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カメラの名門「ライカ」銘は伊達じゃない!?

最強カメラ搭載スマホ「LEITZ PHONE 1」は18万円台ならむしろ安い!!

author: 山下 達也date: 2021/10/27

2021年7月に発売され、スマホファンのみならず、カメラファンにも衝撃を与えたシャープ×ライカのコラボモデル「LEITZ PHONE 1(ライツフォン ワン)」。スマホ史上最大級となる1型イメージセンサー&高品質ライカ銘レンズ搭載による高画質や、ライカ全面監修による美しいデザイン(そして、18万円台という強気な価格設定)で早くも話題ですが、その実力はどれほどのものなのでしょうか? その価格に見合う価値があるのかをチェックしてみました。

隅々までこだわり抜いた文句なしのライカスマホが登場!

これまでライカ銘レンズを搭載したスマートフォンと言えば、古くはパナソニック(2013年に個人向けスマホ事業から撤退)、近年はファーウェイが有名です。ファーウェイは現在もライカ銘レンズを搭載したスマートフォンを開発・販売し続けていますが、米国の対中制裁の影響によってAndroidスマホの基本的な機能がほとんど使えなくなってしまい、一般ユーザーには勧めにくい選択肢となっています。

そんな中、ライカの新たなパートナーに選ばれたのがシャープでした。2021年6月に発売されたシャープのフラッグシップモデル「AQUOS R6」はライカ監修のもと、専用設計の高品質ライカレンズとスマホカメラとしては圧倒的に巨大な1型イメージセンサーを搭載し大変な話題となりました。今回紹介する「LEITZ PHONE 1」は、その「AQUOS R6」のカメラ部分以外にもライカが手を入れたと言うまさに“全面監修”モデルです。

ちなみに「LEITZ(ライツ)」とは、独ライカカメラ社の旧社名(正確にはエルンスト・ライツ)。そもそも「ライカ」という名称は「LEITZ CAMERA(ライツのカメラ)」を略したものでした。「LEITZ PHONE(ライツの電話)」という名称はそこに由来するわけです。もう、命名からして粋ですよね。ドラマがあります。

そして見た目も昨今のコモディティ化したスマホの中で明確な個性を主張しています。これは写真を見ていただければ一目瞭然なんですが、随所にライカ製カメラのエッセンスが上手に盛り込まれているんですよね。

例えばここ。この端部の処理が紛れもなくライカ。シルバーとブラックの塗装も質感も含めて上手に調色されていて実にそれっぽいです。最近のライカ製カメラはしっとりしたマットブラック塗装とアルミ削り出しフレームを組み合わせたデザインを多用しているのですが、「LEITZ PHONE 1」はそれを上手に再現できていると感じました。惜しむらくは、最大のチャームポイントと言える赤いライカロゴがプリントであること。うーん、ここはバッヂにしてほしかった。

そのほか、細かいところで個人的に感心したのは、側面金属フレームに設けられた滑り止めの溝がライカ製カメラのローレットを模していること。しかもよく見るとアンテナとしても機能する金属フレームを分割する樹脂パーツの幅をローレットの溝とピッタリサイズを合わせているんです。気がついた時はここまでやるのかって笑ってしまいました。

さらにデリケートなカメラ部分を保護する専用レンズキャップも同梱。もちろん金属製でライカのロゴ入りです。実用面を考えたらレンズキャップなんて付けたくないんですが、これについては話が別。装着して見せびらかしたくなるレンズキャップは初めてなんじゃないですかね。使い込んで細かい傷が付いていくとさらに愛着が増しそう。マグネット式でパチっとはまるのも気持ちいいところです。

そしてもう1つ。標準アクセサリーとして同梱されるシリコンケースも要注目。これ、単にピッタリフィットしてボディを保護してくれるだけでなく(もちろん、この状態でレンズキャップも装着可能)、なんとライカロゴがオリジナルを想起させるニッケルバッヂになっているんです。ケースを装着するとせっかくの本体デザインが隠れてしまうんですが、バッヂのおかげでトントンって思えてしまいます(チョロすぎ?)。

なお、レンズキャップとシリコンケースは先日、早くも新色が登場。ライカの公式オンラインストアでブラックのレンズキャップ(価格:5500円)と、レッド、サファリのシリコンケース(価格:9900円)を別売で購入できるようになりました。

時代に逆行する一点豪華主義のシングルカメラ、その実力は?

