床の間には現代アートを飾るのが粋【和室に似合うモダンインテリア実例】

空き家の多くは古民家のような日本家屋。現代の生活様式と照らし合わると、つい暮らしづらいと考えてしまいがちですが、和室に洋家具を合わせるのって実は難しくないんです。先入観を捨てて外国人の視点で見てみると、いろいろとアイデアが湧いてくると思います。

床の間にコンテンポラリーアートを飾るのもそのひとつ。この部屋は、好きな音楽をかけながらお茶を飲み、趣味の時間として自由に過ごすことをコンセプトにしました。

包まれるような座り心地が楽しめるB＆B イタリアのアームチェアは、そんな趣味の時間の相棒といえる存在です。僕が大好きなチェアのひとつですね。和室は直線的に作られているので、このグラマラスな曲線はとても合う。軽量でフレキシブルに使えるサイドテーブルも円形にしています。今回はブラックを使ってシックなスタイリングしてみましたが、カラー展開が豊富なので、アクセントとして色のあるものを取り入れてみるのもいいと思います。

そして、トム・ディクソンの代表作のひとつメルト・ペンダント。メルトは溶岩という意味もあり、有機的なフォルムからは生命力やエネルギーを感じさせてくれます。照明というよりもひとつのアートとして楽しむことができる。見る場所によって映り込みに変化があるのも面白いですよ。

高度な技術を駆使し、厚手のレザーを熱成形したアームチェア。ベースフレームは3種類用意されている。

「とにかく、この曲線美ですよね。靴の製造技法からインスピレーションを得たといわれています。レザーの質感と完璧なフォルムは、どんな空間にもフィットします。座り心地が本当によくて、体が包まれる感覚。ゆったりと極上の時間を過ごすことができると思います」

硬質ポリウレタンに印刷と塗装を施し、光沢仕上げを施したスモールテーブル。2019年にピエロ・リッソーニがデザイン、18色のカラーバリエーションが用意されている。

「塗装の艶感が上品で、日本の漆にも似た味わいがあるんです。軽量なのでフレキシブルに使え、シンプルで飽きのこないデザインなので、どんな場所でもすっきりと溶け込んでくれるのが魅力です」

「不完全で、有機的、そして自然発生的に創られた光のオブジェ」をコンセプトに生まれたメルト。熱で溶けたガラスのようだが、素材は射出成形されたポリカーボネート。シェードの内側は塗装の濃度が変えられており、点灯時には物体が溶けたような視覚効果が生まれる。

「見る角度によって形が違い、映り込み方も違う。照明でありながら、オブジェとしても楽しめるアート作品です」

福岡を拠点とするアーティストのKYNE（キネ）。大学時代に日本画を学び、並行して2006年頃から活動をスタート。2010年頃、現在に至るクールな表情の女性像を確立した。

「アートのオークションに通っているのですが、ずっといいなと思っていたんです。今や大人気アーティストですよね。東京や日本を感じる現代アートであり、シンプルな中にストーリー性が見える。色使いも好きで、この作品はずっと玄関に飾っていました」

Text：富山英三郎
Photo：千葉顕弥