昨今、新型コロナウイルスによるリモートワークの影響で、ヒゲの剃り方や剃る頻度が変わってきた。パナソニックの調べによれば「テレワークが日常化した今、毎日剃らず、3日に1度くらいの頻度で剃る人が増加傾向にある」のだという。深剃りと肌への優しさ、ふたつのバランスを考慮して、男性美容のプロが選ぶモデルとは?
驚異の剃り心地。思わずため息が漏れる“パナソニック”
実は、電気シェーバーは3日分ほどの長さに伸びた、皮膚にへばりつくようなヒゲが苦手。それをすくい上げて剃るには何度も肌の上を往復させねばならず、それが肌への負担となっていた。そんな負担の軽減こそ、まさに各社が競い合ってきた部分でもある。ゆえに多様な製品があふれ、選びにくいという状況に陥ってもいる。そこに今、新しい選択肢が投じられた。
2021年6月6日より発売されるパナソニックのリニアシェーバー“ラムダッシュ”の6枚刃シリーズがそれだ。この新製品の発表会の招待状を受け取ったとき、正直なところ「まあ、刃が1枚増えただけだろう」と思っていた。実際、別のメーカーで6枚刃は既に出ているし、その使い心地も5枚刃に比べて「多少、よくなったかな」程度であったからだ。
しかし、最上位モデル“ES-LS9AX”を肌に当て、ひと剃りした瞬間に、そんなうがった思いは吹き飛んでしまった。頬など広く剃りやすい部分はもちろん、剃りにくいアゴ下や口もとのヒゲもサッと撫でるだけで驚くほどきれいに剃れていた。今までどんな高級な電気シェーバーでも筆者のガンコでへそ曲がりなくせのあるアゴ下のヒゲをスパッと剃ることはできなかったのに、だ。
その秘密は従来の“スリムコームスリット刃”に変わって搭載された“アゴ下トリマー刃”にある。もう少し詳しく解説すると、新しい“アゴ下トリマー刃”が長いヒゲを短くカットし、それを他の刃(“くせヒゲリフト刃”と“フィニッシュ刃”)で剃り上げるという二段構えをとったこと。この方式である程度長さがあるくせヒゲでも効率よくカットでき、従来の約4倍も向上した。
深剃りとともに重視される肌への優しさだが、“新密着5Dシステム”と“密着フロート刃機構”を搭載することで対応。360度に加え上下へとフレキシブルに動く5Dヘッドと、6枚の各刃の上下動、その相乗効果により軽く滑らせるだけで肌に優しく、無理なくフィットするのだ。
内刃は叩いて、焼いて、研ぐという古来から日本刀の製法で培われてきた安来鋼による“30°鋭角ナノエッジ内刃”を引き続き採用し、切れ味は抜群。駆動は同シリーズではおなじみの“高速リニアモーター”。ブランド史上最速という約220回/秒のストロークで、先述している6枚刃システムのパフォーマンスを十分に引き出している。
さらにメンテナンス面も改善され、以前、「外刃は1年、内刃は2年」と刃の交換時期が異なっていて面倒だったのが、今回のモデルでは外刃と内刃が一体になり、1.5年ごとの交換になった。これはブラウンが採用してきていたカートリッジ方式で、この方が断然、明快だ。そして、きっとアフターコロナでは便利な機能となるのが、収納した本体をType-A-Type-CのUSBで充電できるケースの存在。スタイリッシュなケースは荷物を減らしたい出張や旅行で活躍するだろう。
この6枚刃搭載のラムダッシュは3つのバリエーションがあり、市場想定価格は最上位モデル“ES-LS9AX”が6万6000円で、これには全自動充電洗浄機とUSB充電ケースが付属する。USB充電ケースのない“ES-LS9N”が5万5000円、本体のみの“ES-LS5A”が4万4000円、といずれもかなり高額だが、ヒゲの濃い人には投資価値があるはずだ。
リーズナブルで高性能。バランス感抜群の“ブラウン”
一方でこんな時代に売れ行きが好調と聞くのが、ブラウンの中価格帯。昨年、2020年8月にフルモデルチェンジし、発売後、家電量販店でトップの売上を誇ったという。“シリーズ5・6・7”がそれにあたり、筆者も実際に使ってみたが特に“シリーズ7”の出来が素晴らしい。“シリーズ5”の“50-R1000s”は1万円を切るコストパフォーマンスのよさで初めてヒゲを剃るという中高生の選択肢としては魅力的だが、やはりこの中では“シリーズ7”に軍配を上げたい。
というのもブラウンの矜持ともいえる前後のみの首振りに固執せず、縦横に首振りするヘッドを採用したその柔軟性に拍手を送りたいから。3枚刃ながらも、ヒゲの濃さを自動で読み取ってパワーを落とさず調整する“人工知能”を搭載し、深剃りが可能に。とりわけヒゲが濃いというわけでなければ、3枚刃でも十分なはず。100%防水設計で、お風呂剃りにも対応する。ただしトリマーが内蔵されていないのでキワゾリが必要な人にはやや不満があったが、この4月に内蔵ではないがキワゾリ刃がアタッチメントとして搭載されたモデルが発売された。この消費者ニーズを素早く汲み取る姿勢もさすがというべきであろう。
ブラウンといえば“アルコール洗浄システム”が大きな特長だが、このシリーズ7の上位機種“70-S7000cc”には1万7000円前後の価格帯なのに、自動洗浄機が付属しているのも評価が高い。肌に直接当てるシェーバーがヒゲくずや角質、皮脂などで汚れていると雑菌が繁殖し、肌荒れの原因ともなる。それをボタンひとつで、除菌洗浄、潤滑化、そして充電までできるメンテナンス性のよさも評価したい。洗浄機が従来よりもコンパクトになっているため、洗面台で邪魔になることもないだろう。
パナソニックとブラウン、いずれもグレードが違うので単純な比較は意味がない。私が男性美容の専門家として深剃りと肌への優しさのバランスを考慮し、価格で選ぶとすれば、コストパフォーマンス重視ならブラウンのシリーズ7の自動洗浄機付き“70-S7000cc”を、そして雲上の剃り心地に投資できるならパナソニックのラムダッシュの6枚刃、しかもUSB充電ケースの付属する最高峰の“ES-LS9AX”を選ぶ。
製品提供:パナソニック、ブラウン