デジタルカメラの画質はとても大雑把に言うと、画素数が同じであればセンサーサイズが大きいほど、1つの画素の面積が大きく=多くの光を受けられるようになり、高画質になります。これは特に光量の少ない暗所撮影時(薄暗い室内くらいでも)に大きな違いとなって表れます。

一般的なスマホカメラのセンサーサイズは1/2.3型~1/3.4型。人気の「iPhone 12 Pro」は1/2.55型前後(1200万画素)、そのカメラ性能をさらに向上させたという「iPhone 12 Pro Max」で1/1.8型前後(1200万画素)です(センサーサイズは編集部推測値)。このことからも「LEITZ PHONE 1」の1型センサーがかなり大きなサイズであるということがわかるでしょう。

もう少し踏み込んだ解説をすると、1型センサーの面積は1/2.55型センサーの約5倍。単純にそれだけ多くの光を取り込めるというわけです。「LEITZ PHONE 1」の1型センサーは2020万画素のため、1つひとつの画素が受けられる光の量が約5倍になるわけではありませんが(単純計算では約3倍になります)、それでもその差は圧倒的です。

もちろんカメラの画質=センサーサイズではありません。しかし「LEITZ PHONE 1」はそれ以外の点でもハイレベル。特にレンズはライカとシャープが共同で開発した極めて高品質なものが搭載されています。その画質が悪かろうはずがないのです。

……と、書きましたが、実はこれまで多くのスマホカメラを試してきた身として、少しだけ不安に思っていることがありました。

それは「LEITZ PHONE 1」が最新のスマホカメラトレンドと逆行するシングルカメラ構成であることです。皆さんご存じのように今どきのスマホは複数のカメラを搭載するのが当たり前になっています。iPhoneでは3つ、中には5つのカメラを搭載した製品も存在します。これらの多眼カメラ搭載スマホでは、1回のシャッターで撮った複数の写真を合成することでシングルカメラで撮ったよりも高画質な写真を出力します。

特に昨今の製品ではAI技術を駆使することで驚くほど画質が向上。シーンによっては並みの一眼レフより情報量の多い写真が撮れてしまうレベルにまで進化しているのです。

つまり、どんなに「LEITZ PHONE 1」のカメラが優れていても、1つしかないのでは多眼カメラ搭載のライバル機に負けてしまうのではないかということですね。

では論より証拠、実際に「LEITZ PHONE 1」とトリプルカメラ構成の代表格で、スマホカメラ画質の最高峰の1つとされている「iPhone 12 Pro Max」の画質を比較してみましょう。

LEITZ PHONE 1 作例
iPhone 12 ProMax 作例

どうでしょう、違い、分かりますか?(注:作例は比較しやすいようトリミングして画角を揃えています) 見てもらいたいポイントは以下の通りです

まず、分かりやすいのはボケ感ですね。光学的な理由でレンズが明るく、大きなセンサーサイズのカメラの方が背景をボカしやすいのですが、その違いがはっきり出ていると思います。これによって「LEITZ PHONE 1」の方がメインの被写体となっている葉っぱを印象的に目立たせることができています。これは期待通りでした。

対して情報量についてはどうでしょうか? 例えば木の根っこの部分を見てみてください。iPhoneの方が明るく細かいところまで描けているように思いませんか? この木肌の質感の再現具合は本当に素晴らしいですね。丘の向こうの団地の壁もiPhoneの方が白トビを抑えられています。この「情報量の多さ」が多眼カメラの強み。明暗差の大きなシチュエーションで特に大きな差が付きます。

