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「アルトゥーラ」試乗レビューVol.1

マクラーレンの次世代スーパーカーに乗ってみた。【スーパーカー超王・山崎元裕さんの場合】

author: 山崎元裕date: 2023/02/19

英国を代表するレーシング・チームとして、世界最高峰のレースであるF1に参戦し、いち早くレースの世界にハイブリッド機構を取り入れたのが、マクラーレンである。究極のスーパー・スポーツカー・ブランドが放つ初のプラグイン・ハイブリッド・モデル「アルトゥーラ」の乗り味を、“スーパーカー超王”の二つ名を持つ山崎元裕さんがリポートする。

時代を超えるスーパーカー

「すべてのデザインは機能に従う」。

これはイギリスのスーパースポーツカーメーカー、マクラーレン・オートモーティブ社が、新型車の開発時に最も重要なコンセプトとして掲げている言葉だ。それは1966年からF1GPに参戦し続け、F1を代表するトップチームのひとつとして数えられる、マクラーレン・レーシングを母体に誕生したメーカーらしい車作りの理念である。その創業者であり、残念ながら1970年にテスト中の事故で他界したブルース・マクラーレンが常に夢に描いていたというロードカーが、仮に彼のもとで誕生したとしても、それは現在のマクラーレンの姿と変わることはなかっただろう。それほどにこの言葉は計り知れない重みを持つ。

そのマクラーレンに新しい時代が訪れた。アルトゥーラとネーミングされた新型車がそれだ。まずは主要なメカニズムの進化から解説を始めることにしたいと思う。

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最初に紹介しなければならないのは、「アルトゥーラ」の核ともいえる基本構造体が、新たにMCLA(マクラーレン・カーボン・ライトウエイト・アーキテクチャー)と呼ばれる、ニューデザインのカーボンモノコックに進化したことだろう。従来まで使用されていたものより10%の軽量化を果たしたというこのモノコックは、もちろん剛性に関してもさらに魅力的な性能を発揮するのは確か。さらにリアサスペンションにこちらも新開発のマルチリンク式を採用したこともシャシーにおける大きな話題だ。車載のカメラ等で得た情報をもとに減衰力を最適化するプロアクティブダンピングコントロールの採用も見逃せない。

ミッドに搭載されるエンジンは、これまでのV型8気筒から一転、120度のバンク角を持つV型6気筒に変化した。これにツインターボとPHVのシステムを組み合わせるのが、パワーユニットの大まかな構成になる。ちなみにマクラーレンは過去に、「P1」や「スピードテール」でPHVを採用したことがあるが、これらはいずれも限定生産を前提とした、そしてきわめて高価なプライスが設定されたスペシャルモデル。アルトゥーラとて日本市場でのプライスは消費税を含んで3000万円に迫るものがあるが、585psの最高出力と585Nmの最大トルクを誇る3Lエンジンに、さらに95psの最高出力、225Nmの最大トルクを発揮するエレクトリック・モーターを組み合わせた走りが実現できることを考えれば、そのコストパフォーマンスは高い。ちなみにゼロエミッション、つまりCO2を排出しないEV走行さえ、このアルトゥーラは130km/hの最高速まで、満充電からの最大巡航距離で31kmを可能とするのだ。

すべての姿は機能に従う

今回は、一般のワインディングロードのほかに、アルトゥーラの実力を試すには最高の舞台ともいえるサーキット、富士スピードウェイでその走りを楽しむことができた。すでにそのエクステリアデザインは何回も鑑賞していたが、やはりマクラーレンの言う「すべての姿は機能に従う」というコンセプトは、さまざまなディーテールからそれを直接感じ取ることができた。もちろんそれはスーパースポーツに必要不可欠な完璧なエアロダイナミクスを実現するためのもの。アルトゥーラは最高速で330km/h、0→200km/h加速さえ8.3秒で駆け抜ける運動性能を持つモデル。エアロダイナミクスがその数字を実現するためにいかに重要な役割を果たすのかは想像に難くない。

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そしてもうひとつ、マクラーレンがエクステリアデザインで重要視しているのが「シュリンクド・ラップ」、すなわち最善の機能を持つデザインをできるだけ小さくラッピングするというコンセプトだ。マクラーレンのモデルには一見スーパースポーツとしての派手さが足りないようにも思えるが、これはそのコンセプトが貫かれているため。実用面でも左右のディヘドラルドアをオープンした時の幅が、従来のモデルより480㎜小さくなり、また走行モードの切り替えスイッチがフルデジタルとなったメーターパネルの左右に移動するなど、操作性も高まっている。

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スタートスイッチをプッシュしても、PHVのアルトゥーラは基本的にエレクトリック・モーターからの駆動力で発進するから、しばらくはスーパーカーらしからぬ静粛な世界にコックピットは包まれる。参考までにシート背後に搭載されるバッテリー容量は7.4kWh。モーターはエンジンと8速化されたDCTの間にレイアウトされ、バッテリーの残量がゼロに近づくと、あるいはさらに大きなパワーを必要とした時には、即座にエンジンが始動しシステム全体で680psの最高出力を発揮する。そのプロセスにはまったく違和感を覚えることもなく、スムーズでトルクフルな加速はかなり息が長く感じた。ちなみに富士スピードウェイでの試乗では、最高速は200km/hまでという指示があったが、この領域では安定性に一切の不安を覚えることもなかった。それはもちろんエアロダイナミクスとシャシーの優秀さによるところが大きいのは当然の結論だろう。

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コーナリング時の動きもまた素晴らしかった。どの速度域でもリニアなフィールを崩さないステアリングと、モノコックやサスペンションの剛性感はここでも大いに印象に残った部分。実際に感じるロールは、一般道ではほとんどゼロに近いが、富士スピードウェイではさすがにある程度の姿勢変化を意識させられる。しかしそれはあくまでもナチュラルな動きに終始するもので、前で触れたメーターパネル右側のパワートレーン用モード、「E」、「コンフォート」、「スポーツ」、「トラック」。左側のシャシー用モード、「コンフォート」、「スポーツ」、「トラック」を任意に選択することで、どのようなカスタマーにも最適なセッティングが実現できるように配慮されているのも嬉しい。

マクラーレンは、このアルトゥーラを起点に、これからどのようにプロダクション・モデルを進化させていくのだろうか。まさに新たな時代を迎えたともいえるマクラーレン。その未来には多くのスーパースポーツ・ファンが期待の視線を送っている。

photo:佐藤亮太

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モータージャーナリスト
山崎元裕

青山学院大学卒。中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、以後毎日のようにスーパーカーのことを考えて生きている。そんなスーパーカーが続々と誕生する、世界各国のモーターショー取材は何よりの楽しみであるが、もう1年以上は海外に足を運ぶことができず、最近は欲求不満気味の59歳。
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date 2024/12/20