みなさま、ごきげんよう。私はイシヅカユウ。モデルや俳優をしながらカロリーの高いPodcastを配信し、それはそれは陽気な日々を送っています。
唐突ですが、わたくし、豹柄のコートにずっと憧れていたのです。そんじょそこらのじゃあいけません。私の、私だけの豹柄コートでなくては。そうして何年ものさすらいの末、疲れ果てて最後の望みを賭けボロボロの体と心を引きずり入った(嘘。実際は予定が早く終わってウキウキしながら上野まで散歩して行きました)上野の古着屋さんでやっと見つけたのが私の2023年ベストバイ、この豹柄のツギハギコートです。

イシヅカユウ
静岡県浜松市生まれ。ファッションモデル・俳優として、ファッションショー、CM、映画、ドラマなどさまざまな分野で活動。
X:@ishizukayu
Instagram:@yu_ishizuka
モデル&俳優・イシヅカユウのBEST BUY 2023
古着で買った豹柄のツギハギコート

まずご覧ください、このツギハギの美しさ。まるでフランケンシュタイン博士の拵(こしら)えた怪物のよう。それでいて、豹柄のアイテムになくてはならないそこはかとない気品を感じる絶妙な形。
ツギハギなので、場所によって色が濃かったり薄かったりして、それもまた一筋縄では行かない面白さを醸し出しています。

近くで見るとこんな感じ。ランダムにツギハギされているのがわかりますね。なんて愛おしいのでしょう、この歪さ。
余り布をツギハギしたのでしょうか。いくらツギハギとはいえど、ここまでグニャグニャなことってなかなか無いんじゃないかと思います。雑に見えますが、この小さな端切れを一枚一枚継いでいったことを思うと職人の手仕事の繊細さまで感じることができます。その結果出来たランダムな影は、ある種の気品をこの豹柄に纏わせていると私は思うのです。

重い生地をツギハギしているせいか、経年劣化もありところどころ縫い目が裂けてしまっています。だけど私はこれを繕いながら着ていくのがとても楽しみになっているのです。なんて手がかかるコートなんでしょう。可愛い。
私の主張の強い服の中にも全く紛れることなく存在をアピールできるところも好きです。


最初にも書いたように、私はずっと豹柄のコートを探していました。いえ、厳密に言うと、実は今でも頭の中にある理想の豹柄のコートを探し続けています。
え? このコートは理想じゃないの? と思いましたよね。そう、このコートは私の理想のコートではないのです。私が探している豹柄のコートは、ファー素材で、クラシカルでエレガントで、だけどそこはかとなく強そうで、1960年代の香りを纏ったような、例えばイーディ・セジウィックが黒いタイツ姿の上に羽織っていそうな、あるいはブリジット・バルドーが着て、グローブで決めていそうな、そんなもの。
このつぎはぎコートは似ても似つかない。だけどどうしようもなく愛おしく、破れてしまっているつぎはぎ部分を自ら修理しながらずっと着てあげたい。まだ買ってそんなに月日は経っていないのに、そんな気持ちになっている私がいます。

だから古着を着るのも、古着屋さんに足を運ぶのもやめられないのです。かつてどんな人がこれを着て、どんなところに行って、そしてどんな風に愛していたのか。そしてこれからこの服はどんな風に愛されていくのか。どう愛そうか。どこに着ていこうか。そうやって服があり続ける限り、それを着た人の気持ちも残ってゆく気がするのです。
少々ロマンチックが過ぎるかもしれないけれど、そんな風に思わずにいられない、私の2023年ベストバイアイテムなのでした。