アーティスト・写真家として活動しています。仕事柄、カメラなどは仕事に応じて購入することがあるのですが、最近は家具や古道具が気になっていて、椅子や役に立たないオブジェクトなどを気まぐれに買うことがあります。
実店舗かオンラインかは問わず、直感的にいいと思ったものに執着してしまう傾向にあるのですが、今回紹介する「koen(コウエン)」は、その中でも特別なものでした。
嶌村吉祥丸
Kisshomaru Shimamura
東京生まれ。アーティスト・写真家として、分野を越境し国内外を問わず活動。さまざまな表現者と協働しながらsame gallery (東京)やkoen(京都)のディレクターとして企画・キュレーションを行うほか、「ラーメン吉祥丸」やフレグランスブランド「kibn」をプロデュース。主な個展に"Unusual Usual"(Portland, 2014)、 “Inside Out” (Warsaw, 2016)、"photosynthesis"(Tokyo, 2020)など。
Instagram:
@kisshomaru
X:
@kissh28
公式サイト:
https://kisshomaru.com/
「koen」の外観
2024年のベストバイは、「koen」(物件)です。京都の友人と食事をしているときに、おすすめされた物件サイトで一番上に出てきた物件でした。公園前の立地とリノベーションされた外観に惹かれ、もともと向かって左側の物件のみを購入する予定でしたが、すてきなご縁もあって最終的には両方を購入することになりました。
物件を購入してからは、“場づくり”のために仲間集めをしながら建築・内装を考えたり、長期的に地域の中でどのように運営していくかを考えたりしながらリノベーションを進めていきました。
リノベーション検討時の建築模型
リノベーションの様子
「koen」という場所は、カフェ・ショップ・ギャラリー・アトリエの機能を持つ複合施設です。
もともと購入時に建物正面にあった建築事務所の看板を残していて、その上に新たにネオンサインを製作しました。建物自体をまるっきり真新しくリノベーションするのではなく、土地に根ざした歴史や文脈も引き継ぐことができればと思っています。
東京でも再開発によってなくなってしまった建物が数多くありました。新しいビルが建つとそこに何があったか忘れてしまうように、ものや建物に意思はなくとも、場に積み重なった“人の記憶”はとてつもないエネルギーを持っていると思います。これからの「koen」の活動が、これまでの“場の持つ記憶”に良い形で蓄積することができればと思っています。
目の前の公園では老若男女さまざまな人が集い、季節によって木々がさまざまな表情を見せてくれます。公園前の風景を見ているだけで、東京とは違った感覚で時間を過ごすことができます。
またそれぞれ異なる機能を持った空間に合わせて内装や照明も変えていて、例えばカフェ空間では“縁が交わる場”というコンセプトをもとに、京都にある古道具屋と設計事務所も営む「ものや」に製作してもらった大きなテーブルを囲んで飲食ができるように設計しています。
物件を買うということは、人生の中で然う然うあることではないと思います。そして、場を育てて継続していくことは、それ以上に難しいことです。
「ものを買う」ということがイコール「消費」にならないように、ゆっくりとこの場を育てていきたいと思います。
koen
住所:京都府京都市左京区一乗寺塚本町15-2
営業時間:木・土・日 11:00-18:00/金 14:00-21:30
定休日:月曜日〜水曜日
Instagram:
@koen_kyoto