MENU
search icon
media
Beyond magazineでは
ニュースレターを配信しています
  1. TOP/
  2. ANNEX/
  3. 60万円オーバーの全部のせ「MacBook Pro」の体験価値を求めて
ANNEX

次世代のノマドクリエイターへ

60万円オーバーの全部のせ「MacBook Pro」の体験価値を求めて

author: 小山龍介date: 2021/12/25

AppleがiMacを発売して奇跡の大復活を遂げたときにさえ、今のAppleの成功は誰ひとり予想できなかった。その成功のエンジンとなったのは、ユーザビリティに優れたOSであり、iPhoneとそれを取り巻くエコシステムであった。そして今やその主役は、あらゆるコンピューティングのコアとなる独自設計のチップへと移っている。

今回、M1チップがさらにM1 ProとM1 Maxへと進化するアップデートが行われた。私は迷うことなく、最高速のチップに32GBのメモリ、8TBのSSDという、いわゆる「全部のせ」を選択した。その選択に今のところ、まったく後悔していない。

フルスペック環境を持ち運べる利便性

昨年、インテルからM1へと移行に伴って、まず多くの人が圧倒されたのが、バッテリーの持続時間であった。徹底した省電力化のおかげで、タブレットよりも長持ちするMacBook Proのバッテリーに、本当に驚いた。昔は予備バッテリーや、大きなモバイルバッテリー(PCに充電できる高出力タイプ)を持ち歩いていたこともあったけれども、そんな不便さから、とうとう解放される。M1 Macは、そうしたモビリティをバッテリーの心配なく発揮できる初めてのノートPCと呼んでもいいだろう。

正直、重い作業をしなければ、MacBook Pro M1 Pro/Maxは不要である。M1のスピードで十分であり、買い替えたところでその差はほとんどわからないだろう。今回の一番の変化は、グラフィック性能であり、動画の編集などにおいて大きな効果を発揮する。

4TBほどの動画データを入れて編集している

その点で、メモリとSSDが大幅に増えたことは、まさに動画編集に向けたアップデートと捉えていいだろう。メモリについては、M1が16GBまでだったのにMaxであれば64GBまで積めるようになった。またSSDも最大8TBという、それなりの長さの動画を編集するに十分な容量を準備した。

私は、64GB、8TBを選択した。唯一残念なのは、これで60万円を超えてしまうという価格だ。いくらなんでも高すぎる。しかし、値段を差し引いても、フルスペック環境を手軽に持ち運ぶことができ、外部ストレージがなくてもサクサク動画編集できる環境は、何者にも代えがたい。YouTubeを始め本格的な動画メディア時代にあって、撮影から編集までを外出先で済ませることができるというのは、大きな武器だ。

Appleはデザイン哲学を捨てて利便性をとった

しかし一方で残念なことがある。Appleがこれまで堅持してきたデザイン哲学を捨てたような筐体である。初代MacBook Airの登場以来、できるだけ薄く、しかも刀のようにしなやかな曲線で構成されていたMacBookが、どっぷり太ってしまったのである。デザインに緊張感が失われてしまった。

もちろんこのほうが内部空間も広がりバッテリーも多く積める。さらに、外部端子もやたらに増えた。HDMIやSDカードは、今回アダプターなしで接続ができるようになった。便利である。便利であるけれども、本当に納得がいかない。裏面には、MacBook Proと刻印されてもいる。端的に言って、ダサい。

便利だが、もやもやするHDMIとSDカードスロット

禅にのめり込み、Less is Moreのデザインを追求したスティーブ・ジョブズや、日本の刀鍛冶の鋳造工程をみるためだけに来日するほどシンプリシティにこだわり続けたジョナサン・アイブのデザイン哲学は、ここに来て過去の遺物として追いやられてしまった。

これからのノートPCのスタンダードを設定するデバイス

それでもなお、やはり買ってよかったと思うのは、これからのノートPCのスタンダードを、このM1 Pro/Maxが設定してしまったような高速処理とバッテリー寿命だ。ノマドワーカーという言葉が流行したが、それはあくまでワーカー、すなわちホワイトカラーの話であり、クリエイターはまだまだ重いノートPCを持ち歩かざるをえず、ノマドのような自由度はなかったように思う。そのくびきからクリエイターたちを解き放ってくれるのに、60万円は安……くはないが、法外とは言えないだろう。

こうした高価な機材を買うとき、私は未来の体験チケットと思って支払うようにしている。アミューズメントパークの入場料だって、それなりにする。それがまだ見ぬ未来を体験できるチケットだったら、もっと高価だろう。

未来のクリエイティブツールとして、ノマドクリエイターたちにぜひ手にとってほしい道具である。


author
https://d3n24rcbvpcz6k.cloudfront.net/wp-content/uploads/2021/07/106.jpg

ライフハッカー
小山龍介

1975年福岡生まれ。株式会社ブルームコンセプト代表取締役。企業のイノベーション支援、文化財を活用した地域活性化などを専門にコンサルティングを行う。複数のプロジェクトをこなす中で生まれたテクニックを紹介する元祖ライフハッカー。著書『IDEA HACKS!』訳書『Business Model Generation』など多数。名古屋商科大学准教授。京都芸術大学非常勤講師。
more article
media
MIYASHITA PARK パンエスで、シャオミ・ジャパンの製品と「Xiaomi 14T Pro」の作例を楽しもう!
ANNEX
date 2024/12/20