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日本の技術力と原風景を時計に込めて。いま、「グランドセイコー」が面白い!

author: 三宅 隆date: 2023/07/10

2023年3月に行われた世界的な時計の祭典「ウォッチズアンドワンダーズ2023(以下、W&W)」。名だたるラグジュアリーブランドが居並ぶ中、非欧州系時計ブランドとしては唯一の出展をしているのが「グランドセイコー」だ。ここでは、その新作と世界的な立ち位置についてレポートしていこう。

時計大国スイスにおいても存在感を示す

時をさかのぼること1960年、グランドセイコーは世界最高級の腕時計を作り出すという決意から誕生した。初代グランドセイコーは、国産初の「スイス・クロノメーター検査基準優秀級規格」に準拠したモデルとして発売。発売価格は当時の価格で2万5000円以上。当時の上級国家公務員の初任給が1万2000円であったことから、破格の高級品であったことが伺える。

そこから半世紀を経て、グランドセイコーの技術力はいわば閉鎖的なヨーロッパの時計文化において、たしかな評価を得られている。その証拠に、「グランドセイコー Kodo(鼓動)」が2022年度ジュネーブ時計グランプリ 「クロノメトリー」賞を受賞。2014年度の「プティット・エギュィーユ」賞、一昨年度の「メンズウオッチ」賞に続き、グランドセイコーとして2年連続3度目の受賞を達成した。

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 木材をあしらったグランドセイコーのブースには、多くのプレスや関係者が訪れていた。まさに和を体現するあたたかみのある空間に。

こうした高い評価を得られるには、心臓部であるムーブメントの技術開発はもちろん、美しいデザイン性、ブランド力の浸透が結実したことは想像に難くない。それを証明するかの如く、W&Wにてロレックス、パテック・フィリップ、タグ・ホイヤーやゼニスといった他の錚々たるブランドと肩を並べてブースを出しているのは、日本人として誇るべきことであると感じた。

新作に見る高い技術力と「日本」の持つ価値とは?

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「グランドセイコー エボリューション9 コレクション テンタグラフ SLGC001」自動巻き、ブライトチタンケース、ケース径43.2mm、ケース厚15.3mm、日常生活用強化防水(10気圧)、181万5000円

そんな2023年のグランドセイコーを代表するのが、「TENTAGRAPH(テンタグラフ)」と呼ばれるブランド初の“機械式クロノグラフ”だ。TEN BEATS PER SECOND, THREE DAYS, AUTOMATIC, CHRONOGRAPHの文字から構成された造語であり、つまり10振動かつ3日間のパワーリザーブ、自動巻きクロノグラフであるということ。

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「10振動」とはハイビートと呼ばれる時計の精度を表す数字であり、パワーリザーブも駆動時間を示すものだ。2020年に誕生したムーブメント「Cal.9SA5」を改良し、薄型の機械式クロノグラフムーブメントとして生まれ変わった「Cal.9SC5」が完成したことにより、精密機械としての機能と、グランドセイコーらしいデザインコードを両立した本モデルが誕生した。

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決して華美ではなく、しかし美しいケースの仕上げやクロノグラフのプッシャーも、計測器としての存在感を失うことはない。インダイヤルも王道の横に並んだ三つ目であり、なにより製造地の雫石である岩手山にインスパイアされたダイヤルパターンは、日本の風景を切り取った荘厳なブルー。光の角度によって深い水の底のようにも見える。

実際に装着してみたところ、ケース径43.2mm、ケース厚15.3mmというややボリューミーな印象ではあったが、重心が低いためかフィット感はよかった。

プラチナを用いた手作業による究極のダイヤルとケース加工

そしてもう一本、目を引いたのがグランドセイコー「Masterpiece Collection SBGZ009」だ。

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「Masterpiece Collection SBGZ009」手巻スプリングドライブ、プラチナケース、ケース径38.5mm、ケース厚9.8mm、日常生活用強化防水(3気圧)、最大巻上時約84時間持続、951万5000円:世界限定50本(うち国内:25本)

グランドセイコーのスプリングドライブモデルを製造する「信州 時の匠工房」近郊である、信州・北八ヶ岳の八千穂高原に広がる白樺林の情景を、プラチナ製のケース全体に刻み込んだ逸品で、熟練の職人による手作業でひとつひとつ彫金を施している。

ダイヤルはケースとマッチングのよいメタリックなカラーを採用。白樺をイメージした凹凸の深い有機的な型打ちと、グランドセイコーならではのスラリと伸びた針やシンプルなバーインデックスが相まって、荘厳な北八ヶ岳の情景をダイヤルに閉じ込めている。

近年、こうした繊細かつダイナミックな日本ならではの原風景を、グランドセイコーはダイヤルに採用しており、海外での人気が非常に高い。本モデルは同ブランドの最高峰の技術が込められており、価格から見てもおいそれと手の出る時計ではないが、数十万クラスのミドルレンジでもこうした和のモチーフをあしらったモデルは多数ある。

それは日本の技術力と、まさに資源である国内の原風景を海外にアピールするのに十分な影響力を持つ。ポストコロナの時代において、海外で仕事をするビジネスパーソンも増えるだろうが、自信を持って身に着けられるブランドだろう。

それを証明するかの如く、とくにアメリカでは若年層を中心にグランドセイコーの人気が高まっているという話をよく聞く。トレンドに敏感な彼らは、これまでの大人たちが作り上げてきた偉大なブランドを踏襲するより、自らが探し価値のあるモノを身に着けたいのではないだろうか。

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ムーブメントが見られるシースルーバックには、まさに超絶技巧の証が見てとれる

グランドセイコーは従来あったブランドフィロソフィー「THE NATURE OF TIME」に加えて、本年新たに「今、この時を生きる人へ。Alive in Time」を掲げた。伝統のみを重んじ殻に閉じこもるのではなく、時計が本来なすべき「今」を刻む。そして新たな時代へと向かうという決意の現れは、まさに世代を超えていくモノづくりに他ならない。 いつまでも変わらない日本の価値を携え、変わっていく世界に挑戦し続ける。そのような人の腕元にグランドセイコーは似合うのだと感じたW&W2023の一幕だった。

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編集者・Beyondディレクター
三宅 隆

ライフスタイル誌、モノ情報誌、TV情報誌などの編集部に所属し、現在はWebメディアのプロデュース・編集・執筆を中心に活動。カバージャンルは家電、ガジェット、時計、アウトドアなど。趣味はキャンプと釣り。Beyondディレクター。
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