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ソニーカメラ一式を売り払うほどの衝撃

富士フイルム「GFX50S II」は、光と記憶を撮るカメラ

author: 小山龍介date: 2021/12/14

50万円を切る価格で富士フイルムのから登場したラージフォーマットデジタルカメラGFX50S IIは、その大きなセンサーサイズがもたらす豊かな階調に、すっかり惚れ込んで買ってしまった。どれくらい惚れ込んだかというと、2013年のα7登場から使い続けているソニーのEマウントのボディとレンズをすべて、売ってしまったくらい。ソニーEマウントからフジGFへの完全移行だ。

ソニーに比べれば、オートフォーカスは遅いし、筐体も(先代からサイズダウンしたとはいえ)大きい。でも、ソニーの約1.4倍になる65mmのマウント径は、面積の単純計算で2倍の光を取り込むことになり、またその光を受け止めるセンサーも面積比で1.68倍。シャッターを押し、ラージフォーマットの大きなメカニカルシャッターがガシャッと落ちるたびに、キラキラとした光の粒子を吸い込む感じがする。そして実際に撮った写真を見ても、その豊かな階調に、めまいがしてしまう。

尾道で撮影した一枚。船を待つ日常が、演出なく映り込む

実はGFX50S IIが出るというので、先代の50Sをヤフオクで安く競り落とし、「安く手に入ったし、試しに使ってみるか」というくらいの感じでラージフォーマットを使い始めたわけで、ここまでのめり込むとは思わなかった。「50Sで十分」と何度も念じたけれども、手ブレ補正を搭載した新機種に乗り換えるまで、時間はかからなかった。

ソニーのEマウントの限界をちょうど感じていたところでもあった。明るい大口径レンズを使っていると、本体の口径が小さすぎてなんだかバランスが悪い。ミラーレス後発のキヤノンが54mm、ニコンZが55mmという口径を選んだ今、登場当初APS-CしかなかったEマウントの口径46mmは、いかにも小さく感じてしまう。もちろん、メーカーは「フルサイズでも大丈夫」と言っているし、たしかに大口径のレンズも揃っている。

お寺の境内で撮影した一枚。晩秋の柔らかな光を捉えた

しかしだ。光なきところに写真は写らない。大きな窓から飛び込んでくる景色のほうが、きれいだし、迫力もある。細かな光学的な理論を知らなくても、撮れる写真からその違いを直感的に感じてしまうのも、事実なのだ。とにかく、GFフォーマットのカメラを使い始めたら、ソニーのカメラを手にとって写真を撮ろうという気分にならなくなってしまった。

尾道の古民家での一枚

実際に使ってみて実感しているのが、富士フイルムのフィルムシミュレーションとの相性の良さだ。富士フイルムのXマウント(APS-C)のカメラも使っていたことがあるし、フィルムシミュレーションも使用していたが、それほど印象的ではなかった。APS-Cのセンサーサイズだと、どうしても「計算で作った画面」として、人工的な操作のあとが見えてしまうのである。ところがラージフォーマットだとどうだろう。もともとの光の情報量が多いからなのか、フィルムシミュレーションの結果が本当に自然に立ち現れてくる。Xマウントよりも圧倒的にフィルムっぽく感じるのである。

映画用フィルムをシミュレートしたETERNAは、やはりシネマルックに撮れる

もちろん、誰にでもおすすめはできない。ソフトウェア処理のスピードなのか、はたまた大口径レンズの大きさの問題なのか、現代の超高速AF時代において、オートフォーカスは時代遅れな感じは否めない。それから連射も期待できない。メカニカルシャッターを、秒30コマでガシャガシャ連射させるのは不可能だ。機構上、望遠も限界がある。たとえば運動会になんかは、使えない。

けれども出てくる写真は、神がかっている。記録を撮るのではなく、記憶を撮りたい、そういう人におすすめしたいカメラ。記憶のためには、めいいっぱい光を吸い込んだ決定的な1枚で十分だからだ。

ラージフォーマットなのにフルサイズの感覚で撮影できるほど小型

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ライフハッカー
小山龍介

1975年福岡生まれ。株式会社ブルームコンセプト代表取締役。企業のイノベーション支援、文化財を活用した地域活性化などを専門にコンサルティングを行う。複数のプロジェクトをこなす中で生まれたテクニックを紹介する元祖ライフハッカー。著書『IDEA HACKS!』訳書『Business Model Generation』など多数。名古屋商科大学准教授。京都芸術大学非常勤講師。
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