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THE ART × FUGA Dining Exhibition@赤坂

歓喜の瞬間を描き切る! ナカミツキの「世界でひとつだけ」のデジタル絵画

author: 岩崎かおりdate: 2022/05/17

銀行勤務と現代アート収集の経験を生かし、“経済と芸術文化”が結びついた社会を目指す岩崎かおりさんが、注目の作家や展覧会をセレクト。アートや金融のリテラシーアップに役立つ情報を紹介!

「Roaring Flare」2022, Ink on canvas 750×600mm 24万2,000円(+3万円でNFT作品購入可能)「THE ART ×FUGA Dining Exhibition」にて展示・販売中(6月4日まで)

デジタルネイティブであるZ世代の作家として注目を集めるナカミツキさんは、10代前半の入院生活中にiPhoneをツールに制作を始めた。音楽をモチーフに瞬時に描き切るデジタル絵画は、現代的なスピード感で新しいアートの形を生み出している。作品化の後は端末からデータを即座に削除していたデジタル画像を、今年からはNFTアート作品(唯一無二の価値を持つ一点物)として展開をスタート。時代の転換期に挑む作家に岩崎さんが注目する理由とは?

――ナカミツキさんとの出会い、作品に惹かれたポイントを教えてください。

岩崎かおりさん(以下、岩崎):数年前、共通の友人が経営するレストランのパーティに同席していたことが、後でわかったのですが、そのときは人が多くてお話しないまま。その後、また別の知人の勧めで作品を拝見したのが2021年の初め、私が起業して間もない頃でした。

展覧会で作品を見たとき、まず惹かれたのが「色」。iPhoneやiPadのペンツールで描き、カンバスにデジタル画像をインクで出力、出力されたデータを瞬時に削除して一点物の作品を創るというZ世代ならではの制作方法も印象的でした。

――ナカさんは10代のとき、突然の発症で半身麻痺の状態を経験されています(現在は回復)。

岩崎:お話を伺うと、アーティストとして世界で活動したいという強い希望や、過去の入院時期の経験からか、20代にしては作家として生きる覚悟がほかのZ世代の作家と違い、これからいろいろなチャレンジができる将来性も感じました。

――その後、岩崎さんは展覧会の企画をされました。ご本人はジャズセッションを即興で演奏するなど音楽愛好家でもあります。

岩崎:音楽好きのアーティストで、音楽モチーフが作品の特徴なのですが、室内に飾るといい雰囲気が生まれます。私も購入しましたが、作品からは音楽が聴こえてきたり活力をもらうこともあります。

渋谷で起業家やベンチャーが集うオフィスにも飾られていますが、このような時代であっても、出社が楽しみになるとの共感の声もいただきました。現在は赤坂のレストラン「FUGA Dining」で展示・販売中で食事やお茶を楽しみながら鑑賞することができます。

今年はナカさん自身が1点1点手作業で刷ったシルクスクリーン作品も発表。「Stroke Vc.」「Storoke Gt.」「Stroke Sax」Inc on paper 約450×350mm 各37エディション各3万3,000円(額装込み。抽選販売)「THE ART ×FUGA Dining Exhibition」

――コロナ下で制作された作品にはナカさんの特別な思い入れがあるそうです。岩崎さんが取材した3月の「LOVE.ナカミツキ展」では自身が経験した入院中の身体的不自由な思いと、社会全体の不自由な状況を重ね合わせ、「リアルに人々と繋がり、愛を届けたい。SNSですり減らされた心に愛を!」との思いを込めました。主催者として、客層や反響にどのような傾向を感じましたか?

