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「若者を難聴から守る『Dyson OnTrac』」

技術責任者のJake Dyson氏に製品コンセプトを聞く

author: 村上 琢太date: 2024/10/11

吸引力の落ちない掃除機や、羽根を持たないファンで有名なDysonから新たにノイズキャンセリングヘッドフォン『Dyson OnTrac™ヘッドホン』が発売された。価格は7万4990円~(編集部調べ)と、昨今各メーカーが発売する『高級ヘッドフォン』に属する。音質もノイズキャンセリングの性能も素晴らしいのだが、Dysonはなぜ今『OnTrac』をリリースしたのか? 技術責任者のJake Dyson氏に聞いた。

『ヘッドフォン難聴』が発生することが明らかになってきた

WHO(世界保険機関)は、80dBで1週間当たり40時間以上、98dBで1週間当たり75分以上聞き続けると、難聴の危険があるとしている。また、100dB以上の大音量では急に難聴が生じることもあるのだという。再生機器にもよるが、ヘッドフォンの最大音量はだいたい100~120dB。明らかに危険な音量だ。

電車に乗っていると、明らかに音漏れするほど大音量で聞いている人がいるが、将来難聴になる危険があるということだ。電車の音や、周囲の騒音に負けないように大音量で聞きたいという気持ちはわかるが、抑制した方がいい。

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OnTracを発表会ステージで掲げるJake Dyson氏

Dysonの新製品『OnTrac』

Dysonは常に社会課題を解決する製品を作ってきた。前作であるDyson Zoneは空気清浄機付きのヘッドフォンということで話題になったが、この空気清浄機のモーター音を感じさせないためのノイズキャンセリング技術は非常に優秀であった。

コロナ禍がほぼ終息した今となっては、この空気清浄機の部分はなくてもいいから、この優秀なノイズキャンセリング技術を使ったヘッドフォンが欲しい……という声が出たのかもしれない。

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周囲の騒音を打ち消すことができれば、大きなボリュームにしなくても音楽を楽しむことができる。大音量の音楽が若者の耳に与えるダメージを抑えることができる。いわば、新製品『OnTrac』は若者への耳へのダメージを抑えるために作られたヘッドフォンなのではないかと思う。

『OnTrac』は、掃除機やファンの開発を通じて同社が培ってきた『空気』に関するノウハウを活用していて、優れたノイズキャンセリング能力と、上質なオーディオ体験を両立している。

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さらに、OnTracのスマホアプリには、耳に入る音量をモニタリングして、有害な音量になると通知をしてくれる機能がある。

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もちろん、OnTracの価値はそれだけではない。前モデルDyson Zoneの機能を引き継ぎ、多くのヘッドフォンをしのぐ6Hzから21kHzのサウンドレンジを持ち、最長55時間ものバッテリーライフを持ち、そして本体、イヤークッション、アウターキャップの色を変更することで、オリジナリティあふれるデザインを作り出すことができる。

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OnTracは『Dysonらしい製品』なのか?

しかしながら……製品コンセプトまで遡って考えると、このOnTracは本当に『Dysonらしい製品』なのかは少し疑問が残る。創業者のJames Dyson氏は、他社が見逃す課題をアイデアとエンジニアリングで解決してきた。

たとえば『フィルター式の掃除機は吸引力が落ちる』という課題に、サイクロン式という画期的メカニズムを開発して『吸引力の落ちない掃除機』を産み出した。『扇風機の羽根が危険』という課題を解決するために『羽根を持たない扇風機』を作り出した。これらは真の技術的な革命だった。

では、Dyson OnTracは、革命的製品なのだろうか? たしかに、Dysonのコア技術である『空気に関するテクノロジー』は生きている。掃除機でも、ファンでも、そこで使われるモーターは騒音源で、その音をいかに抑制するかということは、ずっとDysonの技術的テーマだったという。

しかし、『ノイズキャンセリング技術を搭載したヘッドフォン』というのはすでに他社からも販売されているし、Dyson OnTracでないといけない技術的理由は存在しない。

製品に秘められたテーマ性は確かなものなのか?

OnTracの発表会で、現在のDysonの技術責任者であり、James Dyson氏の息子であるJake Dyson氏に直接話をする機会が得られたので、そのことを質問してみた。

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OnTracを発表会ステージで掲げるJake Dyson氏Jake Dyson(ジェイク・ダイソン)。セントラル セント マーチンズ カレッジ オブ アート アンド デザインでインダストリアルデザインを学び、LEDテクノロジーに着目し、大学卒業後、2004年他に2人のデザインエンジニアと共にチームを編成、LEDの主要な問題点を解決する技術開発に従事。2015年にダイソンの傘下に入り、現在はダイソンの研究開発ディレクターを務めるとともに取締役も務める。

すると「OnTracには非常に優れたノイズキャンセリング技術が搭載されています。これを実現するために、ハードウェア、ソフトウェア的に多くのチャレンジが必要でした。また、イヤークッションやアウターキャップを交換可能にすることで、ユーザーの個性を発揮することができるのです」と少し的をズラした回答が返ってきた。

OnTracのカラーのプリセットのひとつとしてクリームイエローのイヤークッションに、グレーとメタリックを組み合わせた本体カラーのモデルがある。これはJake Dyson氏によると、SONYの極初期のWalkman(おそらく海外で人気を博した2代目のWM-2)をイメージしたものだそうだ。

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現在、52歳のJake Dyson氏も、まさにWalkmanとともに青春を送った世代で、このカラーリングはWalkmanに対するオマージュだということだ。つまり、まさに『若い時から音楽を聞き続けてきた最初の世代』のひとりだ。

OnTracは『ヘッドフォンを使い続けて難聴になるかもしれない』という社会課題を捉えた製品だと思う。しかし、限られた時間でのJake Dyson氏へのインタビューでは、彼自身がそう考えているのかは掴み切れなかった。

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技術説明を読むと、音響設備も緻密な設計がされており、単に周囲の音を抑制するためだけにノイズキャンセリングが使われているのではなく、疲れずに良い音を体験するために、さまざまな試行錯誤が行われていたらしい。また、本体の 重量バランス、頭部へのホールド感などにおいてもさまざまな工夫がされているとのこと。

魅力のひとつである、イヤークッションやアウターキャップを交換可能にしている仕組みも、実施に触ってみると、とても簡単に交換できて、しかもしっかりと固定できるようになっている。アウターキャップはなんとわずか0.6mmのアルミニウム製のプレス素材に、高精度な加工を施して完成されているという。

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ジェイク氏のインタビューでは、この製品の『核心』を掴み切れなかった感じはしたが、次に会う時には、ぜひどの部分にDysonらしい技術が込められているのか、確かめたいと思う。

@beyondmag カラーカスタマイズできるヘッドホンDyson OnTracが登場🌈 #beyondmag #dyson #ダイソン #家電紹介 #ヘッドホン ♬ Burger Queen - [Alexandros]

Author : 村上タクタ
photo:下城英悟

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編集者・ライター
村上 琢太

趣味の雑誌を30年間約600冊ほど作ってきた編集者・ライター。バイク雑誌『ライダースクラブ』で仕事を始め、ラジコン飛行機雑誌『RCエアワールド』、海水魚とサンゴ飼育の雑誌『コーラルフィッシュ』、デジタルガジェットの本『flick!』の編集長を務めた後退職。現在フリーランスの編集者・ライター。HHKBエバンジェリスト、ScanSnapアンバサダー。バイク、クルマ、旅、キャンプ、絵画、日本酒、ワインと家族を愛する2児の父。
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