『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』に出てくるキューバサンドに挑戦! この物語は、家電コーディネーター・調理家電研究家の戸井田満樹(まんじゅ)がチャレンジする、「実録! 20代男子のマニアメシ」である。
とにかくキューバサンドが気になる
以前、映像制作をしている友人と“映える料理の撮り方”を話していた際に教えてもらった『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』という映画を実際に視聴してみた。ロサンゼルスでも名の通った有名レストラン、そこの料理長である主人公がフードブロガーの酷評をきっかけに本当に自分が作りたい料理と家族に向きあうヒューマンストーリー。Amazon プライムビデオ等でも観ることができるので、まだ見てないよ、という人はお腹を空かせてぜひ観てみてほしい。
映画の内容もさることながら、さすが友人が勧めてくれただけあって調理シーンがとにかく美味しそう。なかでも印象的なのがキューバサンド。海外らしい豪快で大きな見た目と細部までこだわった映像で、僕はすっかり虜に。これは本格キューバサンドを作るしかない! と決心し、いざキッチンへと向かった。
と、その前に、美味しく作るための第一歩はそのもの自体を知ることから。じつは映画を教えてくれた友人と出会ったのは、物語の舞台であるアメリカ・ロサンゼルス。学生時代の懐かしさを感じつつも、キューバサンド自体はお目にかかったことがないのに気づく。どうやらアメリカ全土で人気をいうわけでもないようだ。現に、映画でも「ロスには本物のキューバサンドは無い」というセリフがあった。
そもそも“キューバ”サンドなのになぜアメリカで人気なのか。調べてみると、これには昔の労働者たちが深く関わっているらしい。
元々はフロリダにある移民コミュニティーのなかで振舞われていた料理らしく、これをキューバ人やその他の移民労働者たちがマイアミに持ち込み、ローカルフードとして根付かせたとのこと。なるほど、どうりでチーズやハム、ローストポークなどガツンと食欲をくすぐる料理なわけだ。
キューバサンドもしかり、移民が多いアメリカでは発祥不明の料理が多く存在し、多種多様な進化を遂げているので非常に面白い。ちなみに僕がロサンゼルスに住んでいた時は「Teriyaki(照り焼きソース)」が流行っていて、現地民のなかには“照り焼き”が日本語だと知らない人も結構いた。それだけTeriyakiが市民権を得ているのだと感心したのをよく覚えている。
目指すは“王道”のキューバサンド。ラードも使うよ!
ある程度歴史も把握できたところで、お次は本格的、つまりは伝統的なキューバサンドのレシピを調べてみる。数あるスタイルのなかから“王道のレシピ”というものがちゃんと存在するらしく、それによると、20~30cmのキューバブレッドにマスタード、ローストポーク、ハム、チーズ、そしてピクルス。これが伝統的なキューバサンドの材料だそうだ。
マヨネーズやトマト、レタスなどを挟むのは邪道、あくまで王道はシンプルかつパンチのあるものが理想。ということで、今回はこれらの材料をもとに、最高のキューバサンドを作っていく。
本格キューバサンドへの道は、念入りな下準備から
さて、まずは用意するものの整理から。主役であるキューバブレッドとローストポークは力を入れてイチから手作りで揃えたいところ。ピクルスもついでにサクッと作っておこう。さすがにスイスチーズとハムは買いそろえた。
事前準備は前夜から始まる。ピクルスとキューバブレッドのスターター(酵母液)、そしてローストポークの下準備が重要だ。ピクルスは洗ってからしっかりと水分を拭き取ったキュウリを、お酢ベースの液体に付けてひと晩寝かせる。
お酢に、にんにく・鷹の爪・ローリエを入れ、塩と砂糖で味を整えたものをひと煮立ちさせ、ディル(ハーブ)で香りづけ。このディルが今回のキモで、これを入れることより一気に本格的な香りがたつピクルスに仕上がる。
キューバサンドのスターターは少し厚めのお湯(40~50度くらい)にイースト菌を入れ、少し混ぜたのち強力粉を投入。温度指定ができる電気ケトルがあると一発でその温度にできるため活用していきたい。再び混ぜてこちらも冷蔵庫でひと晩寝かせる。
ローストポークは肩ロースの塊肉を使用。フォークで表面に穴を空け、塩胡椒そしてローズマリーをすり込み、ラップをしてひと晩冷蔵庫へ。
ひと通り準備が終わり、夜が明けたら本調理開始!
