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サスティナビリティとは、“誰もが無理をしない”状態を目指すこと

サムスンが語る、エネルギー効率性世界一のブランドへのビジョン

author: 田中 謙太朗date: 2022/09/18

韓国の家電メーカー「サムスン電子」(以下、サムスン)は、2021年に前年比18.1%増の過去最大の売り上げを記録。半導体工場の建設費として2兆円の投資が発表されるなど、その勢いは増すばかりだ。家電業界のリーディングカンパニーであるサムスンはどんなビジョンを描くのか。

今年の国際コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(以下、IFA 2022) で、私が訪れたカンファレンスの中で最も“IFAらしい”発表をしたのはどこかと問われれば、サムスンに一票を投じたい。IFAはラスベガスで開催されるエレクトロニクス・ショーであるCESと比較して「明日のライフスタイルを考える」という性格が強く、各企業はより近い未来を提示する傾向が強い。そして、その文脈の元における同社の発表は抜きん出た存在感を放っていた。

会期に先んじて行われたプレス・プレビュー内のプレスカンファレンスでは、ライフスタイルに最も近いテクノロジー企業としての同社の取り組みとビジョンが披露された。

“SmartThings”が家電を繋ぎ、スマートな生活を実現

サムスン・ヨーロッパにてマーケティング最高責任者と副社長を務めるベンジャミン・ブラウン氏は次のように語っている。

「パンデミックによって人々はインターネットを通してつながり、重要なサービスを多く生み出しました。働く場所はオフィスだけでなく、住環境でも効率性が重視されるようになっています。

今回の我々のイノベーションは“Do the SmartThings”です。コネクテッド機器によってテクノロジーを思うままにコントロールすることで、皆さまの生活をこれまでよりも快適なものにします。遠い未来の話ではなく、“SmartThings”はすでに起こっているのです」

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IFA 2022における同社の掲げる未来を説明するブラウン氏

ブラウン氏が話す“SmartThings”はただのスローガンではない。サムスンは2014年にホームオートメーション・ソフトウェアを手掛けるスマートシングス社を買い取り、“SmartThings”アプリケーションを利用したスマートフォンと家電の連携を以前から推進してきた。現在の登録ユーザー数は2億3000万人を超えている。

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SmartThingsは、アプリによるサムスン機器の管理のためのプラットフォーム

温度湿度センサーによる空調の最適化や家電製品の電源の切替、カメラ搭載型のロボット掃除機によるペットの監視、そして家電製品の電力使用量の可視化など、これらのことをアプリケーションによってわかりやすく管理することが可能だ。

“SmartThings”アプリケーションをプラットフォームとして家電製品のコネクティビティを確保することで、より快適な生活を提供することがサムスンの描くビジョンだ。

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“SmartThings”プラットフォームによって家中の家電製品を簡単に管理

「例えば、“SmartThings”によって洗濯機や食洗機、乾燥機などが終わった時間にアラームをかけておくことができます。また、私は三児の父でもあります。子どもが触って家電が予期せぬ動作を起こしたとき、“SmartThings”によって異常なアクティビティとして検知され、私の携帯電話にアラートを入れることも可能です」と、ブラウン氏。

AIによってエネルギーを可視化、管理、有効利用

カンファレンス内では2023年までに冷蔵庫、洗濯機、空調機器などの主要機器のすべてをWi-Fiに繋げることでコネクティビティを確保。“SmartThings”の機能のひとつであるエネルギー管理サービスの“SmartThings Energy”を初期装備としての提供を宣言するなど、同社のコネクティビティに対する強い姿勢がうかがえた。

SmartThings Energy対応のビスポークシリーズの新型洗濯機

サムスン・U.K.にてマーケティングマネージャーを務めるターニャ・ウェラー氏は、エネルギー管理サービスについて次のように語った。

「“SmartThings Energy”のひとつであるAIエナジーモードはアルゴリズムによって利用者のパターンを認識し、自動的に効率的な運用をすることで最大30%の使用エネルギーの削減を実現します。

