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"I’m from Japan"は「私は日本人」ではない

自分が「外国人」になって初めて気づいた人種に対する認識のズレ

author: 冨田里奈date: 2023/05/01

街中や電車のなかで、見た目が「外国人」な人を見かけたとき、思わずチラ見してしまったり、この人はどこの国の人かな? なんて考えてしまうことがある。それは特に差別的な意味ではなく、単なる興味によるものだ。でも、留学を始めてからはそれが「日本人特有の行為」であることを知った。アメリカ国内でも特に多様性が高いと言われているサンノゼでの生活で気がついた、日本人とアメリカ人の人種に対する考え方の違いについて話していく。

自分の目で確かめた「人種のサラダボウル」

私が生活をしているサンノゼはベイエリアと呼ばれる地域に位置しており、アメリカのなかでも特に多様性が高いエリアとして有名だ。アジア系、インド系、ヒスパニック系など、非常に多様な人種の人々が生活している。

私が所属しているKPOPダンスサークルも、8割ほどのメンバーがアジア系アメリカ人だ。このサークルに出会うまでの私は、自分が「外国人」であることの意識が強く、「外から来た者」として自己紹介をしていたのだが、彼らと初めて会話を交わしたときにこの意識が覆された。

彼らはわざわざ出身について聞いてきたりはしなかったため、自ら日本の留学生であることを伝えるまで私はアメリカ人だと思われていたらしい。それほど当たり前に多様な人種の人々がここで生活をしているということである。教科書で学んだ「人種のサラダボウル」は私にとって大きなカルチャーショックだった。

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"I’m from Japan"は「私は日本人」ではない

昨年から留学を始めた私にとって、新たな出会いは多く、もちろんそのたびに自己紹介が伴う。何十回もの自己紹介を通して、日本人がいかに「国籍」と「人種・民族」を混同しているかに気がついた。

サークルの友達は、見た目が中国人や韓国人、ベトナム人のようでも、みな「アメリカ人」であることに変わりはない。アメリカに来たばかりのとき、私はそんな彼らのルーツがどこにあるのか、両親はどこの国の出身なのかが気になって仕方がなかった。

例えば、日本でハーフの子と出会ったとき、その子はどの国とどの国のハーフなのか気になってしまう感覚と似ている。多様性に富んでいるサンノゼには、人種や民族を尋ねるという概念はあまり存在しない。

どのような見た目であろうとアメリカで生まれ育ったならアメリカ人、それだけなのだ。「I’m from Japan」を無意識のうちに「私は日本人です」という意味合いで使っていたけれど、これはあくまでも「日本」という場所で生まれ育ったことを伝える言葉にすぎない。出身と人種、国籍は常に同一とは限らないという当たり前のことに今更気づかされた。

アメリカ国内でも地域差が大きい多様性

多様な人種に対して寛容なカルチャーはアメリカ全土で言えるものなのかどうかを確かめるために、サンノゼで生活している学生らにインタビューをしてみた。

カリフォルニア出身(国籍はアメリカ)
父親:カリフォルニア出身 母親:エルサルバドル共和国出身

「生まれた場所がとてもグローバルなところだったし、自分自身も一見白人だけれども人種としては、ラティーノ(ラテンアメリカ諸国にルーツをもつアメリカ人)だから他人の人種はまったく気にならないね。

人種について聞くことは失礼だとは思わないけど、南部と中部のアメリカではもっと差別があると思う。カリフォルニアでもまだ差別は存在するけどすごく少ないんじゃないかな」

 サンノゼ出身(アメリカ国籍)
父親:ニューヨーク出身 母親:カリフォルニア出身

「地元はアジア系の人口がとても多く、そのほかにもヒスパニックやインド人なども多くてインターナショナルな場所だったから、他人の人種や民族について気にならないわ。

でも、人種について、勉強や大学のために聞くのなら問題ないけども、人種について普段聞くのは失礼にあたることもあると思う」

スリランカ出身(スリランカ国籍)
両親:スリランカ出身

「サンノゼでは差別を感じたことはないわ。でも、高校生から(2年前)からアメリカで生活しているけど、そのときは差別があったの……。

サンノゼは多様な人種の人が生活しているから、バックグラウンドについて気にならないし、初めてここに来たときはとてもいい場所だと思ったわ」

アメリカ出身(フィリピン系アメリカ人)
母親:マニラ出身

「アメリカ国内でも、場所によって差別があるかどうかは変わると思うけど、ここはとてもアジア系の人口が多いから、サンノゼにくることができてラッキーだったと思う。正直、僕自身も外見がアメリカ人っぽくない人と会ったときは、どこ出身なのか単純に興味があるし気になるね。

人種を聞かれたことはあるけど、たいてい聞いてくるのは、中国人か韓国人か日本人。だから、人種に関しては、『誰に聞くか』『誰が聞くか』によって失礼にあたるかも変わってくるんじゃないかな」

「知っておくこと」の大切さ

日本は、ほとんどの国民が国籍、人種、民族、使用言語が単一という稀有な国であることをアメリカに来て知った。多様な人種の人々が同じ場所で生活する環境は、アメリカが決して珍しいわけではなく、むしろ世界ではこれが普通である。

日本はほぼ単一民族の国家であるため差別はほとんどないとしばしば言われているのを耳にする。実際それは正しいとは思うが、私のように違う人種の人を無意識のうちに「区別」してしまう日本人は多いと思う。それは生まれ育った環境によってそうなったものであり、どっちが悪いという話ではない。

ただ、世界には多様性を尊重しながらさまざまな人が当たり前に生活していること、そのような価値観があるということを知っておくことは大切だと学んだ。

インタビューで、ある学生が「人種について聞くのは失礼にあたると思う」と話した。アメリカでは、出身地のほかに、わざわざ人種や祖先のルーツなどを聞くことは失礼とされることもある。何も知らなければ、悪気なく相手に不快な思いをさせる可能性がある。自分たちの価値観や考え方が世界共通ではないということを知っておくことが大切だと感じた。

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(株)imago ジュニアコンサルタント/Z世代市場リサーチャー&アナリスト
冨田里奈

2019年に(株)imagoに参加。九州大学内でさまざまな実証実験の運営を経験したのち、現在は企業向けコンサルティングに従事。主にZ世代のもつ金銭感覚や価値観についてリサーチをするほか、様々なサービスにおけるUXデザインの評価分析も行う。2022年夏からはアメリカで留学を開始し、日本と海外におけるZ世代の価値観の違いについて自分の実体験をベースに客観的に分析中。
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