結論を出す前にもう少しサンプルを見ていきましょう。

LEITZ PHONE 1 作例
iPhone 12 ProMax 作例

これは夏日がさんさんと照りつける公園で撮った写真です。「LEITZ PHONE 1」と比べてiPhoneは空の色がアメリカ西海岸かと思えるほど青く、日陰の部分のテクスチャーもよく描写されていますよね。

でも、撮影した私の主観では実際の光景は圧倒的に「LEITZ PHONE 1」の方なんです。iPhoneで撮った写真は良く言えば「アメリカ西海岸の空」なんですけど、悪く言えば合成写真の不自然さを感じてしまいます(実際は西東京の空です)。

LEITZ PHONE 1 作例
iPhone 12 ProMax 作例

そのほか、夕暮れの撮影なんかは特に差が付きやすいシチュエーションですね。実際にはかなり暗かったのですが、iPhoneの方はまるで昼間のように撮れてしまいます。これを「すごい!」と思うか「ちがう、そうじゃない」と思うかが分かれ目なのかも。

最終的には好みの世界になってしまうのですが、リアリティや情緒感重視なら「LEITZ PHONE 1」、情報量重視ならiPhoneを始めとした多眼カメラ搭載スマホというのが私の結論です。どちらが上ということはないと思うのですが、これまで一眼レフなどで作品作りなどを楽しんできた人には「LEITZ PHONE 1」の方がフィットするんじゃないでしょうか。

カメラ以外の部分はシャープ製ならではの安心感。日常使いもバッチリ

複数カメラで撮った写真をAI技術で1枚の美しい写真に仕上げる「コンピューティショナルフォト」が主流となりつつある現在のスマホカメラ。「LEITZ PHONE 1」はその中で、あえてシングルカメラで撮る価値を問うた製品です。そのメリットは何と言っても自然に撮れること。使いこなしにはそれなりに知識と経験が必要となりますが、そこに楽しさを見出せるのであれば、個人的には断然「LEITZ PHONE 1」がオススメです。

ただし、カメラのレスポンスがややもたつき気味だったり、画質以外の細かいところでは不満を感じる部分も(特にカメラアプリ起動時に選択される「1.0x」=24mm相当の画角が実際には「0.7x」=19mm相当の画をトリミングしたものであることには疑問が残ります)。今後、「LEITZ PHONE 2」「LEITZ PHONE 3」と進化していくなかで、ぜひ全体的な使い勝手も向上させていってほしいところです。個人的にはいつか「絞り」を設定できるようになることに期待!(可変絞りは過去にGalaxyが「デュアルアパチャー」というかたちで搭載していましたが、最新モデル群では廃止されています)

なお、本機の気になる価格はおよそ18万円台。ベースモデルである「AQUOS R6」がおよそ13万円前後であることを考えるとかなりのプレミア価格なのですが、レンズキャップやシリコンケース(合わせておよそ1万5000円)が同梱されることを考えれば、そこまで無茶な価格設定ではない……はず。なにより、あの「ライカ」が20万円以下で買えると思えばむしろ安いまであるのでは?

今回のレビューではデザインと基本的な画質に絞り込んでレビューしましたが、カメラとしての基本機能は、使い勝手の良さに定評のあるAQUOSシリーズ譲り。6.6型の有機ELディスプレイはきめが細かく見やすいですし、バッテリーもトップクラスの大容量です。さらに防水やおサイフケータイにもちゃんと対応しています。その尖ったコンセプトからピーキーなスマホと思われがちですが、ふだん使いもしっかり快適でした。価格にさえ納得できるなら、ぜひ!

製品貸与:ライカ

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デジタルグッズライター
山下 達也

ジアスワークス有限会社所属。「デジタル」が世の中に浸透し始めた90年代後半から、さまざまな情報誌・オンラインメディアで、PC、カメラ、スマートフォン、AV機器など、幅広いデジタル機器を紹介してきた。近年はサブカルチャーやテクノロジーなどの分野でも活動中。合理性、機能性だけでは説明できない“トキメキ”のあるガジェットをこよなく愛する。
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