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chelmico・Mamiko×シソンヌ・長谷川忍

“先輩じゃなくて友達”な関係っていいね

author: 山梨幸輝date: 2024/03/09

「さっき近くのコンビニでばったり遭遇して。そのまま一緒に来ちゃいました」。

和やかに話しながら取材現場に現れたのは、ラップユニット・chelmicoのMamikoさんと、お笑いコンビ・シソンヌの長谷川忍さん(以降、長谷川さん)だ。

Mamikoさんは1996年生まれで、長谷川さんは1978年生まれ。18年分の歳の差があっても、二人は親友。フラットだけどリスペクトも欠かさない絶妙な温度感の会話を聞いていると、「歳の離れた友達っていいな」と心の底から思えてくる。

二人の関係はどのように築かれていったのだろうか。歳の離れた友人関係を続ける上で意識していることは? 大人になってから友達はどう作ればいい? さまざまなテーマをもとにざっくばらんに語り合ってもらった。

「誰よりもリスペクトがあった」。気の置けない二人の出会い

Mamiko

1996年東京都生まれ。2014年に友人のRachelとラップユニット・chelmicoを結成。 2017年からは鈴木真海子でソロ活動もスタートする。趣味はラジオとお笑い。
Instagram:@______mmk______
HP:http://chelmico.com/

長谷川忍

1978年、静岡県生まれ。2006年にじろうとお笑いコンビ・シソンヌを結成。『キングオブコント2014』で優勝。俳優としてドラマ『正直不動産2』(NHK系)などにも出演する。趣味はヒップホップとファッション。
Instagram:@sissonne_hasegawa
X:@hasemadgawa

──以前、Mamikoさんがラジオで長谷川さんのことをお話されたときに、“しのぶ”とフランクに呼んでいたのが印象的でした。二人が仲良くなったきっかけはなんですか?

長谷川さん:Mamikoとユニットを組んでいるRachelが僕の嫁さんと仲がよかったんです。それこそ、chelmicoが結成される2014年よりも前からですね。

Mamikoさん:私はまだ17歳でギリ高校生のときで。Rachelが「会わせたい人がいる」って言ってしのぶの家に連れていってくれたんだよね。

長谷川さん:Rachelが急にちっちゃい子どもを連れてきたと(笑)。最初は何を話したらいいか分からなかったんですけど、無礼じゃないし、つまらなそうにしないし、大人から見てもちょうどいい温度感だったんですよね。

Mamikoさん:もともと私がお笑い好きで、シソンヌのコントを「ヨシモト∞ホール」でみたこともあったしね。だから最初は「あの長谷川さんだ!」と思った。

長谷川さん:芸人に対してのリスペクトが誰よりもあったんですよ。最初は部活みたいに“うっす”って感じで挨拶もしてくれて。でもいつの間にかやらなくなったね。どこかで“うるせえ親父”って思われたのかな(笑)。

Mamikoさん:初めて会った時から「この人は舞台上じゃなくてもすげえ喋るな」とは思ってたけどね。

長谷川さん:それから僕の家でバラエティ番組観ながらワーワー言ったりしてたんです。シソンヌがあまりテレビに出られなかった頃だったから、何をするでもなく頻繁に集まっていて。その1年後にリニューアル前の渋谷PARCOのイベントでRachelが出し物をすることになったんだよね。

Mamikoさん:「シブカル祭。」だよね。

長谷川さん:そう、それでRachelがMamikoと一緒にラップをするって言い出して。俺は昔からヒップホップ大好きだから「いやいやナメるなよ」と(笑)。「お前たちはラッパーのことを何も知らない!」と二人を家に呼び出してYouTubeで動画をひたすら見せて。

Mamikoさん:あの時間は本当に長かった! 「もういいよそれ、帰りたい」ってRachelと文句言ってて。途中から勝手に『アデル、ブルーは熱い色』とか見てた。

長谷川さん:そのときにEMINEMのTシャツをあげたの覚えてる?

Mamikoさん:覚えてるよ! 『シブカル祭。』の時にもそれを着てステージに上がったよね。

長谷川さん:そうそう。それが“ただの鈴木真海子”が“MC Mamiko”になるまでの話です。今となってはスーパースターの道をどんどん駆け上がってるんだからすごいよね。

Mamikoさん:いやいやそっちの方がすごい。今となってはテレビ点けたらしのぶだから!

長谷川さん:それは言い過ぎ(笑)。

“憧れ”と“人生の先輩” お互いが抱く今の印象

──今のお互いの印象を一言で表すと?

長谷川さん:“僕のコンプレックス”ですね。東京生まれだし、気合入ってないのになんかお洒落で。“友達に呼ばれてなんとなくテレビ出たら売れちゃった”タイプの芸能人のラインにいるんですよね。

Mamikoさん:全然そんなことないよ!

