MENU
search icon
media
Beyond magazineでは
ニュースレターを配信しています
  1. TOP/
  2. ANNEX/
  3. 21歳の大学生がベントレーを運転したら、超高級車を買うワケが分かった気がする
ANNEX

家一軒と同じ値段の自動車の価値ってなんだろう?

21歳の大学生がベントレーを運転したら、超高級車を買うワケが分かった気がする

author: 田中 謙太朗date: 2023/04/14

あまりクルマに興味のない人にとって、家一軒と同じ 値段の超高級車を買う人の気持ちはイマイチ理解できないだろう。たしかに、クルマ好きを自負する僕でも明確な答えを出すことは難しかった。デザインがいいことや走ること自体の楽しさはあるかもしれないが、それはあくまでも“乗っている間のハナシ”だからだ。しかし、まさに家一軒の値段であるクルマ、ベントレー『コンチネンタルGTC』が、「なぜ家一軒と同じ値段のクルマを買うのか?」という問いに答えてくれた。

「ベントレーに乗っている人は、渋くてカッコいいイメージ」と、今年でハタチを迎えた友人が口にした言葉をよく覚えている。ベントレーというクルマを「縁遠い高級車」ではなく、「ベントレー」として認識していることにも驚いたが、それを駆る人を「カッコいい人」と評したのは、港区あたりに出没するクルマ好きのオジサマではなく、東京のフツーの女の子だった。

クルマの楽しみ方を力説する理系オタクの僕に対して、彼女は「事故の心配やアルコールも気にしなくていいし、移動だけが目的なら電車の方が効率的だよね」と、イマドキの口ぶりだったから、彼女の言葉からうかがえるベントレーの強力なブランド力に驚きを隠せなかった。

そして奇遇にも、僕がラグジュアリー・カーの旗手であるベントレー『コンチネンタルGTC』の試乗記を書く機会を得たのは、ちょうどそんな話をしていた矢先の出来事だった。

image

 ベントレー『コンチネンタルGTC』
主要諸元:全長/全幅/全高:4880/1965/1405mm
ホイールベース:2850mm、車両重量:2200kg
駆動方式:アクティブAWD(All-Wheel-Drive)
燃費(WLTP):8.26km/L、
本体価格:2810万円

フルモデルチェンジされたベントレー『コンチネンタルGTC』が発表されたのは、2017年のフランクフルト・ショーでのことだ。航続距離が長めのグランド・ツアラーとして2003年に発表されて以降、ベントレーの主力車種として「ラグジュアリー・カーとはなんたるか」を世界に示し続けてきたモデルである。

正直なところ、『コンチネンタルGTC』の置かれた駐車場に向かうとき、僕の手には汗が滲んでいた。なんといっても“あの”ベントレーだ。当然、運転席どころか、助手席にも乗ったことはない。

知っている(急きょ、ググった)ことといえば、ル・マン24時間耐久レースの第5回(1927年)から第8回(1930年)において、英国紳士がドライバーとして参戦して4連覇を果たしたことと、英国王室御用達ブランドだったことといった、いかにも英国の高級車ブランドらしい事柄ばかり。ベントレーに乗る前から、「クラシカルな高級車に必要不可欠なストーリー」を知った僕は、そんなクルマをこんな若造の僕がどう評価したらいいものか、と戸惑いながらも、未知のものに触れることへの興奮は抑えきれなかった。

リアスポイラーのエキゾースト・パイプ部分とテールランプの形状を揃えている点も、デザインの統一感を生み出す要因のひとつ
トランク容量は358Lと、ゴルフや旅行にも対応可能なラゲッジルーム

駐車場に到着して、まず驚いたのはその存在感だ。全幅=1965mmと、たしかに幅広ではあるものの、ハッキリとした印象的なフロントフェイスのデザインによって数字以上の迫力がある。

ボディサイドに注目すると、ホイールアーチからリアに向かって、一直線に通るラインが見て取れる。「パワーライン」と呼ばれる、ベントレー特有のエッジの効いたプレスラインだ。数十年以上続くベントレー・ブランドのデザインの軸として、デザイナーは「パワーライン」からデザインを始めるといわれるほど、重要な役割を果たすラインである。

「パワーライン」に導かれてリアに回ると、象徴としての“Flying-B”を真ん中に携えつつ、キュッと引き締ったシンプルなデザインが目に入る。迫力のあるフロントからデザインの軸となる「パワーライン」を通って洗練されたリアへと、エクステリア・デザインに通る一本の思想を感じることができるだろう。

ドアを開けるとサイドシルを保護するトレッドプレートに刻印された大きな“BENTLEY”の文字が「ようこそ」とばかりに出迎えてくれる。クルマというよりもむしろ、邸宅に招待されたような気分になって、気が早いことにすでに上げていた片足を地面に戻して、襟を整えた。

サイドシル内側には表札代わりに“Hand created by BENTLEY MOTORS LTD CREWE, ENGLAND”の文字。自らの出自への誇りを表すように刻まれている。
image

