2021年の箱根駅伝、学生ランナーたちの足元はナイキ一色だった。そのシェア率はなんと95.7%、驚異的な数字だ。2017年6月に登場以来、世界のトップランナーたちから支持を集めているナイキの厚底ランニングシューズは何がすごいのか? その変遷を追って紹介していこう。
結果が出るから、トップランナーに選ばれる
2021年4月、ナイキの新しい厚底ランニングシューズ「ナイキ ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト% 2」が発売された。体重移動をスムーズにするカーボンプレート、反発性に優れた軽量のミッドソール素材であるズームエックス フォームを組み合わせたソールユニットは前作を踏襲。アスリートからのフィードバックを受け、アッパー素材は柔軟で通気性に優れたエンジニアードメッシュに変更され、前足部に補強を加えることで耐久性が向上。シューレースは解けにくいデザインになった。
2019年4月にイギリス・ロンドンで発表されたのが、前作「ナイキ ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%」。“トップ選手のレースシューズ=カーボンプレート搭載の厚底シューズ”という図式を決定的なものにしたモデルだ。
お披露目レースとなった2019年4月のロンドンマラソンでは、エリウド・キプチョゲ選手がコースレコードとなる2時間2分37秒で優勝。シューズのポテンシャルの高さを早々に証明した。そして、ロンドンマラソンのおよそ5か月後に日本で開催されたレースで、ナイキの厚底はそこまで凄いのかと驚かされることになる。
箱根路を彩ったナイキの蛍光色
2019年9月、東京五輪のマラソン日本代表選考レースMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)。出場した男子選手30名のうち、「ヴェイパーフライ ネクスト%」を選択したのはなんと16名。このレースで五輪への切符を獲得した中村匠吾選手、服部勇馬選手を含むトップ10のうち8人が同シューズを着用していた。レースを現地やテレビで観戦していた人ならば、上位選手のシューズがピンク一色だったことを覚えているのではないだろうか。
正月の風物詩、箱根駅伝でも「ヴェイパーフライ ネクスト%」は圧倒的な存在感を放った。2020年の第96回大会は、出場210名のうち、84.3%の選手がナイキの厚底シューズを選択。10区間中7区間(2、3、4、5、6、7、10区)で区間新が生まれた超高速レースで、区間賞を獲った10人のうち9人がナイキの厚底を着用。MGCを席巻したピンク、ロンドンマラソンでキプチョゲ選手が履いたグリーン、EKIDEN PACKと名付けられたオレンジ×グリーンの「ヴェイパーフライ ネクスト%」が箱根路を彩った。
記録更新の足元には、いつもナイキの厚底
そして2020年3月には、最速の厚底シューズとして「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%」が登場する。2019年10月に非公式のレースながらキプチョゲ選手が人類初のフルマラソン2時間切りを達成した際に履いていたのは、このプロトタイプだ。
「アルファフライ」の大きな特徴は、前足部に搭載された2つのナイキ ズームエア ポッド。このナイキ ズームエアポッドとカーボンファイバープレート、ズームエックスフォームの組み合わせで、抜群のエネルギーリターン効率を実現している。2020年3月に当時のマラソン日本記録を更新した大迫傑選手も、今年3月にその記録を塗り替えた鈴木健吾選手も「アルファフライ」を着用。「アルファフライ」が記録更新をサポートした。
では皆が皆「アルファフライ」を履くようになったかというと、そういうわけでもない。例えば、ナイキのシェア率が95.7%という驚異的な数字だった2021年の箱根駅伝。「アルファフライ」を着用したのが90人だったのに対し、「ヴェイパーフライ ネクスト%」を選んだのは111人。選択が二分している。
また鈴木健吾選手が日本新記録で優勝した3月のびわ湖毎日マラソンでは、2位の土方英和選手、3位の細谷恭平選手、4位の井上大仁選手、5位の小椋裕介選手が「ヴェイパーフライ ネクスト%」を選択。同じく3月に開催された名古屋ウィメンズマラソンでは、優勝した松田瑞生選手は「アルファフライ」を、2位の佐藤早也加選手は「ヴェイパーフライ ネクスト%」を着用していた。ちなみに、1月の大阪国際女子マラソンで、大会記録で優勝した一山麻緒選手が履いていたのは「アルファフライ」だ。
「ヴェイパーフライ ネクスト%」を愛用している選手たちにとっては、正統の後継モデルである「2」の登場は朗報だろう。そして「アルファフライ」か「ヴェイパーフライ ネクスト% 2」か、という二択はもうしばらく続きそうだ。
ファンランナーにおすすめの厚底は「ペガサス38」
「アルファフライ」や「ヴェイパーフライ ネクスト% 2」は、中級者、上級者のレース向けのシューズ。ビギナーランナーや、健康維持・ダイエット目的で走るランナーに適していて、ナイキの厚底の魅力を感じられるのは4月に発売された「ナイキ エア ズーム ペガサス38」ではないだろうか。
前作「ペガサス37」で高評価を得ていたソール部分はそのまま。前足部に反発性に優れたズーム エア ユニットを搭載し、スムーズな足運びをサポートしてくれる。アッパーは柔らかく通気性の高いサンドウィッチ構造のメッシュ素材を採用。フカフカとした快適なフィット感が得られる。
MGCでは「ヴェイパーフライ ネクスト%」を着用して優勝した中村匠吾選手もトレーニングで「ペガサス38」を愛用しているという。
「もともと反発力のあるシューズを好んでいて、ペガサスシリーズは7年近く愛用してきました。ペガサス38は、シューレースを締めたときのフィット感、走っているときの安定感が上がったなと感じています。今はマラソン中心のトレーニングなので、20km以上の距離を1km4分~3分30秒のペースで走る際に使うことが多いです。合宿には必ず持参するシューズの1つですね」
エリートランナーがジョグや距離走(といっても一般ランナーからすればかなりのハイスピード!)で愛用しているシューズならば、信頼性は間違いない。運動不足解消のためにランニングを始めようかと検討しているならば、ぜひ「ペガサス38」に一度足を通してみてほしい。