
しかし、あえて“価値観”から一言目を話してみる。
「その靴の色めっちゃ可愛いですね。履きやすそうだし」とかです。
“会話ではとりあえず相手を褒めると良い”みたいな言説はよく流れています。素直に褒められて嫌な思いをする人は少ないというのもありますが、有効である理由の一つに、“素直な感情と価値観を相手から提示してくれた楽さ”故の“返答のしやすさ”があるのだと思っています。
自分の感情が動いた話を、初手から相手にぶつけてみると、案外相手も乗ってくれます。
なぜならだいたいの人も“後輩的リズムゲーム”をプレイしているからです。
こっちから価値観を提示してしまうことを恐れなければ、一言目に詰まることは少なくなるのではないでしょうか。
ちなみにガンダムはめっちゃ良かったですよ。特に後半のリズム感が。みなさん観ましたか?
ではまた。

長谷川彰宏
三重県津市生まれ。天台宗系の寺院に生まれ、12歳の時に得度(出家)。現在は東京藝術大学院美術研究科に所属し、現代アーティストとして活躍する。仏教思想や仏像の造形にインスピレーションを得た作風が特徴。
Instagram:@akihiro_hasegawa_jp
X:@Akhr0g
Text:イシヅカユウ、信子(ぱーてぃーちゃん)、長谷川彰宏
Illustration:an
Edit : 山梨幸輝
※イラストレーターのanさんは今回で最後の担当になります。毎回、素敵なイラストを本当にありがとうございました!