長谷川さん:例えば僕の場合は古着屋さん行っても「いつの時代のもので」「ブランドがどこで」とかあれこれ考えるんですよ。でも、Mamikoは服を選ぶときフィーリングだろ?

Mamikoさん:うん。

長谷川さん:ほら出た! 静岡出身の僕からするとそういうところがカッコよく見えるんですよ。ある時僕の家に一人で遊びにきた時なんて、お土産として生のニンニクを6個くらいビニール袋に入れてきたんですよ。

Mamikoさん:なんか家にあったから持ってこうと思ったんだよね。

長谷川さん:そういう肩肘張らない感じが悔しいんですよね。僕がそれくらいの歳なら普通に『コージーコーナー』とかで買っちゃう。なろうとしてもなれない人生なんです。

Mamikoさん:憧れてるんだ、私に?(笑) 私から見たしのぶの印象は“気の良いお兄ちゃん”ですね。なんでも知ってていろいろなことを教えてくれるんですよ。それに、とにかく趣味が合う。映画や音楽の話もRachelと3人でよくするよね。昔の音楽はよくしのぶに教えてもらってますよ。

長谷川さん:逆に最新の音楽は大体Mamikoに教えてもらってますね。おすすめのプレイリストを紹介してくれるんですよ。

Mamikoさん:しのぶとは過去と未来の情報交換をしているんです。

飾らず真っ直ぐ向き合える。“年の差友達”ならではの心地よさ

──年が離れた友達で良かったことはありますか?

Mamikoさん:相手がしのぶだからかもしれないけど、何か言われても「うるさい!」って言い返したりとか、素直に感情をぶつけられるのは年が離れているからかもしれないです。

長谷川さん:俺もそれに対して“親心”で接せるしね。もし同じ年だったら「なんでMamikoは自由にやってても全部上手くいってるんだ! こっちは真面目にお笑いやってるのに」とか嫉妬したり説教したりしていたかもしれない。

Mamikoさん:趣味が合うから同じ年でも仲良くなれたと思うけど、ギクシャクする瞬間は多かっただろうな。

長谷川さん:仲良くなったり離れたりが激しくて「今はどっちのタイミングだろう?」って周りの人に迷惑をかけていたかもしれないですね。

Mamikoさん:最初からお互いを100%“受け入れモード”でいられたのは年が離れていたからかもしれないね。

長谷川さん:それこそ最初、Mamikoは“子ども”だったから!

Mamikoさん:何回言うの、それ(笑)。

「ツッコミが役立つ」。長谷川さん流・関係深めるテクニック

──歳が離れた友達と接する時に意識していることはありますか?

Mamikoさん:最初はもちろんリスペクトがありますけど、少しずつグラデーションで距離感を詰めるかもしれません。3回に1回タメ口を挟んでみるようなイメージです。

長谷川さん:多分聞く相手を間違えてますよ! 僕からするとグラデーションで距離詰められた自覚がないですから。Mamikoはいつの間にか相手の懐に入るのが上手いんですよ。しかも普通ならガツガツいかないと仲良くなれない距離感になれる。才能だと思いますよ。

Mamikoさん:しのぶが先輩と遊ぶときはどうしてるの?

長谷川さん:スタイリストの山本康一郎さんがよく気にかけてくれてるけど、リスペクトがあるからガンガンはいけないですね。

Mamikoさん:ガンガンいける人は逆にいる?

長谷川さん:うーん、芸人の先輩で何人か思い浮かぶな。もちろん最低限のリスペクトを持った上で、ちょっとナメてるからガツガツいけるところはある(笑)。あれ、ということはMamikoも俺のことナメてる?

Mamikoさん:あはははは。ナメてないよ!

長谷川さん:まあそれは確かにそうなんだよね。Mamikoは芸人のことちゃんとリスペクトしているから失礼なフリとかイジりは絶対しない。そもそも相手の気分が悪くなるようなことを人生でしたことがないのでは?  というくらい誠実ですね。年上と仲良くなれるのもそういう理由かもしれないです。

──長谷川さんが年下と接する時に意識していることはありますか?

長谷川さん:フラットなだけでなく、“おじさんパワハラ”みたいにならないように意識もしていますね。自分の話ばっかりしちゃうのもよくないので、相手の土俵で話すことも多いです。あとはツッコミってコミュニケーションを取る上で役立つんですよ。

Mamikoさん:そうなの?