 フロント、リアに関わらず、シートの実用面とデザイン性を両立している。ベントレー特有の「ダイヤモンド・イン・ダイヤモンド」のキルティングにも注目だ

2ドアではあるが、十分な広さのリアシートを用意されている。ヘッドレストには“Flying-B”の文字
image

気を取り直して、運転席に乗り込もう。

由緒正しいラグジュアリー・カーらしく、高い居住性能は申し分ない。クッションの効いたシートには通気性の高い多孔質加工が施された皮革が使用されており、グランド・ツアラーとしての長時間の運転を見越したあらゆる疲労に対する配慮が窺える。

ベントレーのインテリアを隅々まで堪能するためには、視覚だけではなく触覚にも気を配らなくてはならない。ハンドルを握り込むと、内側にステッチ(縫い目)があることに気づく。このステッチは手縫いであり、ベントレー・ブランドをもっとも分かりやすく感じさせる部品だ。想像の通り、製造にはかなりの時間を要する。今回乗ったような通常のコンバーチブルの場合では、1台あたりの製造には約150時間が必要だそうだ。

ハンドルにあしらわれた手縫いのステッチ。写真の部分の他にも、ダッシュボードから繋がるようにドア内張へ続く皮革部分をつなぎ合わせる

見て、触って、できる限りの方法でインテリアを確かめたら、ついにエンジンに火をつける。運転席から左手のセンターコンソールの底に位置する丸いスイッチに手を伸ばしたら、ガソリン車特有のスタート音に耳を傾ける。    

エアコンの操作やルーフの開閉、ヒーターのスイッチなど、一通りの操作をセンターコンソールに取り揃えた設計だ

まずは都内のクルーズに連れ出そう。アクセルペダルに力を加えると、想像よりも素直な動き出しを見せる。車体重量2000kgオーバーということもあり、ペダルを踏む前は少々重めなイメージを持っていたが、必要なときに必要な力を加えながら操舵できるため「ワイド・ロウな高級車だから扱いにくいかも」と勝手に入ってしまっていた肩の力を抜いて、基本的な動作を試してみる。

加速、制動、直進、旋回……と、都市部でせわしなく要求される基礎的な操作には車体の地力が試されるものだ。「コンチネンタルGTC」では、4輪全てで車体を支えるAWD形式を採用していることもあり、文字通り「地に足ついた」操舵感覚が伝わってくる。まるでひとつの快適な部屋が、そのまま車両の速度で移動しているようで、車体の中心を一本の推進力の線が貫くような驚くべき安定感だ。

2000-4500RPMにて最大トルク770(N・m)を生み出す4.0リッターV8気筒エンジンの力強さには舌を巻くばかりだ。0-100(km/h)にて4.0秒を記録する数字そのものからわかる瞬発力に加えて、加速の際には座面全体から力が加わるため、速度や加速度にかかわらず落ち着いて操舵できるのだ。

実際のところ、見たこともないような価格の高級車である『コンチネンタルGTC』に乗るにあたって、ワイド・ロウな見た目も手伝ってまさに“おそるおそる”ペダルを押し込んだものの、高い地力に加えて運転者を補助する安全機能が快適な旅路を演出してくれた。サイドミラー横に「死角センサー」が取り付けられており、運転席側奥深くや助手席側の斜め後ろなどのドライバーから死角になる部分に他の車が来た際に、「死角センサー」が作動して黄色い警告灯が光る。走行機能にオールインするという人を選ぶ設計ではなく、ユーザーならば誰でも「運転を楽しむ権利」を満喫できる機能を搭載している。

image

今回の試乗を通して最も強く感じたのは、ベントレー特有の魅力だった。クラフトマンシップを感じさせる内外装と、そこからつながる高い居住性、超一級の走行性能に加えて安心して乗り回せる安全機能など、これら全てを満たすクルマに出会うことはそうそうないだろう。

そして、なんといっても愛嬌がある。僕自身も「こんなクルマに乗れたらなんて素敵だろう」と心の底から思ったし、そのためにどんな努力ができるだろうと考えると、乗り終えた後の生活にもハリがあるのだ。確かに、走行性や豪勢な内外装というものはラグジュアリー・カーの提供する価値ではあるものの、それはあくまでも車に乗っている間のハナシだ。 車を離れている間すらも強力に精神に食い込んでくるもの、“本物”のオーナーたらんとする張り合いを提供してくれることこそがラグジュアリー・カーの真の価値だろう。

製品貸与:ベントレー

author's articles
author's articles

author
https://d3n24rcbvpcz6k.cloudfront.net/wp-content/uploads/2022/06/117.jpg

ライター
田中 謙太朗

2001年東京生まれ。早稲田大学在学中。共同通信社主催の学生記者プログラムに参加したことをきっかけに執筆を開始。その後、パナソニックのイベントへの登壇など、記者としての活動と並行して、英自動車雑誌『Octane』の日本版にて翻訳に携わる。主専攻である土木工学に関連したまちづくりやモビリティに加えて、副専攻に関係するサスティナビリティに関する話題など、これからの時代を動かすトピックにアンテナを張る。
more article
media
MIYASHITA PARK パンエスで、シャオミ・ジャパンの製品と「Xiaomi 14T Pro」の作例を楽しもう!
ANNEX
date 2024/12/20