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日本未発売「Ray-Ban Stories」自腹レビュー

Facebookスマートグラスは、キモズム超えの夢をみるか?

author: GOROmandate: 2022/02/14

大学2年の頃だったろうか、ノートパソコンを買った。シャープのMebius MN-7250。定価は65万円。その頃アルバイトで働いていたコンビニの時給は650円。単純計算で1,000時間分だ。

しかし、「これからはインターネットとWindowsの時代!」と己に喝を入れ、勝負を賭けた。漢の3年ローン。15,700円の36回払いである。覚悟完了! 最初から片足を水に突っ込んだ背水の陣である。

1996年当時、講義中にノートパソコン(しかも重量3.6kgもある……)を持ち込んでいる人など誰もいない。自分だけだ。周りから異質なモノを見られる視線がイタイ。「え?なにあれ??」コソコソ声が聞こえる(気がする)。今では考えられないが、ある種キモいのである。

36回払いで買った65万円のノートパソコンだが、覚悟を決めてWindowsプログラミングを学び、シェアウェア(有料アプリ)をつくって販売。これがヒットし、ノートパソコン4台分の資金が一気に手に入った。コンビニのバイトは辞めた。

キモズム理論

パソコンはキモかった。異論は認める。が、少なくともモテアイテムではなかった。当然ファッション誌に特集も組まれることも無かった。それこそアンアンで「今年の夏はパソコンでキメる!」みたいな号は見てみたかったが。

逆に現代はどうか? スタバでMacBook Airを机の上に広げてドヤれる時代である。

むしろ、「ワタシ、チョット仕事デキル」気分である。

イメージやデザインの重要性である。得体の知れないキモいものは普及しない。江戸時代に「写真機(カメラ)に魂を吸われる!」と恐れられたのもイメージ(妄想)だ。

キモいものは、「キャズム」ならぬ「キモズム」の谷に落ちていってしまう。普及するにはこの谷を越えなければならない。

ガジェットがガジェットでなくなる日

経験上、ガジェットが一般に普及するには秘訣がある。まずは単純に便利だったり、生活を変えることだが、それだけでは普及しない。

普及のためのキーワードはデザインが、

  • クール
  • オシャレ
  • カワイイ

であること。なんとなく一言で言えば「モテそうか?」どうかだ。とにかくイメージは大切だ。

スマグラでキモズムを越えろ!

さて、やっと本題だ。今日紹介したいのは、Facebookとレイバンが組んだスマートグラスその名も「Stories」である。*日本未発売だが、今回入手することが出来たのでレビューしたい。スマートグラスというとレンズに情報が映るようなARグラスをイメージすると思うが、この「Stories」に表示機能は一切無い。(*総務省の技適未取得機器を用いた実験等の特例制度を利用して検証しています)

尚、Twitterでは国内販売を示唆するようなツイートもあった。

まず、デザインに驚く。ぱっと見はサングラスやメガネだ。これをみて「ガジェット」だと思う人はほぼ居ないだろう。キモくない。むしろデザインがクールな気がする。デザインは3種類から選べ、色も複数種類ある。レンズもクリアなレンズから、サングラス、偏光タイプと色々チョイスが可能だ。

充電は付属ケースで行う

ターゲットはインスタグラマー?

特徴は、左右に配置された2つのカメラだ。このカメラとマイクで自分の視界と音をそのまま記録できる。両手がフリーになる。この両手がフリーというのが良い。自分の作業をそのまま記録できる。むしろ、今までスマホを手に持って録画していたことが面倒にすら感じる。

スマホアプリの「View」も秀逸だ。自動的に動画を編集してBGMも乗せてくれる。まさにInstagramやFacebookのストーリー機能への投稿を意識した仕組みだ。ネーミングに「Stories」と込められた意図も自ずとわかる。人生のストーリーを記録していけるのだ。動画は1回30秒しか撮れないが、ダイジェストを語る上では問題ない尺だろう。割り切りがすごい。引き算の美学。

メガネで会議する

カメラだけではなく、マイクとビームフォーミングスピーカーも内蔵している。Zoomなどの会議では重宝しそうだ。このスピーカーは耳を塞がないし、骨伝導でも無いので不快感が無い。シームレスに会話できる。音漏れはちょっとするが。

それだけではなく、日常にBGMを足す(Augmented)ような「音のAR」時代を予感させる。BGMはもはや能動的選択から受動的に選ばれる時代になるだろう。いずれはGPSや天気に連動して日常にBGMが足されてゆくのではないか?

そして人類が手に何か持って録画や通話していた時代がむしろ滑稽になっていくかもしれない。「逆キモ現象」の第一歩を予感させる。

惜しむらくは、レイバンというブランドが「今日だけ!2980円!」みたいなスパムの代名詞のイメージが付いてしまった点のような気もする……。やっぱり、イメージは大事なのだ。

「イメージ イメージ イメージが大切だ」
アルバム Bust Waste Hip よりイメージ
ー THE BLUE HEARTS

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エクシヴィ代表/XRコンソーシアム理事
GOROman

7歳の時に8bitのパソコンに出会い、以後プログラミングに熱中。中学になるとパソコン通信にハマりネットの住人に。大学中退後、ゲーム開発会社を転々とし、コンシューマーゲームや3Dツールのエンジニアを経験、2010年にエクシヴィ起業。2012年、現在のVRブームの火付け役”Oculus Rift DK1”にクラウドファンディングで出会い「これからはVRの時代が来る!」と勝手に確信。Oculus創業者であるパルマー・ラッキーに米国まで会いに行きOculus Japanチームを立ち上げる。自分の会社であるエクシヴィを副社長に任せ放置、後にOculus社を買収したFacebookにOculusパートナーエンジニアスペシャリストとして入社、VRの国内普及に努めた。著書「ミライをつくろう! VRで紡ぐバーチャル創世記(翔泳社)」他
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