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ウォーキング感覚で乗れる

「Free Mile plus」に感じる電動モビリティの面白さ

author: 小口 覺date: 2021/05/01

手軽な交通手段として電動キックボードをはじめとする電動モビリティが欧米を中心に普及している。今後は規制緩和により、日本でも普及が見込まれそうだ。実際のところ、電動モビリティにはどんなメリットがあるのか。また、公道で求められる性能とは何か。クリエイティブジャパンの「Free Mile plus」を試乗して考えてみた。

クリエイティブジャパン「Free Mile plus」(17万3800円~/税込)。本体重量約30kgと通常想像する電動キックボードよりもしっかりしている。最高時速は45km/h。最大航続距離は30~40km。

公道で走るためには「ブレーキ機能」が必須

 現状、公道で電動モビリティに乗るには、ウインカーやミラーなどの保安部品を取り付け、原付(原動機付き自転車)として登録する必要がある。ヘルメットの装着は義務で、歩道の走行も許されていない。ただし、今後法律が緩和され、さらに手軽に乗れるようになるかもしれない。

「走行速度を時速15km以下に限定することでヘルメットの着用義務がなくなる予定です。法律改正のための実証実験が4月下旬以降にスタートします」(クリエイティブジャパン株式会社代表取締役CEOの三本茜さん)

 農耕用トラクターやフォークリフトといった小型特殊自動車の枠に入れられ、車道に加えて歩道の自転車帯も走行できる案が考えられている。電動アシスト自転車ですら時速24km規制なので、「時速15kmは遅すぎる」。そう思う人も多いだろうが、これはインバウンドなど観光を想定したもので、シェアリングサービス事業者からの要望によるものだという。一般に販売される製品は、今後も多くが法定速度制限30kmの原付として購入されると見られる。となれば、重要なのは快適性や安全性だ。

「日本の保安基準では前後2つの機械式ブレーキを付けなければいけないのですが、ネットで販売されているような低価格の製品は電気制御のブレーキが多く、坂道では止まらない。実際に海外でも事故が多発し問題となっています」(三本さん)

 その点で、『Free Mile plus』は前後にディスクブレーキを装備。タイヤもキックボードに比べれば大きいことで、公道でも安定的に走行できるという。

ハンドル部を折りたためるので自宅や会社内に持ち込みやすい。クルマに積み込んでの移動も可能だ。
径10インチ(25.4cm)の太くて大きなタイヤ、しっかりとしたサスペンションを装備。前後輪ともにディスクブレーキを備える。一般的なキックボードとの違いは歴然だ。
バッテリーは着脱式。本体に装着したままでも、取り外しても充電可能。充電時間は空の状態から5~6時間。フル充電1回にかかる電気代は約11円となっている。
メーターはもちろんデジタルで大きくて見やすい。細身でオシャレなLEDウインカーも特徴的だ。ブレーキランプとナンバープレートなど、公道で走るための装備が整っている。
ウインカーやライトが切れた場合にパーツだけを取り外して交換できるので、車体ごと送り返さなくても良い。

少し練習すれば公道でも走れる手軽さが魅力

「Free Mile plus」は、スケートボードのように1枚の板の上に両足を乗せるのではなく、本体の左右に設けられたステップにそれぞれの足を乗せる。

 発進の手順はこうだ。片足をステップに乗せ、もう片方の足を地面に着けた状態で、ハンドル右のスロットルを手前に少しひねる。前に動き出すとバランスが安定するので、もう片方の足をステップに乗せる。または、地面を片方の足で蹴って進み、そこからスロットルをひねってもいいだろう。自転車の乗れる人ならば、問題にならないはずだ。

 まずは私道で練習。運動神経にはまったく自信がない筆者でも数分で慣れ、速度を調整しつつ方向転換も可能になった。自転車よりも小回りが効くし、バイクのようなエンジン音もない。なによりペダルを漕がなくていいのはラクだし魔法感がある。もっとスピードを出してみたいと、公道に出てみた。

 手元のスロットルをくいっとひねるだけで音もなく加速する。時速20km、25kmと速度が高まるにつれ、バイクや原付で走っているのと同じ感覚になる。ただし、カーブでは自転車やバイクのように腰から体重移動できないので、自分が立って乗っていることを意識させられた。足自体で体重移動するようにすればスムーズに曲がれる。まあ、これは慣れですね。

 乗る前は公道だと怖いかなと考えていたが、まったくの杞憂だった。やはりタイヤがそれなりに太いせいだろうか。鉄道の線路にかかる陸橋のジョイント部分を越えたときはガタッと大きな振動があったが、ハンドルを取られるほどではなかった。ブレーキもよく効いて、前のクルマが急ブレーキを踏んでも対応できる。普通に整備された道路で、法定速度を守って走る分には問題ないだろう。

 そして慣れてくると、周りの風景を楽しみながら走ることができた。歩行者からの興味深そうな視線も感じる。風を直接体に感じるのも気持ちが良いし、立っているので乗り物を運転しているというよりもウォーキングしているような気分に近い。密になることが制限されている昨今、走りながらお花見をしてみたい。もちろん、日常の買い物や通勤でもアリ。これで通勤しやすいよう自宅を引っ越すなんてことも考えられる。

 想像では “クルマから嫌がらせされるのでは?”との懸念があったが、立ち姿が目立つのか、目新しい乗り物だからか、クルマの運転手さんも気をつかってくれているようで、嫌な追い越しなどはされなかった。まあこれは、ウーバー●ーツのように増えすぎれば、どうなるかは定かじゃないが。結局は、乗る人たちのマナーが問われるんだろうね。

取材協力:クリエイティブジャパン

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ライター・コラムニスト
小口 覺

雑誌、Webメディア、単行本の企画・執筆などを手がけるライター・コラムニスト。自慢できる家電「ドヤ家電」(日経MJ「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定)の生みの親。近年はトレンドやマーケティングをテーマに取材を重ねる。著書に「ちょいバカ戦略: 意識低い系マーケティングのすすめ」(新潮社刊)など。エンタメテックを主軸としたコンサルティングも務める。
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