長谷川さん:一緒にいる時間が長くなってくると、気を許した瞬間に変なボケが一つくらい出てくるんだよね。それをすかさずツッコむ。そうするとコミュニケーションが一段階深まる。相手にとっても“ボケていいよ”というフリになるしね。もちろんこれは僕がツッコミ担当だからやりやすいことだけど、そうじゃない人でも、ツッコミっぽいリアクションをとってあげるだけでもいいと思う。

Mamikoさん:相手の話をちゃんと拾ってあげるっていうことかな。聞き上手でいた方が絶対にコミュニケーションはうまくいきやすいよね。しのぶはどんと構えていて、なんでも拾ってくれるから話しやすいよ。

持つべきは“好きオーラ”とサービス精神。大人の友達の作り方

──大人になると友達を作るのが難しいという話をよく聞きます。お二人は交友関係を広げる上でどのようなことを意識していますか?

Mamikoさん:うーん、そもそもの話だけど、しのぶはどの距離感から友達とカウントしてる?

長谷川さん:家に何度か遊びにくるようになってからかな。例えば現場で一緒だった人と「ご飯行こう」という話になって「うちの奥さんの手料理でよかったら食べにこない?」と言ってみる。それでリピーターになってくれたら友達。

Mamikoさん:奥さんとも友達になれそうな人を選んでる?

長谷川さん:誰とでも友達になれるタイプだから、そこはあまり意識していないかな。家に来ても面倒くさくなさそうな人は選んでいるかも。

Mamikoさん:そうなんだ。しのぶの話を聞いていると「うちに来ていいよ」っていうオープンな姿勢も友達を作る上で大事なのかもしれないね。

長谷川さん:Mamikoがさっき言った“どっしりしてる”っていうのはある意味そういうことでもあるかも。確かに自分から距離を詰めるよりは相手の自主性に委ねちゃうな。

Mamikoさん:誘ってもらうために意識してることってある?

長谷川さん:昔とある番組で初めて千鳥の大悟さんとご一緒した時、収録終わりに「お疲れさまです」と挨拶したら「飲み行くか?」って言ってくれて。後から本人に聞いたら、どうやら俺が全然楽屋から出ないし、“大悟さんと飲みにいきたいオーラ”を放ちまくっていたみたいなんだよね。もともと大好きだったからプライベートで話してみたかったんだけど、それが端々から滲んでたみたいで。好きな人には好きっていう素直な雰囲気でいた方が誘ってもらいやすいと思う。Mamikoはどうやって友達作ってるの?

Mamikoさん:やっぱり何回も会う機会がある人と仲良くなることは多いな。仕事繋がりだったり、後はまつ毛パーマしてくれる人とはご飯に行くよ。

長谷川さん:僕が思うのは、Mamikoって基本的に断らないんですよ。誘われたらスケジュール合えば絶対に一回は行くでしょ?

Mamikoさん:いくいく!

長谷川さん:僕の場合は二人きりだとしんどいから誰か誘おうかなとか、断っちゃおうかなとか思っちゃう。でもMamikoは「なんか面白いことありそうだな」って顔出せる。フットワークが軽いから友達ができやすいんです。

Mamikoさん:人に興味あるのかもしれないな。

長谷川さん:あと今日思ったのは、“ゲラ”な方が絶対に人が寄ってきますよね。同じ話題でも、リアクションが薄い人よりたくさん笑ってくれるMamikoの方が話したくなるじゃないですか。これは笑えってことじゃなくて「マジで!?」とか「どういうこと?」って前のめりになるのでも良くて。そんなサービス精神が交流を深める上で大事なのかもしれないです。

「カッコいいこと、全部やって」。お互いに一言メッセージ

──最後に、長谷川さんからMamikoさんに一言メッセージをお願いします。

長谷川さん:もうこのまま突き進んで欲しいなと。僕と嫁さんの中でMamikoはこうであってほしいっていう勝手な“ブランディング”があるんです。

Mamikoさん:どうなったら駄目なの?

長谷川さん:音楽に関しては好き勝手やって欲しいけど、急にチャラいトーク番組に出たり化粧水のプロデュースとか始めたら「おい、Mamiko大丈夫か?」って電話する(笑)。その点ではバラエティ一発目で『タモリ倶楽部』に出られたのは“大正解”!

Mamikoさん:それならよかった! これからも間違えそうだったら言ってね。

長谷川さん:Mamikoはずっと俺と嫁さんの好きなMamikoでいてくれてるから、これから先もきっと大丈夫だよ。俺ができなかったカッコいいこと全部やり抜いてください。

──Mamikoさんから長谷川さんに対してはどうですか?

Mamikoさん:うーん……、また家に遊びに行くね!

長谷川さん:今の受け答えも“大正解”です。

Edit&Text:山梨幸輝
Photo:是永日和

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編集者/ライター。大学時代にファッションブランド・writtenafterwardsでのインターンを経験し、卒業後にフリーランスとして活動を開始。雑誌やWEBメディアでの執筆や編集、ブランドのカタログ制作などを行う。
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