具体的には、冷蔵庫の室温制御や低音での効果的な洗濯を自動的にコントロールし、暖房システムでは40%、空調機器では20%のエネルギーの節約が可能です。一般的な家庭では年間数百ユーロ(日本円で数万円)ほどの削減が期待できるでしょう。そして、私たちはエネルギー管理のテクノロジーを提供する“SmartThings”によって、エネルギーの効率性における世界一のブランドとなることを目指します」

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AIによるエネルギー管理システムを説明するウェラー氏

また、サスティナビリティへの解釈として、非常に重要だと感じたのは、ウェラー氏の語った言葉だった。

「サスティナビリティとは、“誰もが無理をしない”状態を目指すことです。スマートでなければサスティナブルではありません。そのために、サムスンは自動的でより快適な選択肢を提供していきます」

この惑星のためだけではなく、顧客も企業も最適な選択肢を取ることはすなわち“誰もが無理をしない”状態であり、サスティナビリティの言い換えとしてはとてもわかりやすく具体的な表現だ。

フューチャー・ジェネレーション・ラボ所属でデジタルコンテンツ部門のリーダーを務めるオ・ヨージュン氏と同ラボ所属のダニー・ケント氏は“Smart Things”による暮らしについて次のようにコメントした。

「ひとつの機器でひとつのサービスを提供するという考え方は、非常に複雑な動物であるヒトにはあまりマッチしません。さまざまな機器が連携することで新たな価値を作り出し、そしてその連携をより美しく行うのが“SmartThings”です。これによって、毎日の家事をシンプルにしてあなた自身のルーティンやエコシステムを確立することができ、より自分らしく生きられるようになります」

“SmartThings”による暮らしの変化を語る、同社フューチャー・ジェネレーション・ラボ所属のオ・ヨージュン氏とダニー・ケント氏

さまざまな業界にまたがる他社との連携も印象的だ。エネルギー効率性の高い住環境の実現を目的として、太陽電池メーカーのQCELLS社、太陽光発電インバーターのメーカーであるSMA社との提携をアピールした。それぞれ、太陽光発電の効率的な利用やより多くの接続を可能にするモジュールの開発がおこなわれ、総合電力事業を営むABB社とはエネルギー管理のプラットフォーム開発の点での協業を発表している。

また、衣類ブランドを営むPatagonia社とは海域に流れるマイクロプラスチックの削減を目的として協働する。衣類の繊維製品の研究や衣類を洗濯した際に発生するマイクロプラスチックの削減を期待できる洗濯機の開発に取り組む予定だ。

エンターテイメント業界からはショート動画アプリケーションのTikTokを運営するByteDance社と連携し、サムスンTV用に最適化された同アプリケーションを起動できることになる。

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 TikTokアプリのTVにおける提携を紹介するブラウン氏

“スマートに生きること”の手段をサムスンが提供

「賢くありたい」という人々の願いと、賢さへの価値はいつまでも変わることはない。IFA 2022でのサムスンはライフスタイルに対するコミットメントを強調し、普遍的な価値である“スマートに生きること”を具体的に説明した。より小さな労力で、かつ自動的に、誰にでも、“スマートに生きる”ことをコネクテッド家電製品によって提供していくことがサムスンの掲げる “イノベーション”の意味なのだ。

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ライター
田中 謙太朗

2001年東京生まれ。早稲田大学在学中。共同通信社主催の学生記者プログラムに参加したことをきっかけに執筆を開始。その後、パナソニックのイベントへの登壇など、記者としての活動と並行して、英自動車雑誌『Octane』の日本版にて翻訳に携わる。主専攻である土木工学に関連したまちづくりやモビリティに加えて、副専攻に関係するサスティナビリティに関する話題など、これからの時代を動かすトピックにアンテナを張る。
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