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BYDのマーケティング部長が語る

バッテリー技術の優位性で実現する未来へのコミットメント

author: Beyond magazine 編集部date: 2024/03/20

東京モーターショーからモビリティショーへの転換と共に、中国を代表する電動車(EV)メーカーであるBYDは、バッテリー技術と急速な意思決定に焦点を当てた戦略を採用している。ここではBYD Auto Japanのマーケティング部長・遠藤友昭氏に、彼らの特徴的なブレードバッテリー技術、フラットな組織文化、SDGsにおける多様性と地球環境問題へのコミットメント、そして日本市場での展望について探ってみた。

東京モーターショーからモビリティショーへ

ーー東京モーターショーからモビリティショーへとテーマが変わりましたが、中国を代表するEVメーカーとなったBYDさんにとって、将来の「モビリティ」とはどのようなものとお考えでしょうか?

BYD Auto Japan マーケティング部長遠藤友昭さん(以下、遠藤さん):BYDは元々バッテリーメーカーとして創業して、そこから自動車事業に参入した経緯がございます。ですので、当然バッテリーの技術力においては、一日の長というか、我々の強みがあると自負しております。

この高いバッテリー技術を使って、ミドルサイズSUV「BYD ATTO 3」、先月9月に発売したコンパクトEV「BYD DOLPHIN」、今回初めてご案内するスポーツセダン「BYD SEAL」。さらにラグジュアリーブランド「仰望(ヤンワン)」のオフロードSUV「U8」やメルセデス・ベンツとの合弁で開発した「DENZA(デンツァ)」のプレミアムミニバン「D9」など、ここまで幅広いEVの選択肢を全方位的に用意できるメーカーというのは、我々以外に世界ではほとんど存在しないのではないかと思っております。

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遠藤友昭(えんどうともあき)。BYD Auto Japanマーケティング部部長。2023年8月入社、商品企画とマーケティングコミュニケーションを担当。BYD入社前はメルセデス・ベンツ日本をはじめとした欧州輸入事業会社にてマーケティング活動に従事

今回我々は初めて参加させていただくにあたり、幅広くEVの選択肢を皆さんにお見せすることで、我々のブランドパーパスとしてeモビリティが皆さんのもの、EV自体をもっと身近な存在であると感じてもらうことが最大の目的です。

EVが普及することで、ゼロエミッション、カーボンニュートラル、カーボンフットプリントの削減といったところにも繋がってくると思います。我々の掲げているブランドビジョン「cool Earth by one degree(地球の温度を一度下げよう)」について、プレスカンファレンスでも語られましたが、我々は地球環境にも良いものを作って、EVの選択肢を増やして、多くの皆さんに手に取りやすいものにすることが、将来のモビリティに対してやるべきことと考えております。

BYDの戦略ーバッテリー技術と迅速な意思決定

ーーBYDが、その他のバッテリーの技術を持った会社と差異化できる特徴っていうのはありますでしょうか。

遠藤さん:そうですね、ブレードバッテリーという、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを名の通り、刀のように薄く細長くしたものをバッテリーパックに敷き詰めることで、すごく床面をフラットにすることができます。そのブレードバッテリーを前提にしたプラットフォームを全ての車種に展開しておりまして、それをEプラットフォームというんですけど、そのe-Platform 3.0っていうものが、今は「BYD ATTO 3」と「BYD DOLPHIN」と「BYD SEAL」、に搭載されております。

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これによって後ろの席にセンタートンネル(床の出っ張り)がなくなり、居住性が非常に良くなります。我々の一番クルマ作りの特徴は、バッテリーの技術とそれを転用した車の技術が非常に高いことが、一番我々の特徴だと思ってます。

BYDの文化ーフラットな組織構造とグローバルな職場環境

ーーBYDの中で新しいものを生み出そうとするときに、会社の中では、従業員の皆さんはどのように仕事をしているのでしょうか?

遠藤さん:私が感じてるのはすごく意思決定が早いというふうに感じてます。例えば車を日本に導入することが決まるなら、今までの他の輸入車もしくは国産の車会社だと、例えば3~4ヶ月どころか、中には1年かかってしまうこともありましたが、BYDの場合、これは極端な例ですが1ヶ月以内で決まるものとかもありました。

そういった意思決定の早さは、動きの早い中国企業ならではなのかなと思っています。イノベーションを生み出す際に意思決定の早さは、間違いなくプラスに働くものだと思います。