まずは、キューバブレッドの第一次発酵。お湯とドライイーストをよく混ぜたところに前日用意したスターターの半分と薄力粉・塩・砂糖を入れていくがキューバブレッドで、一番大事なのがラード。普通パンにはバターを使うが、キューバブレッドではラードを使用する事により独特の風味を付けている。
この後、生地がまとまったら温かい場所(35~37度くらい)で40分ほど寝かす。今回はキッチンエイドのスタンドミキサーで生地を作り、ヘルシオの発酵モードを使用して作成したが、ホームベーカリーに全部任せてしまってももちろん問題なし。
一次発酵が終わった生地を麺棒でガス抜きしながら引き伸ばし薄くしていく。それを空気が入らないように端からくるくると巻いていけば、縦長パンの形が見えてくる。濡れた布巾を被せ、再び1時間ほど発酵させれば生地の完成だ。
塊肉を焼くぞ! 目指すは中とろやわらかジューシーな焼き上がり
待っている間にローストポークを冷蔵庫から取り出し、余計な水分をキッチンペーパーで拭き取ってオーブンを200度に余熱していく。ここでの余熱はしっかりとしておくことが大事。低温から始めてしまうと温度が上がっていく間に水分や油分が抜け落ち、硬い肉に仕上がってしまう。
庫内が200度になったら、網の上に準備しておいた方ロース肉をのせて焼いていく。網で火を通していくことで余分な油を落とし、臭みがなくジューシーな焼き上がりを目指す。このとき、中まで火が通り過ぎてカチカチにならないよう肉のサイズや厚さなどをしっかりと把握して時間設定するのがポイントだ。今回は500gの塊肉で、30分火入れした。じっくりと丁寧に、中まで温めていく。
そうこうしいるうちにパンも最終工程、あとは180度で焼くだけだ。外側を固く、中はもっちりと焼ければ成功。今回は若干色が薄くなってしまったが食感、味はバッチリ。男子料理は細かいこと気にしない。
クライマックスは映画さながらの“焼き”シーン
いよいよすべての材料が揃ったら、あとはサンドして焼いていくだけ。キューバブレッドを真ん中から切り分け、たっぷりのバターとマスタードを塗り、表面にもまんべんなくバターを。スライスしたピクルス・ハム・ローストポークにチェダーチーズを挟み、オリーブオイルを引いた熱い鉄板の上へ。このシーンは映画の中でも度々登場するので、事前に観ておけばなんとなく手順がわかるはず。キューバサンドづくりの一番“美味しい”シーンだ。
上下からしっかりとプレスしてペチャンコにしていくのが本格派。せっかくの手作りパンだがここは容赦無く潰して焼いていく。
5分ほど焼けば、溶けたチーズとバターの良いにおいがしてくるはず。オシャレなシートで巻いて切れば、映画顔負けのキューバサンド完成である。
映画ではフードトラックで旅をしながらロスに帰っていくので、せっかくだから外で食べることに。材料だけの味でソースも使わず薄味になっていないか。味のバランスは取れているか。初の試みで不安いっぱいのひと口目。見事に調和した味、味もしっかりとパンチが効いていてなおかつ、ピクルスの酸味が後味をキュッと締めてくれる。初めての挑戦とは思えない、我ながら感激の出来である。
あらためて作ってみて、パワフルで豪快な見た目や味とは裏腹に、生地の発酵や肉の焼き加減、ピクルスの味ひとつとっても繊細な作業が求められるキューバサンド。数多くの家電を使用しても、なかなか骨が折れる作業だった。正直な話、買ってきた方が何倍も楽だしコストも安く収まる。でもそんなものだからこそ本気で作ってみたい。趣味全開のマニアメシとしては抜群の満足感が得られる、そんな料理だった。
「ここはアメリカ、ここはロサンゼルス、今食べているのは『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』と同じ食べもの」という刷り込みも大事。桜が咲いてるけどね。
今回の材料まとめ
キューバブレッド(2~3本分)
スターター
- ドライイースト 3g
- 40~50度くらいのお湯 80ml
- 強力粉 40g
生地
- ドライイースト 20g
- 砂糖 大さじ1
- 塩 小さじ2
- スターター 用意したうちの半分
- 強力粉 520g
- 40~50度くらいのお湯 360ml
ピクルス
- きゅうり 2~3本
- お酢(種類は好きなもので) 150cc
- 水 100cc
- 塩 小さじ1
- 砂糖 大さじ1/2~1
- 鷹の爪 1つ
- ローリエ 1枚
- ディル 2つまみ(香りづけなので好きな量)
ローストポーク
- 豚の肩ロース肉:500グラム
- 粗挽きの塩胡椒 肉全体に満遍なく
- ローズマリー 適量
その他
- チェダーチーズ 好きなだけ
- バター:たっぷり
- ちょっと厚切りのももハム 1~2枚
- マスタード:お好みで
- オリーブオイル:適量
今回の調理家電まとめ
- スタンドミキサーmini(Kitchenaid)
- HEALSiOオーブンレンジ(SHARP)
- パングルメ ベーカリー&コンベクションオーブン(Delonghi)
- マルチグルメプレート(Cuisnart)
- スマートケトル(recolte)