岩崎:コロナ下では人との繋がりが一層求められるようになりました。ナカさんのファン層は性別問わず10代から70代まで幅広く、デジタルネイティブから30、40代の起業家、落ち着いた大人まで。アート購入者は一般的に男性が多いので、比率は男性が多いですが女性の顧客もいらっしゃいます。「LOVE」展では45点がほぼ完売。

作品を見て元気をもらったという声も多く、購入された方は「家で見ると、今日も頑張ろう」とエネルギーをもらうという感想も。ナカさん自身も、鑑賞し応援してくださる方々の愛のパワーを体感できたそうです。

また同時にデジタルネイティブとしては、デジタルの世界も日常であり、オンライン上での人々とのつながりもより広がり、強くなったとも感じているようです。

写真3点ともに「LOVE.ナカミツキ展」SPACE A9 Galleryにて和洋の音楽モチーフが映えた展示。祖母の影響で日本舞踊も嗜んだナカさんは琴や三味線など和楽器モチーフの作品も制作。Portrait: Ryoko Kurobe(3月に展示会期販売終了)

――現代はモノからコト消費、心のケアも重視されています。ナカさんが芸術に目覚めたのは小学生のとき、入院中のアートセラピー(芸術療法)(※1)で、創作の喜びや自信も芽生え、大学では美術教育も学ばれた。岩崎さんは銀行員時代、アートは人としてのバランスを保ってくれる存在だったとか。アートの精神面での効果について伺えますか?

岩崎:現代は心身ともに、社会的にも満たされた、幸福=ウェルビーングが求められています。そんな時代に、アートは人間らしさや心の豊かを取り戻させてくれる。人に感動や気づきをもたらすと思います。金融業界ではロジカルに目標数値が求められ、私もその達成にやりがいを感じることがありましたが、本来の人間は感情が動くもの。

アートは私にとって自分らしさを取り戻し、心地よさを与えてくれる存在でした。また(創作や表現活動による)アートセラピーは、新しい世界を切り開いていく現代アートに通じますし、新しいものを作り出す点では、新事業の提案や改革をする心地よさにも似ていると思います。

ナカさんにとってもウェルビーングは大切なテーマで、彼女の作品は見るものをいい気持ちにさせてくれる。大好きな音楽を聴きながら描いていることや色彩効果の勉強もされているので、そのような要素が自然に入っているのかもしれません。

NFTアートで新たな世界を切り開く

「Twin Drums」2021, Ink on canvas 600×750mm 24万2,000円(+3万円でNFT作品購入可能)
「Jazzman」2022, Ink on canvas 750×600mm 24万2,000円(+3万円でNFT作品購入可能)「THE ART ×FUGA Dining Exhibition」

――今年はNFTアート(※2のサポートも開始され、第一弾はナカさんの個展でカンバス作品の購入者にデジタル画像のNFTアートを付けるなど、新たな展開を始めました。その動機とは?

岩崎:以前からNFTアート参入への依頼はいただいていたのですが、まだ価値づくりが途上の分野ですので様子を見ながらですが、ナカさんと最初にトライしようと決めたのは、デジタル作品との親和性。

NFTアートは一点物として登録されますので、デジタル画像が改ざんされたとしても、本物は世界で唯一のものとして証明が付き、フィジカルな作品と違って持ち歩くこともできます。ナカさんの作品は複製されても元データよりクオリティが落ちるように保護されるなどの工夫が施されています。また転売されても履歴はブロックチェーンで紐付けされ、作家へ利益を還元することも可能です。

――NFTアートを購入するには? どのような利点がありますか?

岩崎:プラットフォームも支払方法もさまざまですが、ナカさんの作品はハッシュポート社のHashPaletteで管理(作品の購入は展覧会にて)されています。前澤友作さんが出資している会社で、社外取締役は金融規制やブロックチェーンに詳しい私の古巣の銀行繋がりというご縁もあり、協働させていただいています。

NFTの面白さは作家と顧客がブロックチェーンでつながるコミュニティができること。そのなかでトークショーや特別な情報をシェアしたり、また国境を越えて作品の鑑賞や購入が可能なので海外の人々と繋がりやすくなります。

――ではNFT市場に参加する作家にとって、メリットや留意点とは?