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あとは社員同士がフラットな形で会話ができています。自動車事業部の代表取締役も僕にダイレクトに話してきますし、僕のところにいるスタッフにもダイレクトに話をしてくれます。僕もスタッフも何も臆することなく代表取締役と会話しますし、当然そのルールも、普通に何かを忖度しながら話すとか、そういうこともなく、「ここはどう思う?」と上司から聞かれたことに対し、「あまり適合しないので良くないと思いますが」と答えると、「あっ、そうか」と。

それぞれの役割を担っているプロが言うんだからそう言うことで、マーケティングの事だったら任せていただけるとそういうすごくフラットな関係と意思決定の早さ、こういったやりとりがイノベーションを生み出すことに繋がっていると思います。

ーーすごく興味深かったです。私(平田)も最近まで就職活動をしていたので、若い人もイノベーションを生み出すにはフラットに話せる環境が必要だと思いました。

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BYDとSDGsー多様性と地球環境問題への取り組み

ーーSDGsに関する質問があります。BYDでは、女性や少数派の人たちが働きやすい環境をどのように作っていらっしゃるでしょうか。また電気自動車を初め、地球環境問題の取り組みっていうのを教えていただきいと思います。

遠藤さん:例えば女性が働きやすい環境を作るために、こういう意思決定の早い組織だったり、フラットな組織、こういったものが寄与しているのかなと思います。

それがゆえに、女性のボードメンバーの役員の方が多い印象があります。例えば、アメリカ自動車事業部の本社のトップや、全世界の財務部門、ブランドの統括責任者もすべて女性です。こういう重要なポストに女性がついていることから見ても、女性が活躍できるような組織形態、そういうチャンスがある企業だと自負しております。

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少数派の人というわけではないんですが、ダイバーシティのお話をすると、日本に会社を構えているので、日本人のスタッフに加えて、中国人の方も多いです。僕のチームにいるスタッフの中で、新卒の中国人女性は日本の大学を卒業されており、日本語が堪能です。

逆に2年目の日本人女性は中国に留学していた経験があるので中国語が堪能で、そのようなスタッフがいることで、何かお互いの文化を尊重し合う空気が会社全体には流れています。特に日本で仕事をされてる中国人の方はほとんど日本語を話して、日本語がすごく上手な方は多くいらっしゃいます。こういったお互いの文化を分かり合った上で仕事ができていると感じます。

環境問題の取り組みでは、逆説的になるかもしれないんですけれども、とにかくEVを普及させることが一番だと考えています。先ほども言いましたけど、ブランドパーパスとして「eモビリティを、みんなのものに。」を掲げていて、我々としてはまずはEVに乗ってもらうことで、カーボンフットプリントを減らし、それが地球環境に良いこととして作用していくっていうふうには思っています。

まずはこのEVへのシフトを、他の会社さんが持っているマーケットを奪うということではなくて、マーケットを広げて作っていく、他社さんと一緒に日本のプレマチュアなEV市場というマーケットを広げていくことで、よりエミッションを少なくして、地球環境に対してコミットしていくことが我々の企業理念と行動原理というところに繋がってくるかな考えています。

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(左)川端準(かわばたじゅん)。2005年マレーシア生まれ、神奈川県出身。情報技術の応用に興味を持ち、早稲田渋谷シンガポール校から早稲田大学人間科学部人間情報科学科に進学。

(右)平田静花(ひらたしずか)。2000年長崎県生まれ。社会問題に興味を持ち、社会について学際的に学ぶため、早稲田大学教育学部社会科公共市民学専修に進学。

BYDの日本市場における展望と戦略

ーーでは、BYDが日本で目指す姿とは、どのようなものでしょうか?

遠藤さん:まずは我々ができることとしては、EVの選択肢を皆さんにご提供することだと思っております。先ほどの話の繰り返しになりますが、ブランドのラインナップも求めやすいものからラグジュアリーなものまであります。原価はそれよりもアフォーダブル、とはいえプレミアムで、こういった今までなかった選択肢を提供することで、皆さんがEVに対して持っていたバイアスを取り除くことを目指していて、将来的には我々の皆でこのEVというモビリティは一般化していくことが一番重要なのかなと思っています。

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ジャパンモビリティショーのプレスデー開催の本日、日経新聞の全面広告に「ジャパンモビリティショーに出展させていただきます」というメッセージ広告を出したのですが、そこで出したメッセージが「ありふれた車になりたい」という逆説的なキーメッセージを出しています。

EVと書いて“エレクトリック・ビークル”でしたが、それを“エッセンシャル・ビークル”、すなわち不可欠なモビリティに変えていくことを主眼として、ジャパンモビリティショーのプレスカンファレンスをやらせていただきました。EVというものをより浸透させていくことが、今我々の一番の活動原理、原則であります。それが広まっていくモビリティというのは、我々が望むべき未来であると考えています。

Interview&Text:川端準、平田静香

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