岩崎:ポジティブに考えれば、広告展開などをするよりも低コストで市場に出る機会でもあります。プラットフォームでは米国のOpen Seaが巨大市場ですが、出品者も多いので作家としては埋もれてしまう可能性もありますから、戦略が必要。

何が最適かは誰もがまだ模索中だと思いますが、私は誰と仕事をするか、人も大事だと思います。NFTのプラットフォームは今、ITバブル期のように急増していて規制も整っていないため、利用者は自己責任が前提ということを留意していただきたいです。

ナカさんの今後の予定について。

岩崎:7月に世界的バイオリニストのヴァスコ・ヴァッシレフとのコラボレーション、8月には日本橋三越でのグループ展、また海外では台中アートフェア、フランスでのグループ展など海外での活動も増えます。

展覧会では完売になることが多く、新進気鋭の愛好家の評判も上々です。表現も立体的な作品に挑戦するなど確実に進化しています。デジタルの技術進歩とともにナカさんも進歩し、新しい世界を切り開こうとしている今後の活躍が楽しみな作家だと思います。

※1:アートセラピー(芸術療法)/絵画、工作、音楽、演劇、ダンスなど芸術作品を創造する活動によって、心の健康回復を目指す心理療法。20世紀に欧米で研究が進み、精神疾患をはじめ様々な病状を抱える人々や戦地からの帰還兵の治療にも取り入れられてきた。また医療機関での治療目的にとどまらず、人々の悩みや苦しみを癒し自己成長を促す目的などで福祉や教育など幅広い現場で活用されている。

※2: NFT /NFT(非代替性トークン)は1つ1つが唯一無二の価値を持つデジタル資産。NFT化されたデジタルデータはこれまで所有者の証明が難しかったイラストや写真、漫画や音楽などの権利証明が可能に。二次流通時は作成者に利益が還元される仕組みを作ることもできる。

(構成・執筆/黒部涼子)

ナカミツキ(なか・みつき)

1997年兵庫県生まれ。10代前半からiPhoneでアート制作を開始。音楽にインスパイアされた作品を生み出す。2018年度三菱商事アート・ゲート・プログラム奨学生。2020年京都教育大学美術領域専攻卒業。STAR展推薦作家(トライセラオークション)などグループ展や個展で作品を発表。2022年7月岐阜でヴァイオリニスト、ヴァスコ・ヴァッシレフとのコラボレーションイベント、台中アートフェア、8月日本橋三越にてグループ展(8月3日~15日)、9月フランスでグループ展に参加予定。

ナカミツキさんの作品はこちらで展示・販売中!

「THE ART ×FUGA Dining Exhibition」

ナカミツキさんの最新作約15点(NFTアート購入権付き作品を含む)をイタリアンレストラン 「FUGAダイニング」(東京・赤坂)で展示・販売中(6月4日まで) 購入方法の詳細はこちら

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株式会社THE ART代表取締役社長
岩崎かおり

愛媛県生まれ。アート鑑賞と旅行が趣味の両親のもとで育ち、幼少のころから国内外のアート鑑賞が習慣に。大学院修士課程ではモノづくりの経営学を学ぶ。海外のアートフェアやギャラリーに通い続け、世界のアート関係者とのつながりを通じ、日本と海外のアート市場の格差や、アートがもっと活性化する余地が大きい国であることを痛感。2018年、当時勤務していた大手国内銀行で、有志によるアートクラブを発足。翌2019年、大手国内銀行にてアート企画推進を立ち上げ、日本橋支店の店内に現代アート作品を展示する「アートブランチ」プロジェクトを企画・リリース。国内金融初の試みは、数多くのメディアでも取り上げられた。アートバーゼルで名和晃平氏のPixCell作品を購入して以来、アートコレクションの魅力を知り、アートコレクターとしての顔ももつ。自身の現在のコレクション作品数は約250点。
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